公立高校入試解析 2024年北海道
本日もよろしくお願いいたします。
いよいよ入試解析を本格的に行います。2週に1本程度で執筆できれば、と思っていますが、使用許諾等の関係で公開が少し遅くなることも想定されます。
今回は北海道の公立高校入試解析を行います。記事はメンバーシップ限定公開ですが、教育委員会様の指導を受けて、一般公開がOKとなりました。この記事でどれだけ難度が高かったか確認してください。
最後までお付き合いよろしくお願いいたします。
なお、問題等については北海道教育委員会のHP、「全国高校入試問題正解」(旺文社)、赤本などを使って確認ください。
■北海道公立高校入試 概要
北海道の入試形式ですが、大問は4題です。
2021年までは60点満点でしたが、2022年より100点満点に変わりました。また、今まで行われていた裁量問題(英語・数学)も廃止となりました。
その影響で、2022年入試より難化傾向がみられるようになりました。2023年入試で41点台でしたが、2024年入試では38.3点と全国入試の中でも屈指の難度を誇るようになりました。なお、全国平均点が55~56点なので、いかに突出した難度になっているかがわかります。
時間があれば2023年入試の北海道も解析予定です。記事についてはリクエストがあれば作成します。
北海道のもう一つの特徴としては、北方領土関係の出題も毎年出ています。そのため、北海道の地理にも強くなっておきましょう。
■大問1 解析
それでは、さっそく解析を始めたいと思います。なお、今回の問題解析はかなりの長文となります。目次の部分を押してページ移動していただけると効率よくみられると思います。
大問1は三分野総合の小問集合です。
問1
(1)マルセイユが北海道から見てどの方位にあるかを答える問題です。方位を正しく見るには正距方位図法を使わないといけません。マルセイユがフランス南部とわかれば、北西と分かります。
正答率は54.2%と思いのほか低いです。もし、メルカトル図法で判断した人は西と判断したのだと思います。その分正答率が低くなったのでは、と思います。
(2)空欄部に海流が暖流であること、偏西風が出ていること、より地中海性気候ではなく西岸海洋性気候となります。よって、暖流の海流といえば、北大西洋海流となります。
ところが、正答率は43.5%と思ったよりも低いです。実は、拙著でも入試ランクがCなので、これくらいは楽勝でしょう、と思っている受験生はやや躓いた可能性があります。そして、実際の正答率と拙著オリジナルの入試ランクはほぼ収束していることもわかります。それでも、年度によっては大きく乖離していることもあるが、大体は僕がまとめているランクで落ち着いています。
問2
(1)八幡製鉄所の位置と建設された背景をそれぞれ答える問題です。八幡製鉄所は九州北部に建設されました。1897年に建てられて1901年に操業開始しました。よって、賠償金は日清戦争だとわかります。日露戦争は賠償金は支払われていません。
これらを合わせた正答率が57.7%とやや点差がついたと思います。ですが、記述問題などでまとめるなら、この正答率は妥当な数値になります。
(2)3つのカードの法令が出された順番を答える問題です。
Aは「守護」という語句から御成敗式目となり、鎌倉時代と判定できます。Bは「口分田の支給、班田は、六年に一回行う」より律令より奈良時代と判定できます。Cは「日本人が帰国すれば、死罪にする」より鎖国令となり、江戸時代と判定できます。よって、B→A→Cとなります。
正答率は67.9%とまずまずですが、今回の問題は時代が正確に並べられる人はそこまでの難度ではありません。つまり、歴史名辞などで判断が正しくでき、正しい時代配列ができているか、がカギになります。
問3
(1)写真を見れば裁判員裁判と分かりますが、空欄後半に「地方裁判所の第一審で行われる刑事裁判」とあるので、そこからでも裁判員と判断できます。また、裁判員は6名と決まっています。
正答率は65.8%とまずまずといっていいでしょう。ただ、裁判員が6名で困惑した人は途端に正答できなかった可能性はあると思います。これを単純な一問一答学習で乗り越えられるほど甘くはありません。
(2)内閣の仕事をすべて答える問題です。これは1つでも漏れがあれば誤答となります。
ウは国会の仕事、エは国会の仕事、カは裁判所の仕事なので、残りのア・イ・オが内閣の仕事となります。
正答率ですが、25.2%とやはり低いです。もしかしたら、オを天皇の仕事と勘違いして外した、イを国会の仕事と間違えたのか、ウの憲法改正の発議を内閣の仕事と間違えたのか、それらの要因が重なってこのような正答率になったのでは、と思います。1つ選べならそこまで低くはないのですが、すべて選ぶ形式の問題は気を付けておきましょう。
(3)企業が資料の活動を行っている目的を短文記述問題で出題しています。
資料2はスマートフォンや携帯電話の利用に関する安全教室を行っている企業の説明、資料3はリユース・リサイクル活動を通じて回収した医療を難民などへ寄贈している企業の説明です。これらに共通して行われているのが、「企業の社会的責任を果たすこと」です。つまり、SDGsを通じて社会的責任を果たしていることがわかります。
正答率ですが、完全正答率が13.2%、部分正答率を含めると24.2%とかなり差がついた問題となりました。拙著の用語説明でも、「社会にも貢献すべきである」と記述しています。つまり、これらの活動を通じて社会的責任を果たさないといけないのです。これは社会的責任という言葉だけを知っていても解くことができません。拙著の解説を通じて学習した人は正答に近づけたのでは、と思います。
問4
(1)領海の外側に沿岸から200海里、水産資源や鉱産資源を独占的に利用できる、とあるので、排他的経済水域(EEZ)と分かります。
正答率は79.7%とよくできています。
(2)北海道と長崎県が海岸線の長さが変わらない理由を短文記述問題で出題しています。島の数が多い以外の理由を答えます。となると、長崎県は海岸線の長さが長いのは、複雑な地形になっていることを推定できます。つまり、「リアス海岸がみられる」のです。実際に、長崎県の大村湾ではリアス海岸がみられます。
正答率ですが、完全正答率が22.1%、部分正答率を合わせても27.5%と低いです。原因としては、リアス海岸の代表的地形が確実に入っていないこと、長崎の海岸線が北海道とあまり変わらない関係性などを意識できていなかったなどの原因があります。予想以上に点差がついた問題だと思います。
拙著のランクでも、一問一答形式の正答率は高いものの、活用する問題や短文記述問題などでは正答率がガクッと下がります。つまり、語句は知っているが、活用する知識になっていない、ということがわかります。
問5 北海道公立高校入試恒例の北方領土に関する問題です。北方領土関係の問題は2017年からの統計で2017年、2019年以外はほぼ毎年出ています。
今年は、知床半島から東に撮ったときにある島を答える問題です。これは北海道の地図が入っていればウの国後島と分かります。
ところが、正答率は34.3%と3人に1人しか正解できていません。先ほども指摘した通り、北海道の地図が入っていない人は苦戦した問題です。島の名称がわかっても地図との関連知識ができていなければ効果はあまりありません。
問6
(1)フランス革命が起こった時の内容とその後の動きについてまとめた問題です。
フランス革命のときに出されたものは人権宣言です。フランス革命が収束したのちにフランスの皇帝になったのはナポレオンです。
正答率は45.6%と思ったよりも正答できていません。権利の章典が出された時の市民革命が名誉革命と分かればいいのですが、ここの内容が整理できていなければできなかったでしょう。そして、ナポレオンは出来ていたと思いますが、それでもほかの人物を答えた人は否定できません。
(2)インドの近現代の動きについてまとめた問題です。
第一次世界大戦後に非暴力・不服従の抵抗運動を主導したのはガンディーです。第二次世界大戦後に平和共存を訴えた会議がアジア・アフリカ会議です。ワシントン会議は1921年なので、第一次世界大戦後となります。
正答率ですが、54.5%と差がついています。
(3)自作地と小作地の割合の変化に関する短文記述問題です。
これはそこまで難しく考えることはありません。1939年から1949年にかけて行われた農作地に関する改革である農地改革が行われたこと、その結果、自作地が増えた、この2点をまとめて「農地改革によって、自作地が増加した」と答えれば十分です。
正答率は完全正答率で39.8%、部分正答率を含めると55.5%でした。上位行を目指す生徒は確実に点数を取っておきたいところです。
問7
(1)地方公共団体の仕事に当てはまるものをすべて選ぶ問題です。
イの外交は内閣の仕事、カの郵便物の取り集めは民間事業が行っているので、それぞれ誤りです。残りのア・ウ・エ・オがすべて地方公共団体の仕事になります。
正答率は18.6%とかなり低いです。国会の仕事・内閣の仕事・地方公共団体の仕事・民間の仕事というふうに整理しておくと迷うことはあまりありません。似たような内容については正しく整理しておきましょう。
(2)売る側と買う側で、商品と代金を交換する約束を交わすことを契約といいます。資料4の通知書で解除することができる制度がクーリングオフです。
正答率は66.0%とまずまずの正答率です。セットで押さえておいてもいいと思います。
大問1全体を見ても、正答率が70%を超えていた問題が1問しかないこと、正答率が50%を下回っている問題が7問(全15問)あるので、いかに難しかったかがわかります。
■大問2 解析
では、大問2の解析を行いましょう。今年は歴史になっています。
問1 弥生時代の出土人骨数、受賞人骨の割合を見るとムラ同士の争いがあったことがわかります。そのため加茂遺跡では堀(溝)があるので、他国の侵略を防ぐための工夫があったとされています。「ムラ同士の争いが起こった」ことが考えられます。
正答率ですが、完全正答率が37.0%、部分正答率を含めると54.2%と点差がつきやすかった問題ではないか、と思います。資料と表を見比べると判定は出来ますが、クニ同士・ムラ同士の争いについては教科書にも記述があります。
問2 618年から1206年の間の時期における様子についての正誤問題です。なお、今回の問題は正誤文については正文なので、正誤文と地図の場所が
ア:場所の①は京都の平安京です。大山古墳は大阪にあるので誤文と判定します。イ:場所の②は九州北部の大宰府付近です。ここには大野城・基肄城が築かれています。ウ:場所の③は函館です。説明文より蝦夷を降伏させたのちに支配拠点となる城なので、胆沢城・志和城あたりだと思います。よって、誤文です。エ:場所の④は伊予国です。源義家が有力者の勢力争いを鎮めたのは後三年合戦(後三年の役)なので、東北地方です。よって誤文です。正解はイです。
正答率は39.9%と予想以上に点差がつきました。説明文と地図の位置が合致できたかどうかの二段階構成だったことで正答率が下がったのでは、と思います。
問3 資料を見て生徒Bの意見をもとに生徒Aが追加した資料を選ぶ問題です。この形式の問題は知識の活用ができていないとできません。
問題文に「織田信長の政策」とあるので、織田信長に関係のある内容を選択すればいいのです。
ア:「永遠に栄えるはずの京の都、東寺や北野神社まで灰になってしまう」とあるので、応仁の乱と判断できます。イ:「大山崎の油を扱う座」より、室町時代の座と判断できます。ウ:「新田開発、干鰯」より江戸時代の農業のことと判断できます。エ:「岐阜の町、各国の商人が~」より楽市令のことと判断できます。これは信長の政策と合致するので、正解はエです。
正答率は47.6%と比較的点差がついた問題でした。歴史名辞やキーワードより時期の選定を正しく行えば正解にたどりつけます。
問4 産業革命と欧米諸国の関係をグラフにしてまとめた問題です。この問題は空欄のすべての国が埋まらないといけませんが、もう一つの植民地の話と整合しなければいけないという二段階構成の問題です。このタイプの問題は正答率が大きく下がりやすい傾向になります。
①~③はイギリス・ドイツ・オランダが入ります。植民地領有面積の合計を見ると一番多いのはイギリス・フランスと判断できるので、①がイギリスとなります。ドイツとオランダの判定ですが、ドイツは1871年にドイツが成立してから1880年代以降から本格的に動くので、ドイツが②となります。ドイツが分からなくても、1876年以前から植民地を領有していたのはオランダです。それは日本の鎖国時でも交易を行っていたことからも判断できます。よって、オランダが③となります。
AとBがアジアかアフリカかですが、オランダはアフリカに植民地を領有していないことからBがアフリカ、Aがアジアとなります。これについてはすべてできてないと点数になりません。
その影響で、正答率が21.7%と非常に低いです。部分正答率を含めると37.3%です。関連知識と背景知識などを駆使してグラフ問題でも活用できないといけません。ここでいう部分正答率については、①~③ができている人を指します。
問5 資料を見て空欄を埋める問題、そのうえでこの法令が出された目的と結果を組み合わせる問題です。これも二段階構成のため正答率が下がりやすいです。
資料の1行目に「各旧藩主は妻子とともに東京に在住」とあることからこの法令は廃藩置県と判断できます。この令は1871年に出されました。この法令が出された目的としては明治維新が天皇中心の中央集権体制を作ることを目的としているのです。よって、正しいものはbとなります。また、この令が出されたのち、西郷と大久保は征韓論をめぐって対立しました。よって、正しいものはeとなります。よって、正しい組み合わせはオとなります。
正答率ですが、廃藩置県だけだと17.0%、組み合わせを含めると8.2%しかありません。おそらく、この法令を地租改正や版籍奉還と間違えた可能性があるのでは、と思います。
ちなみに、拙著には上記のカギカッコ内の解説部分はしっかり触れています。ここからもわかるように、単純な一問一答形式の学習だけでは対応できません。
問6 今回僕が注目した問題です。まさに探究型学習の問題です。アメリカと日本の戦争の目的を正しい語群からそれぞれ選んで答える対比討論型の論述問題です。
アメリカはファシズムの打倒のために大西洋憲章を制定しました。日本については欧米諸国からのアジア植民地支配の解放のために大東亜共栄圏を建設するために戦争の目的としました。
残りの選択肢では、シベリア出兵はロシア革命の影響より時期が合いません。ポツダム宣言は第二次世界大戦の終結についてなので、戦争目的ではありません。冷戦は戦後なので時期が合いません。
解答例としては、「アメリカは大西洋憲章で明らかになったファシズムの打倒を主張した。それに対して日本は欧米諸国の支配からアジア諸国を解放し、大東亜共栄圏を建設することを主張した」となります。
正答率ですが、完全正答率が4.5%、部分正答率が14.7%とかなり苦戦しました。太平洋戦争の話でもここの内容に触れている余裕はあまりないと思います。そのため、正答率がかなり低かったと思います。
これについてはさすがに紙面の都合上、拙著でも触れることはできませんでしたが、最新問題を出すときにはしっかりと対応させていきます。
大問2ですが、正答率が50%を切っている問題ばかりです。部分正答率を含めても1問しかありません。ここから、入試社会学習をすでに間違えている受験生が多いことがわかります。
■大問3 解析
大問3は地理分野です。Aが世界地理、Bが日本地理となります。
A
問1 ある都市を訪れたときの注意事項をまとめた問題で、その場所を答える問題です。
まず、年平均気温が9℃、平均気温はほとんど変わらない、酸素吸入等の処置、とあるので、高山気候であることがわかります。よって、標高は高い、となります。A~Dのうち、高山気候に当てはまるのはDです。Aは熱帯、Bは乾燥帯、Cは熱帯なので、消去法でDです。D付近にはアンデス山脈があるので、高山気候と判断できます。
正答率は64.0%とまずまずの正答率です。
問2 スマトラ島で起こっている問題を短文記述問題で答える問題です。インドネシアではパーム油の生産をしていますが、資料1にはスマトラ島には熱帯雨林がある、とのことです。資料2はスマトラ島の何かの割合ですが、資料1の文言などから判断すると熱帯雨林ではないか、と推察できます。よって、「熱帯雨林の減少」が起こっていることになります。
正答率ですが、完全正答率が22.5%、部分正答率を合わせると37.1%となっています。資料の活用と考察ができていなければ点差が開いた問題となります。似たような問題が今年の鹿児島県でも出題されていました。
問3 この問題は事前に僕が点差がつきやすい問題と指定した問題です。
EUの加盟、離脱を決める国民投票を実施したときの代表的意見の正文を組み合わせる問題です。今回の問題はa・b、c・d、e・fとそれぞれ組み合わせが決まっています。
まず、EUの加盟と離脱がそれぞれどちらの国なのか、がわかると判断がしやすいです。前提知識より、EUの加盟はクロアチア、EUの離脱はイギリスと判断できます。Xの賛成意見を見ると、「外国からの旅行者が増え、恋区内の観光業が伸びる」とあるので、国境の自由のことを言っているのでは、と思います。よって、X国がクロアチアであることは想定できます。逆にYの反対意見では、「関税が課せられるようになる」とあるので、EUを離脱すると国境を越えるのにパスポートが必要となり、また関税もかかるようになります(関税に関する協定をシェンゲン協定という)。よって、ここからY国がイギリスと判断できます。よって、bが正文となります。
X国の賛成論と反対論を見ると、独自の経済政策をしやすくなる、というのはEUに加盟していないときの話なので誤文。優秀な人材が外国に流出するのは、国境のボーダーレス化が起こっている影響とみることができるので、こちらが正文となります。よって、dが正文となります。
Y国の賛成論と反対論を見ると、国境の管理を厳しくすることはEU離脱の利点とみることができます。よって正文です。他国からの労働者が増加するのは、国境のボーダーレス化の影響とみることができます。よって、eが正文となり、正しい組み合わせはキとなります。
正答率は23.2%と期待値よりは高いものの、やはり低いです。原因としては、正しく判断できていないこと以上に、国境のボーダーレス化についての関連知識、EU加盟の特徴などを正しく理解・活用できていなかった影響では、と思います。
B
問1 グラフを使ってどの都道府県か選択させる問題です。今回はbとdを選べばいいです。該当する県はあ~えの順番にあわせて秋田県、神奈川県、愛知県、大分県となっています。
まず、生産年齢人口が一番大きいcは都会かその周辺と判断するので、神奈川県か愛知県です。同じようなグラフがaですが、人口が多いのは神奈川県と分かれば、aが愛知県、cが神奈川県となります。
続いて、65歳以上の人口割合が多いbとdですが、これは秋田県か大分県となります。食料自給率ですが、秋田県は米の生産があることからこの割合は高いと判断します。よって、bが秋田県、dが大分県となります。よって、いはc、えはdとなります。
正答率は41.5%ですが、点差はかなりつくと思います。人口分布、自給率との関係性をそれぞれ意識すれば解答は出せると思います。
問2 鹿児島市に退避壕があること、桜島が近いことから考えると、①に入るのは噴火と分かります。①の直後に噴石とあるので、ここからでも判断はできます。
四万十町では大地震から津波を想起できればいいでしょうよって、②は津波です。また、写真2の監視台ですが、ある程度平地にあることからYにあると判断できます。
正答率ですが、噴火・津波の合計正答率は59.6%で、うち完全正答率は17.4%でした。監視台が置かれる場所については、ハザードマップなどの学習で確認しておくといいでしょう。
問3 この問題も事前に差がつく問題として提示していました。
工場がどういうところに置かれているかを短文記述問題で答える問題です。
資料1を参考にすると、「工場は製品の輸送に適した、空港や港の近くに置かれている」とまとめています。
資料2より、疑問として、「工場の近くに空港も港がない」とあるのに、工場があるのか、と考えます。地図を見ると、美祢市からは空港・港が遠いです。が、よくみるとセメントの原料である石灰石を採ることができる採掘場が多いことがわかります。その近くに工場があります。また石灰石は加工して製品にするとセメントになりますが、これは石灰石よりも軽くなります。つまり、軽くなることで輸送がしやすくなるのです。よって、この特性を生かして原料が採れる近くに工場を置くことがあるのです。
解答例は「石灰石をセメントにすると、重量が軽くなり、輸送しやすくするため、原料がとれる場所の近く」に置かれています。
正答率は、完全正答率が1.9%、部分正答率を合わせると31.0%となります。おそらくですが、資料を正しく読み切れていないのが原因では、と思います。その資料から活用するべき知識の整理もあわせて行わないといけません。
大問3の正答率ですが、30~40%台の正答率が中心となっています。これは難化したというよりは、一問一答形式の単純知識での学習では限界が来ている、ということが言えると思います。
■大問4 解析
大問4は今年は公民分野からの出題でした。
問1 新聞の見出しからそれぞれ基本的人権の権利を答える問題です。この問題はすべて答えられないと点数になりません。
記事1は「日照配慮」とあるので、環境権が入ります。記事2は「生存権」とあるので、社会権となります。記事3は「投票可能」とあるので、参政権となります。記事4は「国家賠償訴訟」とあるので、請求権となります。
正答率は64.0%とまずまずの正答率です。ただし、全部できないと点数にならないのは注意点です。
問2 資料3から読み取れる経済的問題を答える問題、その内容を短文記述問題で答える問題です。これも2段階で答えないといけないのですが、それ以上に厳しいのが、完答である点です(部分点なし)。
地図はGDPに応じて各国の面積を著した図になりますが、特に大きいのはアメリカ・日本・イギリス・ドイツなどといった先進国といわれる国々です。つまり、先進国と発展途上国間の問題なので、南北問題です。
内容としても、北半球にみられる先進国と南半球に多く見られる発展途上国との間に経済格差がある、と分かれば十分です。
ここ数年では出題がなかったものの、久しぶりに出題されました。なお、拙著でもしっかりと補足しています。
正答率は39.8%でした。南南問題と混同した人もいれば、南北問題の内容に踏み切れなかった人もいたのでは、と思います。ただし、採点基準に南南問題について正しく触れていても正解となるそうです。なによりも、完答であることが正答率を下げた要因では、と思います。
なお、拙著では南北問題は掲載してますが、入試ランクはありませんので、こちらは追記いただけると幸いです。
問3 インフレとデフレに関する問題です。
資料4より、値段が下がっていることから、この現象をデフレーションといいます。資料5は逆に日本銀行の金融政策でお金の量を減らしていることからインフレーションと分かります。金利が上がるとお金は借りにくくなります。その結果、景気はおさえられて物価が安定するようになります(インフレーションは物価が高騰する)。
正答率は42.7%、デフレーションもできた場合は60.9%となります。
問4 衆議院と参議院の選挙制度などをみて空欄を答え、衆議院議員の者を選ぶ、という2段階構成の問題です。
Xさんは1つの選挙区で1人を選ぶから小選挙区制で当選したとわかります。よって、衆議院議員とわかります。Yさんは年齢が33歳で、初当選の在職期間が6年なので、参議院議員と分かります。参議院議員は選挙区制と比例代表制のいずれかです。全国を1つの単位とするのは比例代表制です。Zさんは全国を11のブロックに分けて行われる比例代表制で当選しました。年齢が28歳から衆議院議員と分かります(参議院の被選挙権は30歳以上)。
正答率は21.7%ですが、これは完全解答の正答率です。部分正答率を合わせると58.2%となります(この問題は特殊で、空欄補充で1点、記号完答で2点です)。
問5 ①国連の活動の一つで、1992年以降、日本も参加していることから平和維持活動(PKO)です。②世界の平和と安全の維持を行うために侵略した国に対してほかの国々が制裁を与えることを集団安全保障といいます。
この問題の正答率ですが、衝撃の0.9%です。これはPKOではなく集団安全保障がわかっていない受験生が多数でした。そして、この問題が完答であることがより難化した要因だと思います。
なお、平和維持活動ですが、6/30現在の入試ランクはBとなっていますが、島根県の結果が反映されてから改めて出したいと思います。
問6 最後の問題は新語であるカーボンニュートラルに関する論述問題です。その中の一つにゼロカーボン30があり、その中の一つにスマートムーブがあります。一見、自由記述型の問題といわれますが、資料を活用した問題です。
資料6はパリ協定なので、地球温暖化を解決するための問題を考えないといけません。スマートムーブとは環境にやさしい移動、とあるので、関連知識にあるパークアンドライドを意識できればいいでしょう。この結果、二酸化炭素などの温室効果ガスの排出量を削減する効果が期待されます。
解答例:地球温暖化という環境問題の解決に向けて多くの人々が自動車ではなく、公共交通機関を利用することを提案する。これによって、二酸化炭素などの温室効果ガスの排出量を削減する効果が期待できる。
正答率ですが、完全正答率は24.6%、部分正答率を合わせると51.4%となります。
なお、カーボンニュートラルについてですが、来年から使用される公民教科書で太字記述が3か所、内容記述が2か所となります(教育出版では記述がありませんでしたが、校閲後に出る可能性はあります)。
■学習習慣をつけておく
ここからもわかるように、すでに今の公立高校入試は「従来の一問一答形式の学習だけでは限界が来ています!」そして、直前にちょこちょこと確認して、という学習では高得点がとりにくくなっています。
そのため、普段から入試に向けた学習習慣をつけておく必要があります。そして、一問一答形式の学習をする場合、旺文社などの一問一答では近年の公立高校入試では十分な対応ができないのです(ただし、通常の知識については旺文社や受験研究社でも対応はできますが……)。つまり、旺文社の一問一答形式の問題集では記述式や思考型、資料読解型の問題に関する知識が不足するのです。それを最初から自分で補って学習しているならまだ何とかなりますが、コスパやタイパを求めての学習では効果が上がりません。
そのため。少し大変ですが、周辺知識・関連知識・背景知識を意識した学習を普段から行わないといけません。
なによりも、早い段階から学習習慣をつけておくことが大事です。そのためには夏休みまでに基本知識の定着を図ってください。記述問題などに対応するためには、『高校入試 社会が一問一答でしっかりわかる本』(かんき出版)での学習が近年入試に対応する最短距離になると思います。その前に塾用教材、『自由自在一問一答』(受験研究社)で土台構築をしてもいいと思います。
皆様のサポート、よろしくお願いいたします。