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自叙架空#156


隔離病棟の一室で日に日に痩せていく彼女の姿を、私は毎日どういう思いで見ていたのか、今となってはもう自分でも思い出せない


 
彼女は私の初恋の相手であり、初めて唇を重ねた相手であり、将来を誓い合った伴侶あり、私の全てだった 彼女はある日突然病魔に襲われ、入院生活を余儀なくされた 私は日々病室に顔を出すことしかできない自分がもどかしかった 半年ほど経ったある月曜日だった その日はなぜか胸騒ぎがして、仕事を早退していつもより早い時間に病院を訪れた 彼女は意識がなくなり、集中治療室に運ばれていた 私は直接彼女に触れることもできず、透明で薄いビニールの壁越しに彼女を見守り、ただ一心に祈った 白いシーツからのぞく彼女の手はシーツよりも白かった 手当てをする医師の背中から感じる緊張感と切迫感に、私は彼女にこれからなにが訪れようとしているのかをはっきりと悟った 彼女は朦朧とした意識の中、最後に一度弱々しく私の名を呼び、来世でね、と言い、目を閉じた 医師は彼女の眼球にペンライトの光を当て、首を横に振った 彼女に繋がれている心電図のモニターのグラフが横一線になり、それが上下に振れることは二度となかった
 
 


あの日もやけに暑い日だったなと、時々記憶の襞を探りながら、遺灰の入ったペンダントを胸に、私はただひたすら来世を想って今日も独りで生きている


    
   コウ

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