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ある初秋の夜のこと。

大学に入って初めての夏休みが終わって間もない頃。

地元にいた時から付き合っていた彼女との恋愛が終わった。地元にいたときは、毎日、教室にいて、席も隣。放課後は共通の友人と勉強をしたり、駅前でデートしたりしていた日々で、そんな終わりが来るなんて思ってもいなかった。

上京して、2つ県を跨いだ距離になってから、2人は変わってしまっていた。

知らないことが増えた。お互いに知ってるつもりで、やり過ごしてきた歪みが目に見える形で僕らを襲った。

徐々に増えていく、お互いがそれぞれに友人たちと過ごす時間。

全く別のジャンルの授業。

共有できない、趣味。

知らない間にできた、生活習慣。

「もう終わりにしよう。」初めに口を開いたのが、どっちだったのかはもう覚えてない。どっちでもよかった。

電話でお互いに散々泣いた後、「さようなら。」それが彼女との最後だった。

別れたことは後悔していない。ただ、ちゃんと会って話せばよかったとだけ思っていて、この後は電話とかLINEで別れ話をしないと心に決めた。

それから何日経った後、この事を相談したある女の子がいた。

その子の一言が、今でも頭から離れない。

もうあの子以外に、俺のこと好きになってくれる人なんていないと思うし、誰とも恋愛しないと思うって言った後に19歳が放ったとは思えないような達観した一言。

「人間てさ、必要な人が現れるようになってると思うんだよね。そういう人って考えるとかじゃなくて自然と頭に浮かんでくるものなんじゃないかな。」

電話で話をしてたら、原付で家に現れたその子は、静かな優しい風が吹く午後10時、街灯の薄暗い光の下で、優しくそう言った。


その街灯は、今はもうない。

written by K☺︎UKI

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