目から鱗(ウロコ)で、幸せになる

不幸せという訳ではないけれど、幸せでもない、という人いませんか?
(幸せについての仕組みが分かれば、自然に、容易に、幸せになれます。)


 色々と悩ましいことやストレスの多い現代ですが、幸せになることは思っているほど難しいことではありません。
 幸せと関係の深い心の仕組みを3つ理解し、それを踏まえた方法を3つ実践すれば、通常の状態であれば自然に、苦労せず幸せになることができます。
 さらに、現実の生活では大小様々なことが起こりますが、そうした中でも幸せになるためのもう4つの方法を紹介します。


1.その不安は自然なこと

 健康面、金銭面で特に困っている訳ではないが、漠然とした将来への不安がある。
 恵まれている筈なので不幸せではないのだが、幸せかといえばそういう感じはない。
 以前に比べるとワクワクすることや楽しいことがなくなった。
 世の中に暗いニュースや腹立たしいことが増えたような気がして、明るい気持ちになれない。
 それなりに頑張っているつもりだが、目立った成果や変化もなく、このままでいいのかなと考えてしまう。

 こういうモヤモヤした気持ちになったり、時には、「これって鬱(ウツ)かな?」と少し心配になったりすることもありますよね。

 こういう状況から脱却するために何か頑張らなくちゃ、と思ってはみるものの、何をどうすればいいか分からないし、見つけたとしても長続きしそうにないとか、それをする余裕もないとか、空回りしてしまうということもあります。

 でも、こうした不安やモヤモヤは自然なことで、我々の持つ能力の一部がちゃんと機能している証拠だとも言えます。
 こうした一見ネガティブな感じは、我々のご先祖様が進化の過程で身に付けた必要な危険予知能力により起こることが多いものなのです。

 その仕組みについては後で説明しますが、要は、たいていの人は何もしないと気持ちが下向きになるのが自然で、それを考慮に入れて、幸せになるようにすれば良いのです。


2.幸せとは?

 では、幸せとは、どんなものでしょうか?
 「どんな時に幸せと感じますか?」と問えば、内容は人それぞれで、同じ人でも時期・状況によって異なったりするものです。

 暖かいお風呂に入った時、友人との楽しいおしゃべり、美味しいものを食べた時、長い間努力してきたことが報われた時、誰かとのんびりしている時など色々ですが、心地よい感覚や経験、それに関連する情景や雰囲気の記憶などが混ざり合っているため、具体的な内容は実に様々です。
 中には、有難みを重視して、幸せの難易度をやたらに上げる人や希少性重視の人なども居たりします。

 また、英語には幸せに2つの言葉(happinessとwellbeing)があり、happinessはhappenが語源ですから何かが起きた時に感じるどちらかと言えば動態的な幸せ、一方でwellbeingはしみじみと感じるやや静態的な幸せということのようで、こういう風に使い分けられる言葉があるというのは面白いことだと思います。
 ある研究によると、幸せの中でwellbeing的幸せの占めるウエイトは、西洋人より東洋人の方が高いそうで、何となく分かるような気がします。

 それぞれの人にとって、幸せの具体的な内容が多様であるのは自然なことですが、幸せになる方法を考えていくためには、大半の人に分かり易く、自然で、合理的で、発展性のある幸せのコアあるいは原点のようなものが必要になります。
 それは、「自分と周りの者が上機嫌・笑顔であること」だと考えています。
 何故そうなのかは、先に進むにつれて理解してもらえると思います。


3.幸せはどこで感じるのか?

 ところで、幸せはどこで、どのように感じるのでしょう?
 心、脳、体、記憶、感覚、その結び付き・・・と、関係ありそうなものは言えても、具体的にどこで、どのようにとなると、心や意識の仕組みとともにまだ詳しくは分かっていません。
 そもそも脳の活動全体に占める意識(我々が考えたり、感じたりして認識している部分)の割合は、多くても30%程度だと考えられており、その他の70%の脳活動は何のために何をしているのかよく分かっていないようです。

 それでも、意識の部分については、最新科学が、心とは?意識とは?と徐々に解き明かしつつあり、そうした研究の成果が幸せになる方法をさらに進歩させてくれることでしょう。
 科学的な知見に対する姿勢としては、科学的に証明されていないものは排除した方が良い、と頑なになる必要はなく、解明されないよりは解明された方がいいのでそれを素直に受入れ、現時点で分からないことはそういうものとして扱えば良いのだと思います。

 ところで、日本では最も有名な仏教のお経である『般若心経』の中に、最新科学で分かってきていることと解釈によってはよく似た内容があることは大変興味深いことです。
 仏教は哲学的に優れているばかりでなく、科学的にも優れた一面を見せてくれます。


4.理解しておく必要のある3つの心の仕組み

 苦労せずに幸せになるには、基本となる心の仕組みを3つ理解しておくことが必要です。

(1)気持ちは、何もしないと下降気味が自然

 1つ目は、既に述べた「たいていの人は何もしないと気持ちが下向きになるのが自然」ということです。

 我々のご先祖様は、今のホモサピエンスに進化した十数万年前以降でも、つい最近まで天候不順により餓死する、部族や集団の殺し合い、原因不明の(今では治せる)病気での死など、過酷な状況が珍しくありませんでした。

 そうした中で生き延びるには、危険を少しでも早く察知し、備えをしたり、逃げたりする能力が不可欠でした。
 そういう能力に長けたご先祖様の末裔が我々です。

 その危険予知能力はどんな時代でもそれなりに必要ですが、現代のように平和で飽食になるとバランスが崩れ、新たなストレスも加わって、能力に長けた人ほど、取り越し苦労や心配性になってしまいがちです。
 丁度、昔の生息環境に合わせてできあがった免疫システムが、衛生的な現代においては自分自身を攻撃してしまうアレルギーとよく似ています。
 よって、意識的に少しバランスをとるようにすることが必要になります。

 何もしない(気分任せだ)と気持ちは不安定で、下降気味になるのが自然だということを知っているだけで、少し気が楽になりませんか?


(2)思考(理性)、感情、体の力関係

 2つ目は、思考(理性)、感情、体の心への影響力と関係性です。

 思考(理性)は、主に脳の前頭葉が関係しており、一般には理性とか知性と呼んで、何やら立派そうですが、いつも善いことばかり考えているとは限りません。
 感情は、主に脳の扁桃体が関係しており、思考(理性)より次元が低いとか、思うようにならない厄介なものだとか言われることもありますが、立派な役割がある筈です。
 体とは、五感や運動、体調などです。

 これらの心への影響力は、たいていの人の場合、一次的には一番強いのが体、次が感情、一番弱いのが思考(理性)です。
 しかし、都合のいいことに思考によって体を動かすことができます。

 思考(理性)と感情が葛藤を起こすと、多くの場合、もみ合った末に感情の方が優勢になるのですが、前述の仕組みが分かっていると、脳からの指令で体を動かすこと(体操や場所の移動で気分転換するなど)により、思考が感情に勝ることが増えてきます。


(3)意識と言葉の関連

 3つ目は、意識と言葉の関連です。

 我々の脳の中では、多くの場合、意識を構成しているイメージや感覚、状態を認識・記憶しやすくするために、それらに言葉を当てはめる、つまり意識と言葉を関連付けていると考えられています。
 これを意識がある間繰り返している訳ですから、意識と言葉の間には強い関連付けが存在します。

 「口角を上げる(意識的に笑顔を作る)と脳が騙され、気分が上向く」ということは、実験で証明され、よく知られている作用ですが、それと同様に言葉をしゃべることにより脳が連動し、脳の中がその言葉に関連付けられた気分・意識になるということが起こります。


5.「幸せ化」の基礎的な3つの方法

 さて、幸せの原点は、「自分と周りの者が上機嫌・笑顔であること」でした。
 そうなることをここでは「幸せ化」と呼ぶことにしますが、基本となる3つの心の仕組みの理解ができていれば、それは思っているほど難しいことではありません。

 「幸せ化」には、敢えて分ければ、自分を上機嫌・笑顔にすること、名付けて「自分の幸せ化」と、周りの者を上機嫌・笑顔にすること、名付けて「周りの幸せ化」があります。
 この2つは、実は表裏一体のものです。

 いつも上機嫌・笑顔でいる人の周囲にいる人は、(少なくともその場面だけは)上機嫌・笑顔であることがよくあります。
 また、相手に感謝の言葉をかけた場合は、言われた相手の人が心地よいだけでなく、自分も心地よく、更にそれを言うことが出来た自分の心が幸せな状態に引き上げられたことによるものと考えられます。

 つまり、「自分の幸せ化」が周囲に好影響を与え、自然に「周りの幸せ化」が成就されることは珍しいことではありませんし、「周りの幸せ化」のためと思ってすることのほとんどは、「自分の幸せ化」につながっています。

 ただ、周りの人はそのまた周りの人の影響も受けますから、もう一押しが必要になります。

 幸せになる方法は、目から鱗(ウロコ)で、シンプルです。
 分かり易くなければ実行出来ませんからシンプル・イズ・ベストですが、継続することが重要で、やってみるとなかなか奥が深いものです。


(1)「幸せ言葉」を意識的にしゃべる

 1つ目は、「幸せ言葉」を声に出して、意識的にしゃべることです。

 「幸せ言葉」とは、感謝します。ありがとう。嬉しい。楽しい。許します。分かります。・・して良かった。幸せです。などです。
 詳しくは後で(※1)説明します。

 誰かに対してしゃべるだけでなく、ウオーミングアップとして朝起きた時などに一人でしゃべるようにします。
 状況により、自分自身に対してしゃべることも当然ありです。
 その際、できれば口角を上げるようにすると、効果は倍化します。
 それを続けることで習慣化できたら「自分の幸せ化」は7割がた達成したようなものです。

 これらの言葉は、集団生活によって身を守り、協力して生き延びてきた人間という種族にとって、仲間との良好な関係を醸成・維持するものですが、それだけでなく、実際に声に出してしゃべることにより、体と脳が連動し、脳の中がその言葉に関連付けられた幸せな気分・意識になるということが起こります。

 また、我々の脳は同時に2つのことを考えられないので、「幸せ言葉」をしゃべれば、ネガティブな言葉(意識)が入ってこられません。

 さらに、言葉には反復効果(意識と言葉の関連づけが強く、その言葉を繰り返し言っていると、その言葉を使う状況を引き寄せること)があると考えられており、「幸せ言葉」を頻繁に使うことで、幸せな状況を引き寄せる好循環に入りやすくなります。
 昔の人はそうしたことなどから、言葉には霊があると感じ、『言霊(コトダマ)』がある、などと思ったのでしょう。

 意識的に「幸せ言葉」をしゃべることは、結果として、気分に惑わされて周期的に不安やモヤモヤとなる不安定な心の状態のバランスを取ることにつながります。


(2)必要な時に、意識して体を動かす

2つ目は、気分に囚われず、意識的に幸せな状態になるために体を利用す る、またその練習をしておくことです。

 それには、生活・仕事上の動作ではない動きを意識的にするようにします。
 一番ポピュラーで、効果が高いのがラジオ体操です。
 体にスイッチを入れる、筋肉をストレッチするといった元々の効果とともに、必要な時に体を動かす練習になります。

 また、呼吸を意識的にゆっくりすること(しっかり吸って、出来るだけゆっくり吐く)も同じくらい効果的です。

 会議中や人と話している時に、不愉快なことがあり、気分を切替えたい場面などでも、体を動かすこと(背伸びをする、深呼吸をする、視線の方向を変えるなど)による効果が期待できます。
 こうしたことは、やっているうちに案外と容易にできるようになります。

 意識して体を動かすことも「幸せ言葉」と同様に、結果として、不安定な心の状態のバランスを取ることにつながります。


(3)幸せになることを周りの者にしてあげる

 3つ目は、一歩踏み込んで、自分がしてもらって嬉しかったこと、自分がして欲しいことを、可能な範囲で周りの者にしてあげることです。

 人間は、集団によって生き延び発展してきた種族であるため、進化の過程でそれに役立つ色々なコミュニケーション手段や意識の持ち方など、様々な能力を身に付けています。
 幸せについても、自分だけというより、家族や周りの者と一緒に幸せになろうとするのが自然で、相乗効果により幸せの度合いも高まることが多い筈です。

 例えば、ちょっと褒めてあげる、明るい挨拶をするといったことでも充分で、お金を多くかける必要はなく、無理をしたりしてはいけません。
 仮に上手くしてあげられなくても、そうしてあげようと思う気持ちは伝わり、互いを幸せにします。

 稀に、周りを不快にさせながら、自分だけが上機嫌な人というのがいますが、こうした歪んだ幸せモドキは、虚勢であるか、不自然で長続きしないものです。


6.進めていく上での工夫・留意点

(1)自分だけのメモを作る

 幸せになるためには正しく理解するとともに、継続することが大切ですが、なかなか続かないものです。

 このメモも短くはしたつもりですが、頻繁に読み返すという訳にもいきません。
 そこで、自分なりにポイントだと思うことを書き出して、自分の言葉で1枚のコンパクトなメモを作り、それを1日1回声に出して読むようにすることをお勧めします。
 言うなれば、自分だけのコンパクトな現代版のお経です。(最も親しまれている『般若心経』は、276文字しかありません。)

 例えば、
 『幸せの原点は、自分と周りの者が上機嫌・笑顔であること。
  その幸せは、幸せ言葉と体操で意識して生じさせ維持するもの。
  気分に任せていると不安定で、免疫のいたずらのようなことになる。
  幸せであることは美徳であり、感動とともに使命である。
  幸せ言葉は、・・・・・ 
  ・・・・・・・・・・
  自分を上機嫌・笑顔にする
  ・・・・・・         』

 といった具合でしょうか。
 しっくり来なければ何度でも直したり、加除したりすればいいと思います。

 それから、生活全般のこととして、幸せになるには、体の健康や自然なリズムも重要な要素なので、0時を挟んだ良質な睡眠、バランスの良い食事、適度な運動に心掛けましょう。


(2)頭でっかちにならない

 また、気を付けて欲しいこととして、心とか、幸せになる方法といったことに熱心な人は勢い余って、この方法で何でもかんでも解決しよう、そうすべきだ、と頭でっかちになったり、人に押しつけたりすることがあります。

 自分の中でさえ、思考(理性)と感情が葛藤を起こしますが、現実の社会では人の数やグループの組み合せだけ価値観があり、それぞれに立場、利害が異なるので、摩擦や問題が起き、簡単に解決しないのは仕方がないことです。

 そうしたものの中から急いで解決した方が良いこと、自分の周りの対処できそうなことから順に、無理・偏りがないよう妥協・工夫をしながら上手く取り組んでいけば良いのではないでしょうか。

 一方、重い苦痛や災害に直面している時に、唐突に、幸せになるといっても無理があるので、そういう時は、先ずそうしたものを取り除く必要があります。


 以上が、苦労せずに自分と周囲が幸せになる基礎的な方法です。
 現実の生活では大小様々な悩ましいことが起こるので、そうした中で幸せにやっていくには応用的な方法が必要となりますが、それについて説明する前に、幸せに関係する雑感を2つ述べたいと思います。


7.生き方、心の持ち方についての教育

 学校や社会での教育の内容には、知識、論理的思考、情操、技術、処世術などがありますが、どうすれば幸せになれるか、どのように生きる(死ぬ)か、といった心の持ち方、生き方についての内容が少ないように思います。

 日本は、平均寿命が世界の中で最も長いグループで、失業率も最低レベル、世界最大級の債権国で、国民性は世界の中でも真面目で親切だということになっています。
 一方で、幸福度は先進国で最低レベル、社会にはいつも閉塞感が漂っていることになっており、何かあると政府が悪い、・・が悪いという非難の声が充満し、ギスギスしている。
 2つの面は、同じ国のこととは思えないほどかけ離れています。

 平均的な数字では恵まれているのに、感謝や寛容が乏しい社会は何故できたのか?
 どうすれば良くなっていくのか?
 人と人や社会の関係、社会の仕組みや構造とともに、心の持ち方やその教育についても見直していく時期にきているのではないでしょうか。


8.我々一人ひとりはものすごく幸運

 「人生は辛いことばかり」「生まれてからずっと良いことがない」と言う人が時々います。
 一人ひとり、それぞれに他人には分からない苦労や悩みがあるもので、そう思いたくなる時があるのも無理はありません。

 ところで、生き物にとっての最大の使命は生き残ることですから、生き残っている者はそれだけで幸運なことです。
 その幸運ですが、我々のそれは実はとんでもなく高いレベルで、ジャンボ宝くじ1等の当選確率の比ではありません。

 どういうことかと言いますと、地球に生命が誕生したのは40億年前頃で、諸説ありますが、我々はその時から続く子孫である可能性が高いと考えられています。
 そうであれば、今、我々一人ひとりがいるのは40億年間、命のバトンが続いている結果で、もし、その間一度でもご先祖様が次の世代に命を引き継ぐまでに何かのアクシデントで死んでいたら我々は存在しません。

 その大半の期間は微生物であった訳ですが、仮に1世代進むのに長めに見て平均1年かかったとしても、我々がいるのはご先祖様が40億世代も命をつないでくれたおかげだということです。

 ジャンボ宝くじ1等に当たる確率が約1000万分の1だそうですから、世代数だけで見ても比較にならない程の幸運ですが、実際には、過酷な環境、厳しい生存競争の中で頻繁に命の危険に直面していたでしょうから、生き延びた幸運のレベルは大変なものです。

 平凡に見える我々一人ひとりですが、生まれた時点で既にとんでもない幸運に恵まれ、さらにご先祖様が40億年の間に身に付けた多くの術を受け継いでいる存在だと考えると、何やら力が湧いてきませんか?


9.実生活で役立つ応用的な4つの方法

 さて、実際の暮らしの中で幸せにやっていくための応用的方法を4つ紹介します。

(1)習慣化の活用

 1つ目は、習慣化の活用です。

 習慣は第二のDNAとも言われますが、上手く活用すれば幸せの確実な支えとなります。
 基礎編のところでも、継続、繰り返しの大切さが出ました。

 我々の生活のほとんどは習慣化で成り立っていて、朝起きてから寝るまでのことをいちいち考えてやっていたら、1日に出来ることは10分の1以下でしょう。
 つまり、ある程度繰り返していると習慣になるようにできているので、少し工夫をすればそんなに難しいことではありません。

 例えば、笑顔を習慣にしようという場合、最初のうちは、部屋のドアに「笑顔」と張り紙をしておいて出入りする度に笑顔を作るとか、「幸せ言葉」の練習は笑顔でするというようなこともあるでしょう。

 さらに、習慣化が大きなステップアップにつながることを表した次のような言葉があります。
 心を変えれば、行動が変わる。
  行動が変われば、習慣が変わる。
   習慣が変われば、人格が変わる。
    人格が変われば、運命が変わる。


(2)利他の一歩手前

 2つ目は、「情けは他人(ヒト)のみのためならず」です。

 「・・・ファースト」をキャッチフレーズにする人が居ます。
 この姿勢を突き詰めると、自分さえ、今さえ、よければいい、という所にまで行き着いてしまいます。
 そこまでのつもりではないのでしょうが、要するに利己で、生き物の本来の性質でもありますから、環境が厳しくなれば、利己的な人、そういう精神状態が増えるのは自然なことです。

 利己に対するのが利他で、新型コロナの患者を世話する方々の姿は利他そのものです。
 利己と利他のどちらが立派かといえば利他なのは分かっていても、一般的な生活を送る中でいきなり利他に徹するのは難易度が高過ぎて、なかなか出来ることではありません。

 では、どうするか?
 よく「情けは他人のためならず。」といいますが、利他の側にもう少し踏み込んで「情けは他人のみのためならず。」くらいではどうでしょう。
 人と人は何処かでつながっている、何事もお互い様という気持ちを根底に置いて、親切にすると他人を幸せにするし、まわり回って自分に返って来るので、他人には出来るだけ親切にするようにしよう、といったところです。

 通常の生活の中では、いきなり利他という高難度より、「情けは他人のみのためならず」を目指して、身の回りの出来ることからやってみてはどうでしょうか。
 これに名前を付ければ、自分と他人がともに(共に)利を得るので、利共といったところですか。


(3)方便という活用範囲の広い方法

 3つ目が「嘘も方便」などと使われる方便です。
 元は仏教用語で、本来の意味は少し違うのですが、現代では物事を理解・成就する上で助けになる都合の良い考え方、理屈といった意味で使われています。

 この方便は、内容と使い方によってかなり広い範囲に活用できます。
 使う人が、その根拠に気付けたり、信じられるようになったりした場合には効果があるので、その人次第、とも言えます。
 ただし、その内容が「自分と周りの者が上機嫌・笑顔であること」につながるものでなければ効果が薄いのは言うまでもありません。

 方便の例としては、「自分の周囲で起こるほとんどのことは、必然・必要で、乗り越えることができる」というのがあります。
 どういうことかといいますと、人にはそれぞれ本来たどり着くべき立派な(徳を積んだ)自分というものがあり、そうなるために必要な課題、試練を自ら引き寄せ、いつかは乗り越えていくようになっている。
 つまり、周囲で起こるほとんどのことは、自分が引き寄せた必然で、なるべき自分になるために必要なのだ、という訳です。

 このように考えることができれば、大体のことには前向きに取り組め、その結果も受入れることができるでしょう。
 この方法は、頭で考えるのではなく、実際に経験することで確信(真理)になっていくものだと思います。

 よく何かを成し遂げた人が「これまでの全てのことはここ(成就したこと)につながっていたのか」と感慨深げに語っていますが、「必然・必要」を実感した言葉なのではないかと思います。

 ところで、ほとんどのことを引き寄せるということは、例外があるということです。
 地震や台風などによる大規模災害、世界的な不況などは一般の人が一人で引き寄せるようなものではなく、個人としての「必然・必要」の対象外で、引き寄せの責任を感じたりしないで下さい。

 何を「必然・必要」と見なすかは、経験を積むうちに本人が判断できるようになることだと思います。


(4)「今から、自ら、出来ることから」(=3カラ)やってみる

 4つ目は、先ずやってみる、ということです。

 気になったこと、やりたいこと、やった方が良さそうなことは、モヤモヤ考えずに、「今から、自ら、出来ることから」(=3カラ)やってみることです。
 その際、大きなことをしようとするのではなく、なるべく身近な、小さなことを沢山やるようにします。

 これは伝教大師・最澄の説かれた金言「一隅(イチグウ)を照らす」にも通じるものです。
 この言葉の意味するところは、一人ひとりが、身近な人を大切にし、出来ることから一生懸命やって、周りを明るくするようにすれば、いつか国全体が幸せになる、ということです。

 何かにつけ誰かがやってくれるだろうと人に頼るのではなく、気が付いたら自分でやる。
 人のやってくれたことが悪いの、遅いのと文句を言わず、小さなことでも感謝する。
 失敗や間違いがあっても、ある程度までは寛容に許す。(ここで大切なのは、自分自身のことも許すことです。許せないでいる自分も許すくらいまですれば上手くいきます。)

 ギスギスしたムードを変えるためにも、自分と自分の周りからそうしていかないと変わらないですからね。


※1;「幸せ言葉」について

 集団で生きていくために必要なコミュニケーション手段のひとつが言葉ですが、その中で、良好な関係や心地よい状態を構築・維持する役割を担っているのが「幸せ言葉」です。
 「幸せ言葉」も人それぞれで、状況によっても変化していくものだと思います。

① 集団で生きていくために重要な感謝の言葉
 「感謝します」「ありがとう」

② 集団を和やかにするための心地よい状態、元気で朗らかな状態を表わす言葉
 「嬉しい」「楽しい」

③ 相手の立場や事情を受入れ、緊張や争いを減らす言葉
 「許します」「分かります」

④ 起きたことを前向きに捉える、肯定する言葉
 「・・で良かった」「・・して良かった」

⑤ そのものズバリの言葉
 「幸せです」「愛しています」

 集団の中での役割についてコメントしましたが、これらの言葉は、自分に対しても使うようにして下さい。
 また、折角なので、口角を上げ、笑顔で言うようにすれば効果が一段と高まります。

 さらに、幸せ言葉を言う対象を努めて探すようにすれば、益々幸せの好循環に入ることになります。
 例えば、
 目が覚めた時、まだ生きていることに感謝。
 健康であることに感謝。
 それは親や先祖のお陰。
 食事など色々な世話をしてくれる人に感謝。
 その具材として命をくれた動植物への感謝。
 と尽きることがありません。

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