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地域住民による解体工事クレーム、それでも工事をやめない理由

粉塵や粉砕による解体工事問題が起こってから3週間、住民への説明は未だなく解体工事が続けられる一方、今日は「今週の作業予定」が消されていました。

3週間前の今週の作業予定
9月25日の「今週の作業予定」

解体工事にはルールや法律がありません。

問題となっているのは、名古屋市の高級住宅街、覚王山で行われている三菱地所レジデンス松楓閣跡地プロジェクトです。

解体業者はTSUCHIYA株式会社です。

1. 解体工事における事前周知

解体工事には着工前に近隣住民へ事前周知をするように定められています。しかし、着工後に説明をする事後周知は定められていません。

※各自治体の定め(参考)
各自治体の定めでは、解体工事を行う際、周辺住民から騒音や振動などの発生による苦情や紛争を未然に防ぐために「事前周知」をすることが定められています。

「事前周知」では、
(1)工事期間・1日の作業時間
(2)作業の方法
(3)騒音・振動、粉じんの防止方法
(4)工事関係車両の出入口・通行経路
(5)周辺への安全対策
(6)石綿含有建築材料(アスベスト製品)の有無(注2参照)
(7)その他
などです。ただし、この定めに違反しても罰則規定はないようです。

解体工事における今回のトラブル

今回は近隣住民のクレームがされるまでの2カ月間、防塵対策を行わずに解体工事や粉砕作業が行われていたという過去の事実です。

マンションの目の前で粉塵が上がる様子

まずは徹底的に過去の解体作業を調査し、本来はどのような対策を行っていくべきだったのかを原因追及していく必要があるでしょう。

<9月21日付、名東区公害対策室より>
区役所(自治体)では上記の解体工事内容を把握していないため、近隣住民からの通報を受けて現地に赴き、目視にて状況確認し、助言を行いました。

今回の解体工事は明らかに問題があったため指導がされました。

しかし、名東区公害対策室の担当者のヒアリングでは、解体工事の方法に制度やルールがないために、どのような解体工事が間違っているのか?どれだけ粉塵被害(程度、頻度、広さ)があれば行政指導や罰則を科すのかという基準がない。とのこと。

つまり、どれだけ粉塵を広げ、近隣住民に迷惑をかけても、法律上では裁けないということです。

宅地造成工事については許可としか説明されていない

2. 解体における事前周知の方法

各自治体では次のいずれかの方法で周知を行うものとされています。

(1)説明資料の配布
(2)戸別訪問による説明
(3)説明会の開催

周知の対象は、解体建築物の敷地に隣接する土地に居住する者または事業を営む者です。

解体工事は誰に周知されるのか?

今回は近隣住民やマンション管理会社に対して説明資料の配布という形で行われたそうです。

周知したという事実はあれど、直接の被害者である賃貸住宅の居住者等は、被害を受けてから気が付くものです。

また管理会社やオーナー等は直接の被害を受けていないが、今後、建物の空調機や外観等に問題があった際には表面化するものと考えられます。

3. 解体工事のクレームは誰に言うべきか?

これまでの調査を基に、下記に報告をしました。

(1)マンションなどの管理会社や管理組合
(2)区役所(公害対策室等)
(3)町内会や自治会(学区連絡協議会)
(4)警察
(5)市役所

しかし直接の被害者(当事者)ではないため、その問題に深く向き合うことができないもの現実です。これが個人としてこれまで声を上げても問題が広がらなかった原因でしょう。

同様の被害を受けた方々と連絡を取り合い、被害者の会をつくることも検討すべきでしょう。

4. 解体工事の問題をどう立証するか?

まずは被害の程度です。

近隣住民1000人が被害を受けたのならば分かりやすいのですが、今回も、そのうち数戸のみ重度の被害を受けたという事実です。

そもそも解体工事は現場によって、粉砕作業や土壌改良による粉塵被害の程度が異なり、また風向きによって被害箇所が日々変わるからです。

解体から3カ月が経ち、やっと防塵シート対策がはじまりました(9月26日)
当マンションの目の前でも防塵シート対策がはじまりました

すべてはリアルタイムです。過去は立証できなくなるというものでもないでしょう。数多くの証拠写真の中で今後は立証及び工事の検証をしていけるものと信じています。

5. 社会問題としての解体工事の問題

解体工事会社の近隣への対応が今後の焦点となります。

※個人的には名古屋は狭いので、長年住む覚王山のことはよく知っていますし、下請け会社も弁護士も知っている方々でした。

まず、責任の所在として、依頼主(施主)は事前周知の際に、各自治体の管轄窓口へ届出書を提出する義務があります。

しかし、その後の作業はすべて業務委託契約(請負契約)で委託された解体業者に一任されるため、解体業者の近隣住民への対応についても、施主として言い辛いものです。

たとえば覚王山近隣の分譲マンション開発では、ライオンズマンションが近隣住民から総反対を受け、垂れ幕も出てます。施主が基本的に非難されますが、工事会社のほうにも注目をすべきと思います。

が、建築会社は建ててしまえば終わりですので、工事が止まることはありません。近隣住民の声は結果、かき消されます。

とはいえ、今回は直接の被害者として、過去に相当の粉塵被害を受け続けてきた事実や、その後の解体工事会社の対応をしっかり共有していきます。

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