公立高校入試頻出テーマ史3 伝染病・病気の歴史

本日もよろしくお願いいたします。本日は高校入試頻出テーマ史を行います。前回予告した通り、伝染病・病気の歴史を今回は取り上げたいと思います。
今まではこのタイプのテーマ史問題はほとんど対策のしようがありませんでした。2020年に新型コロナウィルスの大流行を受けて、2021年入試では出るのでは、と思い、予想問題を作りました。
そうすると、いきなり沖縄県でテーマ史として出題され、一部の問題が的中しました。そして、出題形式についてもほぼ論点はズレていませんでした。では、今回のテーマ史はどのような出題が予想されるのか、話していきたいと思います。
では、最後までお付き合いよろしくお願いいたします。

■伝染病・病気の歴史 出題形式

では、さっそく伝染病・病気の歴史の出題形式を見ていきましょう。以下のデータをもとに、僕がオリジナル予想問題を作成していきました。

【伝染病・病気の歴史】
➀縄文時代:アニミズムの信仰
②奈良時代:伝染病の流行
③平安時代:菅原道真の左遷によるたたりより伝染病流行
④鎌倉時代:民間の医師が登場→仏教との関係性
⑤近世:ヨーロッパからアメリカへ伝染病が持ち込まれる→大航海時代
⑥近世:蘭学の発達で医学などを学ぶ人が出てくる
⑦明治時代:北里柴三郎がペスト菌の研究、野口英世が黄熱病の研究、国内では肺結核の流行
⑧大正時代:第一次世界大戦中にスペイン風邪が大流行
⑨昭和前期:日本軍がマラリアにかかり進軍が困難になる
⑩昭和中期:公害病の流行
⑪平成時代:シンガポールや香港でSARSが大流行
⑫令和時代:中国武漢ぶかんで新型コロナウィルス発生、全世界に大流行

このなかで、沖縄県が2021年に出題したテーマは前近代を中心に伝染病の歴史・自然災害の歴史が出ました(詳しい解析は後程)。

予想問題としてテーマ出題がされる可能性がある理由として、①2020年に新型コロナウィルスが大流行したことで、伝染病関係の歴史がそろそろテーマとして出題されるのでは、という予想が僕の中であったこと、②伝染病に関するコラムなどが教科書にも掲載されてきたこと、などの理由から、タイミング的に2021年入試で出題されるところがあるのでは、と思いました。
その結果、この後解析する2021年沖縄県では、見事に伝染病の歴史をテーマとした出題がされていました。もちろん、問題のアプローチについてはそれぞれ異なりますが、テーマとして出題することはほぼ予想された通りでした。

つまり、僕は論拠があって今年の入試で出題される可能性が高い、といったのです。もちろん、複数の府県で出題されることは考えていませんでしたが、このような新テーマへの対応も今後は求められていくと思います。しかし、これらの対応は、市販教材だけでは十分に対応が難しいのです。そして、歴史ではこのようなテーマ史での出題が今後も増えてくると予想されています。

■2021年沖縄県公立入試 大問3解析

それでは、実際に2021年沖縄県の大問3で出題された問題形式を見ていきましょう。ただし、著作権等の関係で問題文を掲載するなどのことはできませんので、各自問題については赤本などの過去問題集で入手しておいてください(沖縄県教育委員会には問題がWeb上では公開されていません)。今回は正答率などはWeb上では非公開(問い合わせたら対応はしてくれるそうです)のため、今回はそちらの解析は行いません。

問1 聖武天皇が国分寺や国分尼寺を建立し、大仏を作らせた理由を答える問題です。空欄に入る語句を答えさせます。これは、鎮護国家の用語説明ができていたら解答になります。
なお、この問題は、ほぼ僕の予想問題で作成したものとほぼ合致していました。要求している答え方もほぼ一緒です。
そう、奈良時代の伝染病の話が出た場合、このように鎮護国家関係の短文記述問題が出題されることが多いのです(他には聖武天皇を答えさせることもある)。そして、伝染病との関係性も少なからずあります

問2 遣唐使派遣の停止を提案した人物を答えさせる問題です。この問題は、別に平安京で伝染病が広がったことを知っておく必要はありません。菅原道真が大宰府に左遷されたことも知っておかなくても十分です。
なぜなら、菅原道真で出題される場合は、ほぼ8割は遣唐使の停止が絡んでくるからです。

問3 飢饉や地震が起こったことで仏教に救いを求めた、とあり、鎌倉時代の仏教についての正誤問題です。これは関係性は多少あるものの、直接的な関係性があるわけではありません。これは内容正誤の問題になります。
公家が朝廷であることは、背景知識として知っておかないといけません。ここでは、飢饉や災害が起こった際に宗教の力で救いを求めていることから、宗教関係の問題が関連していることを知っておくといいでしょう(実際に問1も宗教関係の問題のため)。

問4 応仁の乱がおこってから戦国大名が出てきたときの問題です。一見、資料読解問題と思いますが、出典を見たら、甲州が現在の山梨県、とあるので、山梨県の大名はだれか、という問題なのです。ここで、絶対に選んではダメなのが足利義満で、彼だけ戦国時代に出てくる人物ではありません。このように選択肢を削る際に消去法を使うのがいいのです。

問5 祇園祭を答えさせる問題ですが、ここで新型コロナウィルスとの関係を持ってきました。残りの選択肢を見ても、京都の祭りは祇園祭だけだから、問題としてはそこまでの難度ではありません。が、地理や公民学習の関係性も出ています。そして、時事問題との関係性もここで出ています。歴史だけの知識として単品で覚えても効果はありません。様々な知識を活用して問題などに取り掛かるようにしましょう

問6 ヨーロッパからアメリカに伝染病をもたらした原因として、大航海時代の新航路開拓が原因として挙げられています。今回は直接的な関係ではない、ということがわかりますが、関連性を持たせる問題として出題しています。
このように、問題文を冷静に読めば答えにたどり着けるので、新テーマが出たからといって慌てる必要はございません。こういう時こそ、問題が要求していることを正しく読み取るようにしてください。

問7 江戸時代中期の飢饉に関する問題です。このタイプは大抵、三大改革と田沼政治を関連させることが多いです(その逆もある)。加えて、その結果や影響なども合わせて押さえておくと十分でしょう。この正誤問題は内容正誤と語句正誤とあります。誤りの文は正文に直す習慣をつけておきましょう

問8 沖縄で起きる自然災害に関する問題です。これは地理の知識も必要となります。ですが、沖縄関係の問題を出題するのは沖縄県では特有の傾向なので、地元の地域史を学習しておきましょう。

と、問題の聞かれ方などは標準レベルでしたが、テーマ史特有の関連性の問題も見られました。
なお、大問4では○○周年問題が出ていました。確か2021年入試の10年前である2011年は東日本大震災が起こっていたので、それに関する問題も出るのでは、と思いました。この関係性から、災害史もどこかの府県で問題に出るのも想定していました(これについては頻出テーマ史では扱いませんが、どこかで話したいとも思っています)。実際、広島県・愛知県などの公立入試でテーマとして出題されていました。

■よく聞かれることだが……

こういうと、よく聞かれるのが、どうしてそのような新テーマも想定できるのか?という質問です。
これについて回答をすると、従来のテーマでは出題パターンがある程度固定されているため、新しい視点を見つける必要があると思ったからです。そのため、過去の入試で出題がなかったテーマでどのような切り口が出されるのか、を見ていたのです。

上記を見てもらうと、出題形式が大体固定化されていることに気が付きます。そう、この形式を知ることが入試問題で高得点をとるために必要なものなのです。短文記述問題などについては、さらなる切り口が見つかるかもしれません。それをたくさんストックしていくことなのです。それができるだけでも点数アップが可能です。目標が6割でも7割以上取れるようになるかもしれません。その分、他の科目の学習にも時間を取ることができます。

勘違いしないでください。主要5科目の科目バランスをとったうえで学習をしてください。でも、このようなテーマ史をまとめた究極のTactics集が出来上がれば、どのような出題形式が出ても対応できる力がつくと思います。
そのためには、様々な問題にとりかかる必要があります。間違っても、丸暗記で処理できるほど高校入試は甘くありません。もし、それで高校入試を乗り越えたとしても、その先の大学入試で相当苦労することになります。それを意識して、今のうちに使える知識を身につけてください。

次回のテーマ史攻略ですが、少しお待ちいただけると幸いです。十分なネタが見つかり次第、アップしていきたいと思います。

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