僕は「小説のセリフ」で宇宙をへこませたい
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僕は「小説のセリフ」で宇宙をへこませたい

管野光人

お世話になっております。素人以上作家未満の管野光人です。

どこのジョブズだ、みたいなタイトルで始まりました。

今回のお題は「小説のセリフ」編でございます。

てめえみたいな底辺野郎に教わりたくねえよ、と言わないで。

自分も目隠しプレイで手探るので、ドSな紳士淑女はお付き合いを。


現代のアリストテレスかく語りき

伊坂幸太郎さんの独特な会話や海外小説のウィットに富んだセリフ
、誰だって書きたいと熱望しますよね。

自分は書いた原稿を前にして、そのセリフの薄っぺらさに目をそむけたくなる、それはもうサガミゴムのように幸福の0.01ミリっ(ちなみに相模ゴムは相模原市にはなく厚木市にあります)。

そのときばかりは、才能の有無に目頭が熱くなるホントに。それでも天にまします神様を、グーパンできる距離まで引きずり落としたい。

とどのつまり、物書きとは、哀れな生き物なのです。

そこに蜘蛛の糸を垂れたのは、

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ロバート・マッキー著『ダイアローグ 小説・演劇・映画・テレビドラマで効果的な会話を生みだす方法』(フィルムアート社)でございます。

このマッキー氏ですが世界でもっとも注目されるシナリオ講師として、前著『ストーリー  ロバート・マッキーが教える物語の基本と原則』がプレミア化しており、Amazonにて1諭吉で売ってたりします(廉価版が発売されてインフラは収まっていますが)。

そして氏が「現代のアリストテレス」と称されるがごとく、本書『ダイアローグ』は哲学書のような内容。

加えて内容も哲学書みたいにぶ厚く、本をノギスで測ったら23.5ミリもありました。

タイトルの「ダイアローグ」とは、「ふたり以上の登場人物は交わす会話」のコト。それには独白や一人称の地の文も含まれます。

たとえば、

「必死に生きるか、必死に死ぬか」(『ショーシャンクの空』)
「目標の体重まで胃腸炎あと一回」(『プラダを着た悪魔』)

上記のごとく引用に値する、記憶に残るダイアローグは長く生き延びます。


ドラマチックな会話ってどう書けばいいの?

それでは、『ダイアローグ』で自分が気になった技術を紹介しましょう。

まずは、読み手を没頭させるダイアローグを構成する鍵として、マッキー氏は掉尾文(たくびぶん)を挙げています。

掉尾文とは、核となるアイデアを最後で明かす文。いわゆる倒置法ですね。

たとえば、

「友人のセルジュが買ったのは絵だ。色は白。背景が白なんだよ。じっと目を凝らせば見えるだろう、斜めに走った細い線が。」

これを普通のセリフにすると、

「友人のセルジュが絵を買った。白い色で、白い背景なんだよ。斜めに走った細い線が、じっと目を凝らせば見えるだろう。」

どうでしょうか? やはり前者の掉尾文がセリフとして面白いですよね。

他には、セリフとしての動詞の有効性です。

限定的な動詞は意味をはっきりさせるが、あいまいな動詞は形容詞や副詞をはらんで意味がぼやけやすい。

たとえば、

「ハンマーを力強く活用しろ」
「釘を打て」

上記2点を比べれば、もちろん2つ目が力強くセリフとして残ります。

ここでも形容詞や副詞を控えろという教訓が活きていますね。

以前に読んだ河野多恵子著『小説の秘密をめぐる十二章』 (文春文庫)で、「散文で大事なのは動詞」という指摘が心に残っていました。

ですが、マッキー氏の指摘で、おぼろげに理解できましたゾ。


セリフによって登場人物の性格を描写しよう

マッキー氏は、登場人物の信念や精神的傾向や個性は、おもに修飾語句によって表されると説いています。

第一は形容詞的表現。

ふたりの人物が花火を見物して、

「大きな花火」
「驚嘆するような規模の花火」

と表現すると、ふたりの個性の違いは明らかになりますね。

第二は副詞的表現。

ふたりが車が通過するのを見て、

「恐ろしいスピードで」
「ものすごく速く」

ここでも異なる個性が示されていますね。

第三は態。

動詞には能動態と受動態があり、この2つで物の見方が大きく変わります。

「家族が旅行を計画した」(能動態)
「旅行が家族によって計画された」(受動態)

このようなセリフの使い分けによって、登場人物のモノの捉え方を表現できますね。


ここまでの総括

セリフでもっとも大切なのは語彙だというコト。

内面を描写するときの言葉の選び方ほど、個性が表れるモノはありません。

あいまいで凡庸なセリフは、登場人物をペッタンコにして、読者を退屈させます。

逆に、具体的で感覚的なセリフは、ひらめきを呼び起こし、登場人物に奥行きと複雑さを与えるモノです。

最後にマッキー氏は、執筆に向かう貴方に語りかけています。

結局のところ、あなたの生み出す登場人物は、あなた自身のなかにある。その人物にふさわしい言葉を見つけるには、想像力を駆使することだ。“魔法のもしも”で考えよう。その正直な答えに耳を澄ますことだ。それはいつでも正しい。
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管野光人
(旧名:丹一) 自分は創作集団「愉怪屋」に所属しています。光るものを書きたい。光に向かっていくものを書きたい。光ある言葉をみんなに届けたい。そんな想いを共有したいです。応募短編集『秘密』が発売中(ΦωΦ)