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2024/08/22 悲しみの対象は分散化する

 戦後の昭和を知る人ならば、巨人・大鵬・卵焼きで、力道山の死に愕然としたのがほぼ当時の全世代という時代だったと思う。

 私が小さい頃で言えば、キャンディーズやピンクレディーや松田聖子辺りのアイドルが一世を風靡する勢いだった記憶もある。レコードの売り上げを競い合うような、そんな時代でビデオテープが出回りはじめると持っているだけでうらやましがられる人もいた。

 時代はバブルにかけてまっしぐらで、吉幾三ではないが「レーザーディスクは何者だ?」とあるぐらい、媒体、メディアがシェアを競い乱立したのも思い出である。

 たぶん、であるが、レーザーディスクで'AKIRA'や「パトレイバー」のOVA上映会に付き合わされた記憶があり、あの辺りから好みの分岐が始まっていって、平成から令和へとつながっていったのではないだろうか。

 大宅壮一のテレビについての発言、「一億総白痴化」(ママ)はアイドルブームで一区切り終えたかのように見える。電車に乗るとサブスクのネットビデオドラマに夢中な人々、これもまた賢者のする所業とは思えないが、ジョージ・オーウェルのディストピア小説『1984』やウォシャウスキー兄弟のマトリックス三部作の世界観に近づいている。

 ビデオを見てないならばゲームをしていたりで、発信系の作業をしているのは車内を見回しても私か数人ばかりのようである。

 話を戻したい。

 一昨日も草薙素子役の声優・田中敦子さんが61歳で(!)逝去したというニュースが流れた。平成の前期にパソコン通信仲間で「攻殻機動隊」についての話題が流れはじめ、読んでいる人はマンガ時代から読み込んでいるファンまでいた。その頃からアニメ版までついて行ったオールドファンはショックだろう。

 一時期、オタクというと宮崎勤元死刑囚の連続幼女誘拐殺人事件のあおりで白眼視された黒歴史もある。現在の好みが分散し深化していった様相からは到底、想像が付かないのが当時だった。

 今は差し詰め、推しとでもいうのだろうか。これに関しても、好みが多様化して分散化していった結論だったと思う。アイドルを知る時代のおじさんから見ると、何と生きやすい息のつきやすい社会に変わったのだろう、と思うのだ。その代わり、私は現役の若者達についていけるほどの年齢でなくなったことも付け加えておきたい。


 昭和生まれの男らしく、あの歌の一節を。
 「思えば遠くへ来たもんだ」。


2024/08/22 ここまで

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