01 ロード・オブ・ヘブン
「もうすぐロード・オブ・ヘブンだぞ」
運転席からそう声を掛けられたイヴァン・デーナーは、ハンドルを操る同僚であり、そして上官にあたるディートマル・ポスティッヒを見た。灰色を基調とした山岳迷彩服に身を包むポスティッヒの二の腕は、丸太のように太くて逞しい。短く刈りこんだ黒髪に黒目の強面だが、初対面の時からよく笑う気さくな先輩という印象だった。
これから一年間、イヴァンの上官になる男だ。うまくやっていけそうだとイヴァンは思う。
ポスティッヒも一瞬だけ進行方向から、助手席に座る