2021年からの中学英語

6月中旬に教科書展示会に行きまして、そこで中学英語の概観を伝えました(記事はこちら)。昨日改めてお伺いして6教科書の文法配列を中心にみてきました。そこで教科書会社で対応がそれぞれ異なっていました。
今回は各教科書会社の文法内容を中心に話していきたいと思います。前提となるのは、小学校で使っていた英語教科書の接続です。そのため、小学校と中学校で使う英語教科書が異なると大変なことになります。
今回も無料公開です。ただし、今後の学習についての話(別記事)は有料記事となります。よろしくお願いいたします。

東京書籍(NEW HORIZON)

中1ではいきなりbe動詞と一般動詞の区別を行いますが、これに加えて頻度を表す副詞、助動詞のcanを一緒に扱います。つまり、いままでbe動詞と一般動詞の解説で2か月弱かけていましたが、それを1か月弱で仕上げることになります。ちなみに、L1で助動詞のcanを扱うのは、HORIZON以外ではHERE WE GO(光村)もこのような配列になります。L1で扱わなくても、L2・L3までに助動詞のcanは扱います。
L2ではbe動詞の残りを扱います。その流れで疑問詞も学習します。が、L3では加えて不定詞の名詞的用法をここでやってしまいます。小5のHORIZONでも確かに不定詞の名詞的用法(~すること)は扱いますので、特別疑問は持ちません。なお、文法として詳細にするのはL9で行います(中2では名詞的用法は行わない)。
L5では前置詞を一気にやることになります。前置詞だけで1LESSON分割くのは珍しいです。しかも、このL5はさらに動名詞、不規則動詞の過去形も触れます(過去形自体はL10・L11でも扱うのでここでは簡単にやるみたいです。動名詞も中2で改めて学習はします)。これがほぼ1学期の内容(2学期はじめまで含む)となると、明らかに定期テストについても負担が非常に大きくなると思います

L6からは以前の学習指導要領の配列に近かったですが、L9で2文型も扱うことになります。lookの自動詞の意味を扱います(中学では自動詞・他動詞の言葉は出ないが原理は教えておく必要はある)。L8で感嘆文の簡単なものも扱います。これはほとんど中学でやっていなかったのですが、HORIZONでは復活しました。
L10からは過去形を行いますが、中1でほぼ全ての過去形を扱います(過去進行形とThere is構文は中2でも行います)。以前の記事でも数か月分は前倒ししているイメージでした。

中2の序盤ではいきなり文構造の話をやります。今後の文法上では重要なものですので、早い段階で文構造の話はまとめておくといいでしょう。L3では中3からIt is 不定詞の形が下りてきます。L5で疑問詞+不定詞の形も扱います。文型を使った応用も扱います。それ以外は比較的現中2と変わらなかった感じでした。

中3からは現在完了を扱いますが、以前の配列では継続用法から扱うのが多かったのですが、完了・経験を先に扱う配列にしていました。そして、ここから高校内容から現在完了進行形が下りてきます。L3では原形不定詞(知覚動詞)が高校内容から降りてきます。これも基本土台は文型が分かれば対応できます。よって、中学内容からでも5文型の意識は大事になります
そして、L6でもう一つ高校内容から仮定法が下りてきます。仮定法の原理を覚えておかないと、使えなくなります。ifが出たから仮定法、という安易な発想は通用しません。

三省堂(NEW CROWN)

CROWNの教科書ですが、これ以降はHORIZONとの相違点を中心に話していきたいと思います。
中1で注目すべき話は、L1だけで20ページを割いていることです。ここではbe動詞と一般動詞の区別を中心に語順もここで扱います。ほとんどの教科書は1LESSONで10ページくらい使うのが基本ですが、CROWNではなんと倍の20ページを使っているのが特徴です。L2でcanを扱います。これは分離しているかしていないかだけの違いで、大きな配列が変わるわけではありません。これ以降は旧学習指導要領と大きく変わらないので省略します。
L7で中2でやってる残りの過去形が降りてきますが、これは三省堂のHPでは既定路線で移行措置の対象となっており、ほとんどの教科書でも起こっているので、特別驚くことはありません。しかし、L8で未来形を先に行うので、覚える文法が前倒しされています。

中2ではL2でIt is 不定詞が中3から降りてきます。L5までは前倒しされているだけなので問題はないと思います。
しかし、L6・L7で先に現在完了を行います(但し、現在完了進行形はここで扱わない)。今までは受け身を先にしていましたが中3に移行します。過去分詞を行うのは従来と変わりませんが、順番が変わり、なおかつ難しく、入試頻度も非常に高い文法を中2で行うのは負担が大きくなると思います。

中3では最初から現在完了進行形を行います。そして、分詞・関係代名詞が早い段階で指導されます。高校内容の仮定法と原形不定詞は最後に回っているので、まさに前倒し学習になっています。

開隆堂(Sunshine)

中1ではP1~P3まででbe動詞・一般動詞・canを扱います(this isや三単現を含めるとつながりを非常に意識している配列になっています)。P7でThere is構文を扱い、P9、P10で過去形を扱います。中1については無理なく配列されてる感じがしました。

中2でも前倒しのイメージがありますが、比較を2学期の早い時期で扱うのは大きな変更点だと思います。その分、受け身や現在完了を前倒ししてきていますが、上記2教科書と大きく異なるのが、現在完了進行形も中2で行うことです。また、受け身のイディオム(熟語)も扱っています。

中3では文型や間接疑問文などを先に扱います。ここで原形不定詞も行います。分詞・関係代名詞は従来通りで最後に仮定法を学習します。中3は比較的余裕をもって扱っていると思います。
教科書展示会でお話させていただいた元英語の先生とお話をした時でも、Sunshineを高く評価されていた感じでした。

教育出版(ONE WORLD)

この教科書は上記3教科書と大きく異なる点があります。それは、L3までにbe動詞・一般動詞・canを扱いますが、本文の中心文法を学習する短文(Key Sentence)がL3まではないのです。恐らく小学校→中学校の接続を意識しているのもあると思います。
この教科書が恐ろしいのは、L4でいきなり過去形を扱うことです(ほとんどは3学期入ってからのところが多い)。過去進行形は中2で行うが、中学生の難関である不規則動詞の変化も2学期で前倒しされるので非常に大変だと思います。
L7以降でも助動詞をほとんど扱い、未来形もやります。2文型、There is構文も行うので、採択された場合、中1から英語の学習で差がつきやすくなります

中2では文型なども行いますが、大きな変更点は、that節を早い段階で行うこと、不定詞の応用も中2でやり切ることになります。その関係で、原形不定詞が中2から出てきます。また、間接疑問文も中2で行います。しかし、現在完了は中3でゆっくりやります。

中3では現在完了、分詞、関係代名詞、仮定法を扱い、文法としてはあまり多くないので、負担が少ない…ように思いますが、L6以降からは長文しかやりません。これは3教科書と大きく異なります。

この教科書をじっくり見てから直感で感じたのが、どちらかというと中高一貫向けの教科書ではないのか、と思いました。

光村図書(Here We Go)

光村の教科書はかなり特殊な作り方になっていると思いました。まず、U1・U2でbe動詞・一般動詞・canを全て扱います。加えて、L3で動名詞・不定詞の名詞的用法を扱います(但し、文法自体は中2で行う)。しかし、旧学習指導要領でやる配列にほぼ近かったイメージがあります。異なっても、be動詞の過去形を行うくらいで、大きく変わっていなかった。

中2で大きく疑問が残ったのが、不定詞です。名詞的用法・形容詞的用法・副詞的用法をUnitを分けて解説している(不定詞は本来まとめて説明するのが吉で動名詞とセットで行うのが好ましい)ので、文法の関係性がやや弱い気がしました

中3では文型を先にやる関係で原形不定詞を最初にやります。その後、現在完了・関係代名詞・分詞・仮定法を扱います。ここは旧学習指導要領の中3でも大きく変わっていなかった気がしました。

啓林館(BLUE SKY)

色々な意味で旧学習指導要領と大きく変わっていなかったのがこの教科書でした。be動詞の過去形を中1で、It is 不定詞構文を中2で扱うこと、高校内容の扱いなどを含めてもそれ以外の変更はなかった気がします。そのため、6教科書の中ではやや難易度が低い気がしました。

単語レベルは上昇

単語レベルは上昇していると思います。そして、中1・2の教科書の単語索引で小学校で習う英単語のリストもあります。加えて、そういった単語も中学の教科書でも掲載されているので小学校の間にすべてを覚えようとしなくてもいい気がしました。まずは日常会話から使える英語を意識することが大事な気がしました。
しかし、英単語だけを書かせる、教科書本文の書写だけの学習では使える英語になるのは難しい気がしました。つまり、指導者側も今後の正しい英語学習の仕方を指導しなければ生徒がオーバーペースになりそうな気がします。そして、中1からほとんどの生徒が取り残される気がしました。

英語の今後の学習について持っておいた方がいい参考書・問題集については別記事で話したいと思います。

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