【高校入試紙面講義】2020年新潟県 大問4

日曜日ですが、紙面講義は休まずに行いたいと思います。なお、正月休みになっても、紙面講義は休まないで行いたいと思います。今日は特に正答率が低くなっている近現代の歴史を取り上げます。平均点が下がっている原因とは何か?そして、落としてはいけない問題とは何か?本日はここまで話したいと思います。なお、新潟県公立入試の出題は2回目ですが、今回はどうしても取り上げたい問題があるため、掲載させていただきます。
そして、今週のみ高校入試紙面講義は解説部分・正答率までは無料公開とします。今回は落としてはいけない問題についての話は限定公開となります。僕独自の解答アプローチ法、解説に載っていないような切り口で話していきたいと思います(解説については実際の解答・解説を見ていません。状況に応じて活用することはありますが、ここでの解説は赤本や電話帳などの解説と切り口が違います)。
少しでも正答率を上げたい受験生の皆さま、解説するのに困っている指導者の皆さまに少しでも見ていただけたら、と思います。よろしかったら公式noteのフォロー、記事・マガジンの購読、サポートもしていただけると、今後の記事執筆の励みとなります。よろしくお願いいたします。

■問題の概略

今回はサイトなどに新潟県公立入試の問題がありませんでした。そのため、資料などを用いる問題は解説のところで可能な限り再現したいと思います。ですが、図版などをそのまま取ることは著作権の関係上できませんので、指導者は電話帳や赤本などで見ていただけると幸いです。
問題は近現代の年表が大まかにあります。それを用いて問題に答える形式です。注目は(3)です。この問題は大学入試共通テストでも出てきそうなタイプの問題です。「背景・原因→できごと(できごとの内容)→結果・影響」と受験生が苦手な歴史の流れを掴む、ということが今回の問題です。そして、(4)は戦後の並び替え問題です。今回の問題はそこまで難しくないため、サクッと正解できれば、と思います。もし、年号並び替え問題が苦手な方は、僕が先日掲載しました以下の記事をご覧になってください。

■解説

それでは、さっそく問題にとりかかりましょう。

(1)下線部分a(日米修好通商条約)は、我が国にとって不利な内容を含む不平等条約であった。どのような内容が不平等であったか、二つ書きなさい。

この問題は、日米修好通商条約の不平等条約がどんなものだったかを問う基本的な記述問題です。その内容は、外国に領事裁判権(治外法権)を認めたこと日本に関税自主権がないこと、この2点です。少しひねる場合は、日米修好通商条約の史料を用いて、これらを答えさせる形式もあります。どのタイプが来ても確実に正解を出したい問題です。

(2)年表中のAの時期(1890年~1914年)に、我が国で起きたできごととして、正しいものを、次のア~エから1つ選び、その符号を書きなさい。
ア 政府が議会の承認なしに労働力や物資を動員できる、国家総動員法が制定された。
イ 普通選挙法が成立し、満25歳以上のすべての男子に衆議院議員の選挙権が与えられた。
ウ 板垣退助らにより、民撰議院設立建白書が政府に提出された。
エ 護憲運動が民衆の支持を集め、桂太郎内閣は辞職に追い込まれた。

この問題で保留にしてしまう選択肢はエです。恐らく桂太郎内閣が活躍した時期の学習をスルーしている人が多いです。となると、残りの選択肢で正解を導き出さないといけません。もし、どれも当てはまらなければ、保留にしたエを正解にします。今回の判定を決めるポイントは歴史名辞です。
アは国家総動員法が昭和前期です(西暦だと1938年)。イは普通選挙法で大正後期です(西暦年で1925年)。ウは民撰議院設立建白書が明治前期です(西暦年で1874年)。よって、問題で要求されている明治後期~大正初期である1890~1914年までに当てはまりません。エは護憲運動と桂太郎内閣の辞職は大正初期です(西暦年で1912年)。護憲運動は2回起こっていますが、最初は第一次世界大戦前に起こっている、二回目は普通選挙法成立前に起こっている、ということが分かればいいでしょう。よって、保留にしたエが正解となります。

(3)下線部分b(第一次世界大戦が始まる)について➀②に答える問題
➀表中の( X )、( Y )にあてはまる語句の組合せとして、正しいものを、次のア~エから1つ選び、その符号を書きなさい。
ア X:イベリア半島 Y:国際連合
イ X:イベリア半島 Y:国際連盟
ウ X:バルカン半島 Y:国際連合
エ X:バルカン半島 Y:国際連盟
【背景・原因】「ヨーロッパの火薬庫」とよばれた( X )では、民族問題も加わって激しく対立し、1914年、サラエボ事件が起こる
【できごと】第一次世界大戦がはじまる→【日本の動き】日本は日英同盟を理由に参戦する
【結果・影響】第一次世界大戦後、国際平和を目指して( Y )が設立される
②1930年代になると、表中の下線部分cのイギリスでは、ブロック経済が行われた。このブロック経済について、その【背景・原因】、【ブロック経済の内容】及び【結果・影響】を、下の表が完成するように、それぞれ書きなさい。
【背景・原因】
【できごと】イギリスではブロック経済が行われた→【ブロック経済の内容】
【結果・影響】

➀はそこまで難しくないのですぐに答えを出します。これは表がなくても答えは出せると思います。
第一次世界大戦は三国同盟と三国協商との間で「ヨーロッパの火薬庫」といわれたバルカン半島での対立が起こっていた中で、サラエボ事件が起こったことで第一次世界大戦が勃発しました。この戦争は総力戦となったことで世界中で1000万人以上の犠牲者が出ました。戦争終了後、国際平和を願って、国際連盟が発足しました。
よって、Xにバルカン半島、Yに国際連盟が入るため、正解はエとなります。

②ですが、これは最低でも、原因と内容で部分点は取ってください。結果・影響については簡単に書くことはできません。そのため、結果・影響については点数を落としてもやむなし、かもしれません。この問題は、配点が9点もあるため、何も書かなければ、丸々9点落としてしまいます。
まず、ブロック経済が行われた原因ですが、これは世界恐慌で世界中が大不況となったことが書ければいいと思います。これにより、アメリカではニューディール政策、イギリス・フランスではブロック経済が行われました。ブロック経済の内容ですが、自国と植民地との貿易関係を強化する一方で、他国の製品に多額の関税をかけて締め出したことを書けるといいでしょう。この記述は用語説明型なので書けるようになりましょう。前者は因果関係型の記述問題です。最後に結果ですが、植民地をもつ国と持たない国の格差が書けるといいでしょう。これにより、国家対立が激しくなり、ドイツやイタリア、日本はファシズムに走り、軍事力を使い植民地の拡大を行うようになりました(加えて、経済力も少なかった)。その後、国際連盟を脱退しました。
解答例
【背景・原因】世界恐慌がおこり、世界中で不景気が起こった
【内容】植民地との貿易関係を強化することで、他国の商品に高い関税をかけて締め出した
【結果・影響】植民地を持たない国の不満が高まり、国家間の対立が激しくなった

(4)次のX~Zは、年表中のBの時期(1945年~2001年)のできごとである。年代の古い順に並べたものとして、正しいものを、あとのア~カから一つ選び、その符号を書きなさい。
X 毛沢東を主席とする中華人民共和国が成立する。
Y 冷戦の象徴であった「ベルリンの壁」が取り壊される。
Z 沖縄が日本に復帰する。
ア X→Y→Z イ X→Z→Y ウ Y→X→Z
エ Y→Z→X オ Z→X→Y カ Z→Y→X

戦後の並び替え問題ですが、この問題は大阪府の形式と同じです。そのため、選択肢を絞る作業はそこまで難しくないと思います。こういう形式は時期が比較的近いため、正確な年号・歴史の流れをつかめなければいけません。
Xは中華人民共和国の成立が1949年です。Yのベルリンの壁が取り壊されたのが1989~90年です(マルタ会談の前後)。Zの沖縄が日本に復帰したのが1972年です。よって、X→Z→Yとわかるので、正解はイとなります。

では、細かい年号が分からない場合どうしたらいいか。今回は冷戦の流れがわかれば問題なくできます。冷戦はアメリカとソ連間での対立です。その後、朝鮮戦争が起き、日本の国際連合加盟、キューバ危機などをへて、1989年のマルタ会談で冷戦が終了します。その後、冷戦の象徴だったベルリンの壁が取り壊されました。この流れをしっかりとつかめられたら正解につながると思います。年号並び替え問題についての攻略法は、上記の究極のTactics集で確認ください。

■正答率

(1)領事裁判権が50.7%、関税自主権が57.1%でした。この問題は出題頻度も高い問題で、かつ短文で書けるため、もう少し正答率が上がってもいいと思います。比較的書けているとは思います。

(2)26.0%でした。恐らく桂太郎内閣が倒れた話を知らなかった人がいたと思いますが、正しい正誤対策ができているなら消去法で解けたと思います。近現代は全体的に正答率が低いため、正しい知識の定着を図ってください。

(3)➀が66.8%、②が24.7%でした。➀についてはよくできていると思いますが、②については途端に正答率が下がります。これは共通テストでも出る形式の問題のため、今のうちにこのような形式の問題に慣れておきましょう。配点が高いため、ここで部分点が確実に取れたかどうかでも点差が分かれます。

(4)51.3%でした。年号並び替え問題にしては正答率は高い方です。選択肢になっている関係で並び替えの絞りができた可能性はあったと思います。ですが、これは全部を書いたとしても同じやり方なので、形式が異なってもできるようにしましょう。

■落としてはいけない問題とは?

ここからは限定公開となります。気になる方は是非購読していただけると幸いです。

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