教科書展示会に行きました3

先日、教科書展示会に行きました。開催時期としては終わっていましたが、問い合わせて閲覧させていただきました。そこで、前回では見ることができなかった地理・公民を見させていただきました。そこで僕が率直に感じた地理・公民の気になったところを話したいと思います。
無料公開です。よろしくお願いいたします。

地理の変更点

まずは、地理の変更点時になったところを話したいと思います。前回ではそこまで重視して見ていませんでした。その理由は、歴史ほど変更点が多くなかったことです。指導する順番が変わっているところがありますが、それ以外で最初は気にする所はありませんでした。

今回じっくりと教科書を拝見しましたが、大きな変更点に気付きました。それは、最後の調査の仕方の単元を10ページかけて説明していたところです。ここ近年で出題がされている自由記述型の問題のネタになるものがここで記載されていました。特に広島県では最後の問題で自由記述型の問題が出ますが、今後他府県でも出題される可能性は出てくる、と思ったらいいでしょう。特にここ近年の学校の授業で「アクティブ・ラーニング」が言われています。しかし、それを使いこなすための土台の知識を身に付けることも大事です。だからといって語句だけを理解するやり方は好ましくないです。その語句や内容を使って、自分の考えや他の内容の知識に活用できなければ今後の入試・定期テストでは十分に対応できないと思います。
地理では資料読解などが必要になり、それに関連する知識が必要です。これは以前からもいわれていますが、それがより鮮明になってきます。

これは高校になって地理が必須科目になる、という影響も少なからず出ていると思います。地理は歴史・公民と比べて教科書会社の種類が少ないですが、一つ一つしっかり読み解く必要はあると思います。その中でも高校地理でシェアが多い帝国は注目しておくといいでしょう。
学習指導要領の変更点では、時差が中1に移動しますが、昔はその配列だったので、大きな変更ではないと思います。内容の変更は尖閣諸島・竹島・北方領土の話を詳細に出しているくらいです。

公民の変更点

公民では大きな変更点はないですが、教科書会社によって単元の配列が異なります。現代社会の単元、共生社会の扱いが教科書によって配列が様々です。ですが、学習の影響はさほどないと思います。

やはり、新語は注目です。共生社会の単元ではヘイトスピーチ、ダイバーシティ(多様性)などの新語は出てきています。ここ近年で出題頻度が上がっているフェアトレード(公正貿易)、マイクロクレジット(少額融資)も教科書レベルになってきました。
加えて、人と法の支配のイラストが全教科書で記載されていたため、今後の入試でも気を付ける内容です(今年でいうなら北海道で出題されていました)。

ほとんどの教科書で触れられていたのが、SDGs(Sustainable Development Goals)です。2015年に採択され、国際連合で2030年までに達成すべき17の国際目標と169のターゲットを示しています。これは持続可能な開発目標のことです。教科書によっては、このSDGsを色濃く反映させた教科書も出てきています(教育出版はこれを前面に出してきてます)。これは地理も同様で、もしかしたらそれらをもとに入試問題がつくられることも予想されます。となると、最低でもこれの基本的内容は知っておく必要があると思います。それをもとに思考力・判断力を求める問題が出題されても文句は言えません。
現在出ている用語集(旺文社・受験研究社)ではどれも載っていません(Gakkenは改訂版になって載りました)が、新版の「パーフェクトコース社会」(Gakken)では軽く触れています。ただし、2021年の公立入試では国際社会の単元で出すならSDGsは出題できません(各都道府県で出題範囲の縮小が発表されているため)が、地理の単元や三分野総合で出題するなら出題の可能性はあると思います。

そして、教育出版だけですが、六次産業化が用語として出てきました。農水産物の原材料(一次)→加工(二次)→独自ブランドにして販売(三次)することです。これ、2019年の広島県の公立入試で内容が出てきています。りんごの加工などの問題でこの内容が扱われています。ちなみに、教出のみですがこの用語を太字にしてきています(まとめのところの一問一答でも堂々と出題しています)。
よって、覚える語句の量も旧学習指導要領と比べて多くなりますが、より周辺知識や関連知識が重要になってくると思います。東書では働き方改革にも触れていました。

以前の教科書ではあまり触れてなかった大統領制が全教科書で扱われるようになりました。その影響もあり、2020年の神奈川県では大統領制の正誤問題が少し細かいレベルまで出題されていました。教科書によっては図式だけで説明が終わっているものが多いので、用語集学習が今後必要になると思います。東書では均衡価格の基本説明だけでなく、新たな均衡価格の説明もされています。この内容はここ近年の公立入試でも出題がされています。

そして、気になったことが三権分立で、東書と教出は国民→行政の矢印が実線ではなく点線になっていました。これが何を意味するかは分かりませんが、これは考えてみてもいいと思います(画像は著作権などの関係で掲載できませんが、一度手に取ってみてください)。

全体的にシミュレーション形式の学習を前面に出している感じでした。特に帝国では効率・公正のテーマが非常に充実していました。このテーマは入試でも近年出題が多く、対比討論型の記述問題のネタにもなります。

地理・公民の教科書を改めて見て…

これを見た最初の感想は、歴史同様、語句のレベルが上がっていることがいえます。そして、最新のネタをふんだんに取り入れている感じでした。しかし、大きな配列や内容が変わっていたことは特別にないので、授業の配列だけ気を付ければ対応ができる気がしました。ですが、最新時事や出来事などにより敏感にならないと対応が少し難しい気がしました。そのため、関連知識の活用量がどれだけ身に付けられるか、そしてそれを思考力・判断力で自分の言葉で表現できるか、が大きなポイントだと思います。

僕は様々な場面で、「周辺知識・関連知識・背景知識」の3つの知識を常に言ってきました。加えて歴史名辞(歴史のみ)・汎用知識も必要になってきます。となると、2021年から定期テストの作り方も大きく変わる気がしています。それに対する対策も重要です。今までと大きく変わるのか、大きく変わらないのか、は重要です。入試に向けた実戦問題もたくさん解く必要があると思うので、前回の記事で話した問題集や参考書の話も一読いただけると幸いです。

皆様のサポート、よろしくお願いいたします。サポートいただいたものは一般社団法人CAMELの活動費として活用させていただきます。