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【小説】自宅警備員

 ふわりと目が覚める。カーテンの隙間からは日の光。朝だ。
 朝を自覚して、手を頭の上に伸ばす。
 手探りでいつものプラスチックの感触を探す。
 あった。
 それを顔の前に持ってくると、そこには7時と表示されていた。確かに朝だ。

 顔を洗い身支度を整えると、コーヒーを入れる。
 コポコポという音を横目の装備を点検する。
 俺のメイン装備はアサルトライフルM4A1。アメリカ軍の制式銃としても、世界中で抜群の知名度を誇るこの銃は、数年前にはゲームでも取り上げられ、さらに知名度を増した。

 表面を軽く拭き、バッテリーを取り付ける。セレクターがSAFEの位置にあることを確認してから、弾倉をセット、構えてスコープを覗き込む。
 武器を手にすると心が目覚める。
 愛銃をカタリと置いて、コーヒーを飲めば今日の仕事の始まりだ。

 銃を手に巡回を開始する。
 警報の一つも鳴っていない以上、ここは安全なはずだが、一晩のうちに何かあったら事だ。念には念を入れる。
 コーナーでは銃口を構えたまま、ギリギリまで近づいてから片足で素早くターンし、先を確認する。何もいなければよし、何かがあればそのままトリガーを引ける体制だ。それは階段でも変わらない。銃を構えたまま、素早く向きを変える。変えた時にはいつでもトリガーが引ける体制を維持。先を確認する。
 エリア全域のチェックが終わればまずは一安心。最低限の安全エリアが確保出来たことになる。

 ピンポーン。

 気の抜ける音と共に、通信が入る。
 まったく、この音で敵に気づかれたらと思うと気が気ではない。もっと隠密行動に適した通信手段の構築を提案しているが、俺の提案が取り入れられる気配はまったくない。
 通信内容は補給物資が届いたという通達だった。
 投下ポイントへ向かう。
 確保したエリアから若干外に位置する投下ポイント。そこへの移動には気を使う。

 安全エリアと外を隔てるロックを解除。気配を伺いながら僅かな隙間から状況をチェックする。
 視界の範囲には何もない。気配もまたないが、これについてはあまり当てにはならない。敵が俺よりも格上でないという保障はどこにもないのだ。
 可能な限り体を遮蔽物の影に隠し、見える範囲をチェックしていく。常に銃は構えたままだ。

 一歩、二歩。
 補給物資を視認。
 銃そのまま、体制を維持。

 三歩、四歩。
 ぐるりと周囲を再確認。
 銃を肩にかけ、補給物資を手に撤退する。
 安全エリアに戻り、ロックをかければ自然と一息つく。
 時間もいい頃合いだ、補給物資の確認がてら昼食としようか。

 補給物資の中にあったカップラーメンで昼食を済ませる。
 軍用食《レーション》も悪くはないが、あれはカロリーが高い、行軍中ならばともかく、拠点防衛には少々過剰だ。
 昼食が済めばまた巡回だ。誰かが侵入した物音こそないものの、出入口全てを再確認し、安全エリアの確保に努める。

 不意に臨時指令室から音楽が鳴り響く。緊急連絡だ。
 素早く移動して通信機を手に取る。この表示は、ボスからの通信か、嫌な予感しかしないな。

「もしもし」
「おい、鈴原、お前昨日の日報出してないだろ」
「あ、すいません」
「すぐに出せ」

 新しいミッションか。気が重いな。だが俺はプロだ、完璧な結果を出してみせる。

「後、チームのやつらからメールの返答が遅いって苦情がきてるぞ、そっちもすぐに返せよ。在宅勤務だからってサボってんじゃねーぞ!」
「あ、はい」

 ツー、ツー、ツー。

 ボスからの通信は切れた。
 今度のミッションは随分とハードなようだ。


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