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唐揚げ女子の創り方

コウダプロとズブズブな関係にあるゼミを運営しており,福岡大学商学部で教鞭を取っている飛田(とびた)です。

 すでにブログなどでゼミのことが出ているので今さら感があるのですが,唐揚げ女子こと,今やコウダプロで主力級活躍をしている原口水月さんから「コウダプロを飛田目線で斬ってくれ!」と依頼が来たので,一筆取ることにしました。

 そもそもコウダプロの幸田社長とは福岡における経営者勉強会にて知り合いました。幸田社長が受講生,私が講師という立場で。だいたいそういった場で私は「経営は逆張りだ!」というようなことを話すのですが,そこに幸田社長のマインドが見事にフィットしたようで,アフターの懇親会では年が近いこともあってその後につながるご縁を頂きました。

 ここで言う「逆張り」というのは,「人と違うことをすれば良い」という単純なことを言っているのではありません。アントレプレナーシップ(起業家精神)教育では必ず伝える「事業機会の探索」,特に「機会」というものは長い思索と探索,観察の先にあるもので,モノやコト,人の望みなどの本質にぶち当たって初めて見えてくるものです。闇雲にやるのではなく,自分がこうだと考える理想,志,理念に従って世の中のよしなしごとを見つめていれば,やがて見えてくるものだと。これをピーター・ティールは「あなただけが知っている真実」と言いますが,まさに経営の勝ち筋を創るのはこれだと話をしています。

 と同時にこの時期,私は大学の専門ゼミでも同じようなことを言っていました。当時3年生だった原口さんはきっと「何言ってるんだ,このおっさん」と思っていたでしょう。

 福岡大学商学部では専門ゼミナールが2年生の後期に始まります。私の専門ゼミでは,最初の半年間は「創業体験プログラム」といって学園祭の模擬店を会社組織に見立てて,学生と投資家役の社会人から出資を募って模擬店を会社のように運営する実践的なプログラムに参加します。そして,3年生になると「社会課題をビジネスで解決するプログラム」を自ら立ち上げ,ゼロからイチを生み出す,課題をビジネスで解決するアイデア・プランを練ることを求められます。また,先の「創業体験プログラム」も3年次に同じゼミメンバーであるにも関わらず,役員総入れ替えで模擬店を出します。

 そうした中で,原口さんは「社会課題をビジネスで解決するプロジェクト」(以下,プロジェクト)は通販化粧品メーカーとコラボレーションをして新製品開発を行い,20代女性の化粧にまつわる困りごとを解決しようとしていました。また, 3年次の「創業体験プログラム」では商品部長として学園祭で販売する商品企画開発の任に当たることになりました。

 当時,彼女は別のゼミのプロジェクトにも中核メンバーとして参加していました。その先生に大変可愛がってもらいながら,きっと多くのことを学んでいたに違いありません。先日,この話になった時に彼女から「◯◯先生の話はよくわかったけど,先生の話はよくわからんかった。マジで」と言われました。当時の私の力量(それは今もほとんど変わっていませんが)で言えることには限界があったし,私自身も学びながら必死になって学生の指導に当たっていたように思います。恐らくそれは今の学生にも同じことが言えるでしょう。私が言うことは私自身にとっては真実でも,学生にとっては不都合な真実かもしれない。でも,それで良いのです。世の中にはそういう多様性があるから面白いのですから。

 一方,彼女がゼミで関わっているプロジェクトはなかなか思うように進まない。特に,「創業体験プログラム」での商品開発はプレゼンテーションを行うたびにダメ出しを食らい,相当悔しい思いをしたのではないかと思います。どんなにアイデアを捻っても納得するものが出てこない。挙句の果てには前年作った,子豚の顔をした「こぶたまん」を商品にすることにしたのは良いものの,それ以上のアイデアが生まれない。私から見ていて,彼女にとってのターニングポイントの1つはここにあったように思います。

 そうして,11月の学園祭。「こぶたまん」は前年商品の課題を解決し,顧客にも喜んでもらえるような商品に仕上がりました。また,プロジェクトもたびたびアンケートやインタビュー調査を行って顧客の心の奥底にある声を聞き,4年生になってメーカーのお力添えを得て商品化の一歩手前まで漕ぎ着けることができました。

 それでも,ここまで積み上げてきた彼女の実績を評価「できる」企業は現れませんでした。この時を振り返って彼女は「あのときの商品開発って言っても,今に比べればまだまだでした」と述懐していますが,彼女の持つ個性はスタートアップや小さな企業で生きるだろうと思っていました。そして,就職活動も終盤を迎える頃,私はSNSにとある投稿をしたのでした。迷える子羊がいる。能力は一定程度あるけれども,なかなか評価されない。新入社員であっても,キラリと光るものがあるから,きっと御社の役に立つ人材になりますと。

 そこで手を挙げてくださったのがコウダプロの幸田社長でした。以後,コウダプロ憲法に感動し,ここで働くと決めた彼女は日々業務に邁進しています。きっと,面白おかしく,ど真面目に,真剣に日々の仕事に励んでいることでしょう。時にテレビやメディアに出ている彼女の姿を見ると,「本当に遠くに行ってしまったなぁ」と思うことがあります。でも,それは本当に喜ばしいこと。単にメディアに取り上げられているということではなく,就職活動で恐らく「人に評価されることが怖い」と感じた自分を,嘘偽り無く表現することができる職場に出会えた僥倖がそこにあったと言えるのかもしれません。

 と,ここまで書いて気づきました。なんにも「唐揚げ女子の創り方」を書いていないし,「コウダプロ」のことを書いていません。

 でも,ここまでの文間をお読みくださればなんとなくお分かり頂けると思います。原口さんは,人の出会いについては強運を持ち,その運を引き寄せる力を持ち,自分が信じたことを貫ける図太さを持ち,それを人に受け入れてもらえるしなやかさと愛嬌がある。

 これはまさに「コウダプロ」という会社が持つ特徴そのものではありませんか。

 こうした人はとかく多くの人から「変だ」「よくわからないやつだ」と言われるかもしれません。しかし,福岡にあるコウダプロという桃源郷と出会えたことは本当にラッキーだった。そして,こういう会社が市民権を得て,「あなただけが知っている真実」を突き詰めて,面白い切り口の商品を生み出していく様子を見ているのは,こちらまで何か喜ばしい気持ちになります。

 正直僕がコウダプロや幸田さん,原口さんに何かをしたとは思えません。むしろ多くの学生を無理やり紹介し,私の紹介だからと受け入れてくださり,結局ご迷惑をおかけしたことになったケースも少なくありません。それでも信じてくださるのはコウダプロの懐が深いからかもしれませんし,人の可能性を信じることが根底にあるからかもしれません。

 授業でイノベーションの話をする時,世界的に活躍するデザイナーである濱口秀司さんのイノベーションの条件を出します。それは,第1に見たことがない,聞いたことがない,第2に実行可能である,最後に(賛成反対の)議論を生むことが大事だというものです。コウダプロから生み出されるものはいずれにも当てはまります。そして,特に「議論を生む」が大事です。さまざまな意見があるからこそ,その製品・サービスはイノベーティブなのであり,みんなが賛成・反対のどちらかの意見に寄ることのほうがむしろ危険です。

そうした「健全な精神」を養うことができる会社。それがコウダプロなのかもしれません。時に猪木イズムが発揮されますが,それはまたご愛嬌ということで。

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