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短編【愛を創りし者】小説
お前の様な醜い顔の人間は誰からも愛されはしない。
何故そんな事を言うんだ母さん。
母さんも僕を愛してはくれないのかい?
そんな事はない!あんなに愛してくれたのに。
どうして、そんな事を言うんだ!母さん!
イア!イア!クルウルウーフンタング!
目が覚めると異常なほどの大量の汗で全身が濡れていた。
もう冬だというのに。
母が亡くなって半年が過ぎようとしている。
「お前の様な醜い顔の人間は誰からも愛されはしない」
母はそう言って私を人から遠ざけた。
でも、私を心から愛してくれた。
幼いころから悪夢を良く見た。
形容し難い恐ろしい怪物に襲われる夢。
魚類のような爬虫類のような両生類のような、ぬめぬめとした触覚に襲われる夢を。
いや違う。
その怪物に襲われる者を見て嘲笑う夢を。
私は怪物に貪り喰われる人々を見て笑っていた。
私の心は醜い。
その醜さを母は看破していたのかも知れない。
だから人に会わせる事を拒んでいたのだろうか。
1921年5月22日。
母は狂ってこの世を去った。
私はついに一人になってしまった。
母の死を契機に私は悪夢を前にも増して頻繁に見るようになった。
母が亡くなってこの数ヶ月間、私は全く小説を書いていない。
作家仲間のロバートやダーレイが励ましの手紙をくれる。
でも心配しないで欲しい。
書けないのではない。
待っているのだ。
私は、あの声を。
悪夢は私の創作の源泉だ。
その悪夢を元に私は短編小説【ダゴン】を書いた。
もう四年も前のことだ。
意識的にせよ無意識にせよ悪夢の中で得た恐怖の体験が私の創作の糧となっている。
その悪夢が創作の淵源が私に語りかけてくる!
イア!イア!クルウルウーフンタング!
イア!イア!クルウルウーフンタング!
ルルイエの彼の地の果ての館にて死せる名も無き神ルルイエにて夢見しままに待ちいたる
ああ!そうか!
そう言う事だったのか!
私が書いた【ダゴン】は!
【眠りの壁を越えて】は!
【サルナスの滅亡】は!
すべては一つの物語だったのだ!
海の底の深淵に眠る名もなき神が語りかけてきな太古の記憶。
“旧支配者”の戦いの歴史を。
真実の物語を広めなければならない。
粘菌類が有機物を求めて四方に広がってゆく様に。
一粒の重力場が時間と共に広がり宇宙となる様に。
この宇宙的叙事詩を世界に広めなければならない。
混沌からの恐怖が私にそう命じる。
イア!イア!クルウルウーフンタング!
イア!イア!クルウルウーフンタング!
お前の様な醜い顔の人間は誰からも愛されはしない。
違う!
違うよ母さん!
醜さを愛してこそ本当の愛なんだ!
恐怖の果てに愛はある。
恐怖こそが愛。
イア!イア!クルウルウーフンタング!
イア!イア!クルウルウーフンタング!
イア!イア!クルウルウーフンタング!
名もない神よ、お前に名前を与えよう。
クトゥルー、ク・リトル・リトル、クルウルウー、Cthulhu、Cthulhu、Cthulhu、Cthulhu、CthulhuCthulhuCthulhu………。
人間の発声器官では発音し得ない名前を。
多くの人類にお前の名を知らしめすのだ。
お前の愛を。
真実の愛を。
地球上のあまねく人々にお前の名が知れ渡ったとき深き深きルルイエより、お前は目覚めるであろう。
そのとき恐怖と愛の咆哮をあげよ。
私がお前を創ったのか。
お前が私に創らせたのか。
もはや、それはどうでもいい。
私の名は"愛を創りし者”
⇩⇩別の視点の物語⇩⇩
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