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Set Freeter 2

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セットフリーターの仕事なんて、絶対にお断りだ! 僕は平和に平凡な生活を満喫するんだ。そう言い張って美佐子さんに抵抗した僕だけど、その平和の象徴である学校で僕は事件に巻き込まれてし… もっと読む
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2021年9月の記事一覧

21 さよなら、僕の平和な日々よ

「……」  はぁ、やはりね。無計画に縦横無尽に暴れて、やったのはみんなあいつらのせいにするわけだ。よく今までこんな裏家業してきたもんだよ。 「まぁ……しいて言うなら、稲元君を連れて行くから、当分留守にするわよ。他の捕まっちゃった人たちは、校門の外で開放するくらいかしら?」 「だーかーらー、どうやってそれを実行するの? もう一回言うけど、相手は銃を持っているんだよ? 左翼だかなんだかしらないけど、やっていることはテロリストだろ? 僕みたいな一般的な高校生が、どうやって太刀打ちす

20 さよなら、僕の平和な日々よ

 どうしてこれで親子なんだろう? やっぱり僕はネーミングセンスのない父親に似たのだろうか? きっとそうなのだろう。  マントと帽子はどうするか…………こんなもの必要ないんだけど、稲元たちに絶対知られたくないし…………  考えた末、とりあえず身に付けないまま持っていくことにした。音楽室を出ようと思っていたが、先に双眼鏡で職員室をウォッチング。  いるいる。一人……二人。一人は電話を使って外部と連絡している。  僕は行動を前にポケットから携帯を取り出した。 「もしもし美佐子さん?

19 さよなら、僕の平和な日々よ

「もしもーし」 『ヘマしてないでしょうね?』 「してないよ」  僕は疲れたように囁いた。実際、僕は疲れていた。 『やーね、これからが本番よ。しっかりして』 「僕は繊細なの。佐子さんほど無神経じゃないからね」 『ふん、あんたの場合は繊細なんじゃなくて、神経質なだけでしょ』  ああ言えばこう言うで、ホントに口じゃかなわない。ムカツクけど。 「もう、どうでもいいよ。時間ないんでしょ? 稲元が殺されたらどうするんだよ」 『それはないと思うわ……誘拐だし。他の人質はどうかしらねぇ……人

18 さよなら、僕の平和な日々よ

 稲元を誘拐して危害を加えられたくなければ……って脅しかけるよね。稲元のじいちゃんは何をしたんだ? それとも、何かをするのか?  何かをした報復ではないような気がする。報復だというのなら、稲元が僕たちとマックに行った帰りを狙って誘拐して危害を加え、場合によっては脅迫をしたり、最悪は殺すだろう。  でも稲元は連れ去られていない。まだ学校内にいる。だったら今のところだけど、殺される可能性は低いと思っていいよね。  ではなぜ犯人は学校にいるんだ? 学校にいる理由はなんだ? 目撃者を

17 さよなら、僕の平和な日々よ

 キャップを被った男だ。東棟と西棟に挟まれた中庭をじっと見ているようだ。男だろうということだけはわかった。  もっと奥も見てみたいが、三階からではこれ以上無理だ。少なくとも二階は警戒するにこしたことはないということだね。  他の二階の部屋も見てみる。放送室やスタジオには人はいないが、保健室にもいるようだ。一人……? いや、窓に背を向けている。二人という可能性は無視できない。  再び三階に双眼鏡を戻す。二階職員室にいれば、三階職員室も危険だ。んー……いた。  一人かな?  詳し

16 さよなら、僕の平和な日々よ

 改めて考えた僕は意気消沈、がっかりと肩を落としながら音楽室を出た。僕の唯一の心の拠り所だった平凡に裏切られた気がして、すっかりブルーになっていた僕は、ここへ来るときとは違って、警戒心ゼロのまま階段を登った。  この東棟三階には、文系の部室がいくつかある。はじめに写真部の部室がある。現像をするための暗室までもある。そのせいで部室にしてはやや広い。となりは野鳥研究部という部活だが、事実上ヤンキーの溜り場と化している。来年あたり廃部になるんじゃないのかな? で、最後の一つは演劇部