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自叙架空#99


 
先月近所に天狗が引っ越してきた


 
 
天狗は顔が真っ赤で鼻が高く、歩くと一枚刃の下駄の音がそこら中に響き渡り、体が大きくいつも怒っているような顔をしているので、町内会の議題にも上がるほど皆に煙たがられていたのだが、私は顔を合わせる度にグータッチをして気さくに話しかけていた


 
 
ある時、仲良くして貰っているお礼だと言って、天狗が手に持っていた八つ手型の羽団扇を私にくれ、やったぁ、これで妖力や神通力が使えると思い、私は自宅に帰って早速、自身の私利私欲の限りを尽くした願いを口にしながら羽団扇を扇いでみたのだが、いくら扇いでも普通の団扇よりも弱い風がふわっと起きるだけで、何も願いは通じなかった


 
     
      コウ   

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