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マンホール探訪記

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ときには立ち止まり、足元を見つめる。
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#本

茨城県取手市のマンホール

茨城県取手市のマンホール

 日本には、下水道の日というものがあって、それが9月10日だということを、俺は「トコトンやさしい下水道の本」を読んで知った。
 いったいどれくらいの人が、下水道の日は何月何日かを正確に言えるかはともかくとして、取手市民ならば、結構な割合で言えるのではなかろうか。
 なぜならば、取手駅周辺のマンホールに、9月10日は下水道の日と書いてあるからだ。

 茨城県取手市のマンホールには、月桂樹、ケヤキ、モ

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青森県上北郡野辺地町のマンホール

青森県上北郡野辺地町のマンホール

 レイ・ブラッドベリの短編『霧笛』は、たった一匹だけ絶滅から逃れた恐竜が、百万年もの間、海底深くで生きていて、濃霧の夜に、霧笛を聴きに灯台を訪れるという話だ。灯台から発せられるその音が、仲間の遠吠えに似ているからである。
 もの悲しく儚い、たった15ページほどの小さな小さな作品だ。

 青森県上北郡野辺地町のマンホールには、町にある、日本最古の灯台といわれる「浜町の常夜燈」がデザインされていて、そ

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東京都羽村市のマンホール

東京都羽村市のマンホール

 小説「沈まぬ太陽」(山崎豊子著)で、主人公が、ニューヨークにあるブロンクス動物園で見た出来事を回想する場面がある。コンパクトにまとめると、こんな内容だ。
 ブロンクス動物園には、「鏡の間」という檻がある。
 その鉄格子をはめ込んだ檻の中には、一匹の動物もいない。一枚の鏡が置いてあるだけだ。
 来場客がその檻の前に立つと、格子越しに、自分自身の姿が、鏡に映って見える仕掛けになっている。
 そして、

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