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創業融資の審査が厳しくなっている


もくじ

1. 断られた案件その①:飲食業での創業

2. 断られた案件その②:美容室の開業

3. なぜ、創業融資の審査が厳しめになったのか

4. 創業融資を成功させる確率を高めるためにしておくべきこと
(1)売上計画の根拠の精度を高める
(2)所定の創業計画書とは別の詳細な創業計画を作成する
(3)面談のシミュレーション

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1.断られた案件その①:飲食業での創業

ある飲食店の創業例を挙げましょう。

<申請内容>
・融資申請額:900万円
・自己資金額:400万円
・創業する業種の経験年数:10年
・信用情報:問題ナシ

上記の内容なら、よほど「創業計画書」の内容がひどくない限り、今までなら通っているような案件です。

しかし、以下の理由で断られたそうです。


「金融機関担当者」
出店を希望する立地では、創業計画における売上額を確保するのは難しいのではないか。

もう少し売上の根拠を明確にしないと、創業がうまくいかない可能性が高いと思われるので、今回は見送らせていただきます。




2.断られた案件その②:美容室の開業

金融機関の担当者に「理想とする自己資金額は?」と尋ねると、ほぼ、どの担当者も「創業に必要な資金の、3割程度は準備してほしい」と回答します。


自己資金が多めにあれば、事業が計画通り進んでいなくて赤字が続いても、自己資金で赤字を補填できる期間を長めに確保できます。


軌道に乗せるまで、なんとか耐えることができるのです。


すなわち、自己資金が多いと「生き残る確率が高まる」と考えられるため、余裕をもった経営ができるようにと「3割程度の自己資金は用意してほしい」と金融機関は希望するのです。


しかし自己資金が3割なければ断られてしまうというわけではなく、業種によっては自己資金が1割や2割しかなくても借りることができたという事例は豊富にあります。


たとえば美容室は、「自己資金が少なくても必要資金を借りられる業種」の一つです。


美容師は給料が安いことが少なくないため、自己資金を貯めるのが難しい職業と思われています。だからこそ「創業に必要な自己資金を貯めることができた」だけで、評価は高まります。


その額が創業に必要な資金の1割や2割程度しかなくても、「創業に対する強い意志を持っている」「少ない給料の中でもやりくりして自己資金を貯めた」と評価され、結果、審査に通ることがよくあります。


また、ベテランの美容師になると、固定客を多数抱えていることも多いでしょう。

独立後も「安定した売上を早期に確立することが可能」と高い評価を得られ、自己資金が少なくても審査が通りやすい要因となっています。



3. なぜ、創業融資の審査が厳しめになったのか

最近の創業融資を断られた理由の傾向を見てみると、確かに、日本政策金融公庫の創業融資の審査は厳しくなっているようです。


その原因は、2024年春に出された金融庁の「中小・地域金融機関向けの総合的な監督指針」の改正にあるのかもしれません。

この改正では、「安易な融資を行わず融資先の経営内容や事業計画の内容をしっかりと見極めるように」といった趣旨が記載されています。


一方、日本政策金融公庫のホームページには、こう書かれています。


日本政策金融公庫は、「一般の金融機関が行う金融を補完すること」を旨としつつ、国の中小企業・小規模事業者政策や農林漁業政策等に基づき、法律や予算で決められた範囲で金融機能を発揮している政策金融機関です。



「日本政策金融公庫」

公庫は金融庁の「中小・地域金融機関向けの総合的な監督指針」に縛られることはありませんが、財務省所管の「民間金融機関を補完するための国が経営している金融機関」という性格上、民間金融機関と足並みを揃える動きにならざるをえません。


上記の改正の内容にあるように、「申請内容を吟味した上での融資審査」が求められるようになっているのでしょう。


だから、今までよりも審査が厳しめになっているのではないかと私は考えます。


4. 創業融資を成功させる確率を高めるためにしておくべきこと



(1)売上計画の根拠の精度を高める

創業融資の際、最近特に公庫から指摘されることの一つが、「売上計画の根拠を明確に説明してほしい」。上記①飲食店の事例でも、同様の謝絶理由でした。


「何となく、これぐらいの売上が見込めるのではないか」という売上計画では、もう通らないということでしょう。


たとえばランチ営業も行う居酒屋の場合なら、「見込み客を集めるために、このような取組を行います。


この取組を行った結果、客単価◯◯円で◯◯名の集客を見込んでいます」と説得力高く伝えるため、以下の項目を考えた上で、1年間の毎月の売上計画表の作成くらいは行っておきたいものです。

●ウィークデイのランチ営業
●ウィークエンドのランチ営業
●金曜日の夜の営業
●ウィークエンドの夜の営業
●季節要因を加味した「客単価」「客数」の増減 など




(2)所定の創業計画書とは別の詳細な創業計画を作成する


公庫の創業計画書は、A3サイズで見開き1枚。


これだけでは、創業する事業について詳細な情報を伝えることができません。


「創業する事業が成功できる理由」に説得力を持たせるのは難しいでしょう。


そこで、緻密に考え抜かれたA4サイズ10枚程度の創業計画書を提出することで、「成功する確率が高い」と納得してもらいやすくなります。


(3)面談のシミュレーション

創業融資の場合、創業計画の内容をより詳しく聞くための「担当者による面談」が必ずあります。


その面談で、創業者がうまく説明できない場合、融資審査に通らないことがよくあります。



事前に面談のシミュレーションを行い、想定される質問に対してスムーズに答えられるように練習しておくことで、審査が通る確率を高めることができます。


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