【高校入試紙面講義】2020年栃木県 大問2

月曜日は地理です。今回は頻度の高い問題の割に正答率が思った以上に低い問題を取り上げたいと思います。今回は知っている知識をいかに活用できているか、という部分に着目したいと思います。世界地理は地理分野の中では正答率が低いです。
栃木県の特徴は、資料が多く、複数の資料で判定する問題があるため、短時間でいかに処理ができるか、がポイントです(栃木県の時間は45分と全国では比較的短い)。過去問演習や小問対策などで問題慣れしておきましょう。直前の2週間は実戦形式で解いてください。その時に、制限時間よりも5分短い設定でやってみてください
今週は正答率の部分までは無料公開している週間です。少しでも点差を付けたい人はぜひ活用してください。問題については、サイトか赤本などで入手してください。

■問題の概略

大問2は世界地理です。日本とヨーロッパの略地図があり、緯線があります。となると、この問題は日本とヨーロッパの緯度が絡む問題だろうと予想がつきます。問4でトルコに関係する問題が出ています。トルコはあまり出題されるところが少ないので、今後の学習のために問題慣れしておきましょう。後半はアメリカの工業・農業の問題です。このように複数の大陸が出る問題は、基本的な問題が多いことがあります(参照させています「全国高校入試問題正解」では6問中4問がよく出る、と記載されています)。

■解説

それでは、解説に行きましょう。

問1 図1は、図3の雨温図で示されたA市とB市の位置を示したものである。2つの都市の気候について述べた次の文中の( Ⅰ )、( Ⅱ )に当てはまる語の組合せとして正しいのはどれか。
 A市とB市は、夏季には高温多雨となるが、冬季の降水量には差が見られる。A市では、大陸からの乾いた( Ⅰ )の影響を受けやすく、冬季の降水量が少なくなる。B市では( Ⅱ )の上を吹く( Ⅰ )の影響により、冬季に大雪が降る
ア Ⅰ-偏西風 Ⅱ-暖流 イ Ⅰ-偏西風 Ⅱ-寒流
ウ Ⅰ-季節風 Ⅱ-暖流 エ Ⅰ-季節風 Ⅱ-寒流

この問題でA市は韓国のソウルと判定できます。B市はほぼ同じ緯度にある新潟市と判定できます。この問題はB市の内容だけで判定可能です。日本海に吹く海流は対馬海流とリマン海流です。北陸地方付近の海流は対馬海流と判定できます。対馬海流は暖流です。日本の気候に影響を与えるのは季節風です。リマン海流は北海道が中心です(東北・北陸も通りますが、大陸付近には影響を及ぼしません)。
これが暖流だと判定するには、理科の関連知識が必要になります。雲は暖められた空気が上昇するため、暖流の上を通らないといけません。この関連知識を知っていれば、暖流と判定できると思います。
よって、正解はウです。寒い影響だからといって、寒流にするのは先入観です。暖流・寒流の関係図はしっかりとチェックしてください。

問2 次の文は、図2のC国の公用語と同じ言語を公用語としているある国について述べたものである。ある国とはどこか。
 赤道が通過する国土には、流域面積が世界最大となる大河が流れ、その流域には広大な熱帯雨林が広がる。高原地帯ではコーヒー豆などの輸出用作物が栽培されている。

C国はポルトガルです。ですが、今回は説明文から判定することが容易にできるので、キーワードを拾っていきましょう。
赤道が通過する、からアフリカ大陸、東南アジア、南米に絞ることができます。続いて、流域面積が世界最大の大河、よりアマゾン川と判定できます。ここでブラジル、と判定してもいいです。あとは熱帯雨林、コーヒー豆などの作物でも決まります。ここはズバリ決められるアマゾン川で判定しましょう。

問3 ヨーロッパの大部分は日本と比べ高緯度に位置している。図1の北緯40度と同緯度を示す緯線は、図2のア、イ、ウ、エのどれか。

北緯40度を通るヨーロッパ大陸は、イベリア半島を通っていること(ポルトガルを通っている)で判定できます。
よって、正解はエです。
なお、北緯40度を通る主な国は、アメリカ、日本、北朝鮮、中国、トルコ、ギリシャ、イタリア、スペイン、ポルトガルです。これは出題頻度が高いため、これは暗記して覚えないといけません(暗記科目といいますが、何をどう覚えないといけないか、まで指示しないといけません。ただし、意味のないゴロは効果が低いです)。

問4 図2のD国(トルコ)とインドについて、図4は、総人口とある宗教の信者数を、図5は主な家畜の飼育頭数を示したものである。(  )に当てはまる語を書きなさい。
図4(左から総人口、(  )教の信者数 2018年)
⇒D国:8,192万人、7.987万人 インド:135,405万人、19,228万人
図5(問題と関係ないため省略)

要は図4の宗教は何か、という問題です。インドでは(  )教の信者がある程度いますが、人口の約8割はヒンドゥー教信者です。約15%くらいがイスラム教信者です。D国はトルコです。トルコの大半はイスラム教信者です。世界史の背景知識が入っているなら、オスマン帝国がイスラーム帝国であることがわかれば簡単に解答が出ます(難関私立で世界史を課される人は知っておかないといけません)。しかし、ほとんどは知らないと思いますので、インドから判定するのがいいでしょう。

問5 図6中のXで示された3州(五大湖周辺)とYで示された3州(北緯37度線より南にあるテキサス州など)は、図7の➀、②のいずれかの地域である。また、図7の( Ⅰ )、( Ⅱ )は製鉄、半導体のいずれかである。➀と( Ⅰ )に当てはまる語の組合せとして正しいのはどれか。
ア ➀-X、Ⅰ-半導体 イ ➀-X、Ⅰ-製鉄
ウ ➀-Y、Ⅰ-半導体 エ ➀-Y、Ⅰ-製鉄
資料7
⇒➀石油・化学製品、航空宇宙・( Ⅰ )、( Ⅰ )・医療機械
 ②自動車・( Ⅱ )、自動車・石油、自動車・プラスチック

アメリカの北部と南部では工業が異なります。五大湖周辺は鉄鉱石や石炭などを五大湖を利用して水運で工業都市に運んでいきます。その関係で重工業がメインとなります。その反面、北緯37度以南のサンベルト地域では重工業も行う一方で、半導体の生産も行われています。アメリカ西南部はシリコンバレーといわれ、半導体の生産が行われています。また、テキサス州のヒューストンは航空宇宙産業でも有名です。
そこから、➀がYと判定できます。( Ⅰ )は半導体、( Ⅱ )が製鉄と判定できますので、正しい組み合わせはウとなります。

問6 アメリカ合衆国、日本、中国のいずれかについて、図8は、農業従事者数及び輸出総額に占める農産物の割合を、図9は、農業従事者一人あたりの農地面積及び総産業従事者に占める農業従事者の割合を示したものである。アメリカ合衆国はa、b、cのどれか。
 また、そのように判断した理由を、図8、図9から読み取れることとアメリカ合衆国の農業の特徴に触れ、簡単に書きなさい。
図8(左から農業従事者数、輸出総額に占める農産物の輸出額の割合)
⇒a:242万人、9.4% b:228万人、0.4% c:24,171万人、2.1%
図9(左から農業従事者一人あたりの農地面積、総産業事業者に占める農業従事者の割合)
a:150ha以上、2% b:4ha、4% c:2ha、32%

図9の数値はおおよその数です。まず、日本とアメリカの農業従事者数はあまり変わりません。そこから、cは中国と判定します。日本とアメリカの大きな違いは農業従事者一人あたりの耕地面積です。日本とアメリカではアメリカの方が広大な土地です。そのため、機械的農業が盛んになります。よって、アメリカ合衆国がa、日本がbとなります(日本は集約農業です)。
では、その根拠についてですが、前述でほぼ述べたとおりですが、アメリカは世界の食糧庫といわれている関係で、輸出総額に占める農産物の輸出額の割合が高くなります。これらと合わせて記述をすればいいでしょう。今回はかなりの長文となるため、二文に分けても問題ありません。記述中に図8、図9と示す必要はそこまでありません(書いたとしても不正解にはならないと思います)
解答例:輸出総額に占める農産物の輸出額の割合が高い。また、総産業従事者に占める農業従事者の割合は低いが、一人足りの農地面積が大きいことから、アメリカ合衆国は輸出向けに(機械を使った)大規模な農業を広い農地で行っていることから判断できる
採点基準としては、➀図8、図9について触れているか、②それを踏まえてアメリカの大規模農業の説明ができているか、この2点で判定できます。➀ができていれば部分点はもらえると思います。②で「機械を使った」はあってもなくても採点に影響はないです。

■正答率

問1 49.0%でした。誤答の大半はエにしたと思います。季節風は簡単に判定できるとしても、暖流とは判定しづらかったかもしれません。雲のでき方についての関連知識や背景知識が分かっている人は容易に解答できたが、それが本番で使えているかは微妙です。

問2 71.4%でした。よくできていると思いますが、上位校を受験する人ほどここの問題で失点は許されません。

問3 36.4%でした。地図帳で確認していないか、関連知識が弱いかのいずれかだと思います。上記のものはしっかりと覚えてください。

問4 50.1%でした。これはトルコに引っ張られてキリスト教と判定して誤答になった恐れがあります。オスマン帝国がイスラーム国であることは関連知識・背景知識です。トルコの学習はほとんどの方は行われていませんが、最後の最後で確認しておく必要はあります。

問5 47.3%でした。サンベルト地域と五大湖周辺の工業の違いを知っているかどうかです。なお、五大湖周辺の鉱産業については記述問題でも出題されますので、合わせて押さえておきましょう。

問6 7.9%でした。部分点を含むと85.6%でした。部分点をもらえてる人は➀の資料読解はできていたと思います。しかし、それとアメリカの農業と関連できていなかったことが完全正解につながらなかったのでは、と思います。

■語句を知っていても……

ここからは限定公開となります。

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