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だが同時にここは質屋なのだから当然の成り行きなのだとも納得する。 しかし財布も持たずに飛び出した。どうやってここにたどり着いたのか覚えてはいない。 さて、どうしたものだろうと頭を悩ます。今、零斗が持っているものは、一の糸が切れたままの津軽三味線と撥だけだ。 「財布は持ってきていない」 素直にそれを口にするとユメは一層目を細めて笑った。 「そんな無粋なものなんていらないよ」 そう言ってユメは零斗を指差した。正確には零斗が持つ津軽三味線を。 「一曲弾いておくれ。今のあん