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共通テスト受験生の50%以下しか解けない「差がつく」問題と解き方 レビュー

本日もよろしくお願いいたします。
今日は久々に問題集レビューを行いたいと思います。今回は先日発売されました『共通テスト 受験生の50%以下しか解けない「差がつく」問題と解き方』(旺文社・田中結也著)のレビューです。今回は問題を解くというよりも問題のアプローチ法などを中心に見ていきたいと思います。
最後までお付き合いよろしくお願いいたします。

■特徴

では、早速この本の特徴を見ていきたいと思います。
今回の大きな特徴というのは、本書に掲載されている問題はほとんどが正答率50%未満の問題が中心です(日本史については参考問題として50%を少し上回る問題も掲載されています)。その問題を時期ズレ正誤、年代整序、地図問題、未見史料、図版・表・グラフ問題の5つの出題形式に分けて解析されています。問題は時代順になっていますが、すべての時代を網羅的に掲載しているわけではありません。それぞれの最初の個所で、それぞれの形式の特徴・引っ掛かりやすい理由なども明記しています。
今回の問題集では正答率が出ているものはCHALLENGE問題、正答率が記載されていないものはTAININGとして類題問題と表記しています(世界史・地理も同様です)。

そして、それぞれの問題が見開き2ページでまとめられているため、学習もしやすいです(地理・世界史は3ページにまたがっている可能性もあります)。

注意点があります。問題を解いて解答合わせをするだけの使い方ではこの本の有効活用はできません。解説をしっかりと活用しなければいけません。これは世界史・地理も同様です。この解説には、その問題のアプローチ(NOTEに掲載)・知識の活用だけでなく、どのようなところで間違えやすいのか、どの選択肢を選んで間違えたか、まで踏み込んでいます。また、直前チェックや差がつく学習法にも目を向けていただきたいと思います。

基本的な問題・形式の考え方については、この本1冊で仕上がると思います。実戦問題集や模試などでどうしても正答率が上がらない人は、この1冊をまずは仕上げた上で実戦問題集などに取り組むといいでしょう。
あと、私大マークが必要な人は、最低でも形式1と2と4については見ておく必要があります。地図が必要な人は3、図版が必要な人は5をそれぞれ類題で解いて、実戦問題で使える知識になっているか、確認のために活用するのはアリだと思います。

■注意点

この本を使う注意点はいくつかあります。

➀時代別に配列されているが……

前述した通り、時代別に配列されているが、網羅的な問題集ではない、ということは気を付けてください。網羅的にしたい場合は「短期攻略 共通テスト日本史B」(駿台文庫)などをしたほうがいいです。要点整理もしたいなら、「スコアアップ日本史B」(Z会出版)などがいいでしょう。

②問題を解くだけでは効果が薄い

前述でも話した通り、問題を解くだけでは効果がありません。この問題集は問題を解くというよりも解析して他の問題でも活用していくやり方になります。そのため、この問題集は問題解析のためのツールとして使ったうえで、実戦問題集、直前予想パック、模試、過去問などでも同様に使えるようにトレーニングしてください。そのためには、解説を必ず活用してください

以上の点は気を付けておかないといけません。

■気になる点は?

僕もこの本を一通り見させていただきました。唯一気になる点は、正答率が低い原因を追究しきれていない点です。これについては紙面の限界があるため、難しいところではあります。ですが、本当に正答率の低い問題の特徴をつかむのには最適であることは間違いではありません
僕がこの本を見たときに唯一物足りないと感じたのはその点です。どの本でも講師もこの正答率が低い、ということをデータからいうことは簡単ですが、その正答率になった理由を言及しているものはそこまで多くないです。

そのため、どういうタイプの問題に当たったときに正答率が下がるのか、を解説時に添えたほうがもっとより良いものができたのでは、と思います
指導者としては、どういう理由で引っかかりやすいのか、ということを言及しておく必要があるかもしれません。
僕も問題解説をするときに、どういう問題で生徒は引っ掛かりやすいのか、ということを正答率とともに原因追及をなるべくするようにしています。僕が現状考えられる正答率が下がりやすい原因は以下の通りです。

【正答率が下がる代表例】
➀問題などの言い回しが一問一答形式と外れたとき
②教科書やテキストなどで学んでいない文言がでたとき
③歴史名辞などが内容(史料の内容なども含む)に置き換えられたとき
④基本的知識を二段階に分けて使う必要があるとき……など

それ以外にもあると思いますが、代表的例としてはこんなところでしょう。上記のものは、高校入試でも同様に起こっています。特に③や④のような問題が増えると全体的に正答率は下がります。だからこそ、基本語句と内容の整合を意識しなければなりません。もし、他にも原因がある場合はご教授いただけると幸いです。

■どういう受験生に向いている?

では、このような問題集を活用するのに適している人たちはどういう人かというと……

➀国公立大学志望で共通テストを8割以上狙っている人
②共通テスト入試を受けるけど、マーク正答率が思ったよりも良くない人
③最後の仕上げに1冊使いたい人
④問題形式をいち早く知り、マスターして高得点を取りたい人

などです。間違っても、楽して点数を取りたい、とか短時間で効率よく学習したい、サクッと問題を解きたい、という人が使っても使い方によっては効果はあまりないと思います。その理由は、解説をしっかりと活用しなければいけないため、短期間で仕上げるための問題集とは少し使い方が異なるためです(ただし、ある程度の日本史知識がある場合はこの限りではない)。
そのため、しっかりと共通テストを解析したい人には向いている問題集だと言えます。
ただし、既に過去問研究が終わり、最後の仕上げに使うなら最後の仕上げに使うのもアリです

■今年の受験生は購入してもいい?

さて、今年共通テストを受験する人ですが、購入した方がいいか、という話が出てきます。
これについては、日本史で8割以上いるけどいまいち点数が取れていない生徒は購入することを勧めます(この場合は短期間で仕上げる問題集になりますが、使い方などの指示はきっちりしないと諸刃の剣になります)。すでに高得点を安定してとれている人は無理に購入する必要はないと思います。
今回、僕が受け持つ生徒で共通テストで8割以上いるが、点数があまりとれていない人に使う教材として選定しています(教材として使うことは著者の田中先生には伝えています)。
この問題集で基本的な出題形式、正誤などの着眼点、どこをどう整理しないといけないか、などをマスターしたうえで実戦問題集や過去問などを使うのがいいです

ただ、現在高1・高2生については早めに購入することを勧めます。特に出題形式別でまとめてるため、どの問題をしっかり仕上げないといけないか、を早いうちから見ておくといいでしょう。

■短評

僕がこの問題集を購入した方がいいか、ということを聞かれた場合、迷わず購入を勧めます。ただし、これ1冊だけですべてが解決する、というわけではありません。その学習をするための基本本として使うのがいいと思います。もちろん、短期間で仕上げるにも使えると思いますが、それは知識確認の面というよりは、問題の着眼点を見るためだと思っています。それをベースに他の類題問題や過去問などを解くのが理想です。

今後、50%以上解ける問題集も出していただけるとベーシックの生徒さん向けにもいいかもしれません。ただし、その時は点差がつきやすい60%台の問題を中心に構成していただけると幸いです。そうすることで、共通テスト問題に初めて取り組む生徒さんにも無理なく十分活用いただけるのでは、と思います。

高校入試でも50%以下の入試問題シリーズが出ていましたが、ついに共通テストバージョンが出たのは評価できます。欲を言えば、ベーシック用の50%以上の生徒が取れた共通テストも出ると今のレベルに応じて使い分けができると思います
例えば、50%以上だったら初学者や受験前のトレーニング、50%以下だったら受験前の仕上げや問題解析などのトレーニングにも使えると思います。

皆様のサポート、よろしくお願いいたします。