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ロード・オブ・ヘブン

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イヴァンが国境警備隊として初めて配属された場所は国道326号線国境検閲所。通称ロード・オブ・ヘブンと呼ばれる場所だった。初任地・所任務・初夜勤。最悪尽くしのこの日に紹介されたイヴ… もっと読む
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2020年1月の記事一覧

01 ロード・オブ・ヘブン

「もうすぐロード・オブ・ヘブンだぞ」  運転席からそう声を掛けられたイヴァン・デーナーは、ハンドルを操る同僚であり、そして上官にあたるディートマル・ポスティッヒを見た。灰色を基調とした山岳迷彩服に身を包むポスティッヒの二の腕は、丸太のように太くて逞しい。短く刈りこんだ黒髪に黒目の強面だが、初対面の時からよく笑う気さくな先輩という印象だった。  これから一年間、イヴァンの上官になる男だ。うまくやっていけそうだとイヴァンは思う。  ポスティッヒも一瞬だけ進行方向から、助手席に座る