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短歌100首記録

表題の通りです。
2019年2月10日にはじめて短歌を詠み、マイペースにつくり続けてついに百首となりました。この記事は記録ということで、詠んだ順に淡々と並べていきます。
基本的に初出からいじっていませんが、明らかなミスや目をつぶりきれなかったところだけ若干の修正を加えていたりします。
直しはしなかったけれど「いまならこうするなあ」と思う短歌はいくつもあり、少しは成長したのかなあなんて思いました。
どれが好きとか教えてもらえるとすごくうれしいです。


「ソソラファソ」に遥かまで行くことを知る、あるいは敷かれた道であることを
真っ白なデニムジャケット春を誇り、過ぎる季節に洗われていく
耳目より流し込んでは息をする、音は酸素で楽譜は海
爪先を染めたい、情の色ならばうつむく互いがひそかにわかると
夏が去る淡き鼓動よ早まらずわたしを鈴の音としてほしい

強がりがBPMだと口ずさむ。乱れる90、それなりの歌
夜明けには指を折るより粒を減らす、非日常を生きてる証
雪つもる、酸に溶かせず石にならずからだのどこかに訴えるひび
異世界は安く傘越しにあればいい、轢かれるよりずっと容易く
あきらめとあからめの区別ができず、きみを隔てる言葉も知らない

くしけずり憩いを求めなお袖は露に冷たい凍えの冬
側溝を埋める黄色い郷愁のルーツをたずねる言葉よどこに
怖がりのきみのために歌いたい(ほんとはわたしの渇きのためだ)
偏光のコンタクトレンズをはずせない 眼鏡じゃなくても色は恣意的
仕事より身軽にたどれる家路などあるものなのだとふける世の暮れ

灰になれぬしろくろ均衡踏みしめる道をゆくなら灯せずの「ひ」
口語では自己表現できないの文語ならできる、なんて思うな
音よ文字よ、怖気と脅しでつながずに一生を添うと誓いたいのに
潮汐よゆりかごとなれわたしならここからすべてを子守唄と聴く
お願いだ安寧なる夜よあれわたしの手からあなたに届け

でも、と募る(誰かの不幸を思ったら生きていけないのかもしれない?)
先行きが知れない明日の春はまだ青い顔して僕を待つのか
慈雨ばかりこの身に触れるが求むのは肉に薄する情の雨だ
優しさの底をつかむため濃い影をもつれる足で踊り降りゆく
本は海ならば涙は文字となれ月の舟に乗せて流そう

反転の顔がほほえむこの世には分かち合いうる表情がある
日々がある、それを知るために鏡がいる。足音を返す靴だっている
言葉はない、はかなむ視線と輪郭をかたどり尽くすに足りるものなど
いとしんでくれるだろうか、星屑がくずれおちては死にゆくさまを
ゆびさきが呼吸を忘れて走るのはのちには深く息を継ぐためだ

胚を割る水溶液は底無しの矛盾をはらんで満ちみちている
ひとすじの光がつんざく、道は白く町は涙を乾かして広い
絶対に口にできない「消え失せたい」呪いはどこから来るのだろうか
つないでも歩幅も呼吸も合わなくていたずらに揺れる手ばかり思う
なにひとつできなくたっていいよって認められたいだけなんだけど

手放したうつつのあわいにひっそりと漂いつづける永遠がある
降って過ぎてなくなるものを手繰り寄せる手にとまどいがやさしく宿る
うずくまる水底をめぐる薄明かり追いかけたくばと笑って誘う
見つめたいものだけ見つめてしあわせを語っていいかと目を伏せ問うよ 
好きなんだきみのこと、でもどうしてもきみを好きな自分がきらい

情がふと追いかけてきてこの視界は忘れたころに言葉でにじむ
暗くやむ頭のなかに海がある、痛みは「月よあれ」の願いか
帰るべき場所をなくした錯覚が延々晴れずにいたのだけれど
陽は伸びて伸びきってしまいまた縮む、暑さに寒さを見ては怯える
月を探す見つからなくて不安になる八月遠いわたしの海

冗談が通じるかどうか試すべく辞世の句でもよんでみようか
骨張る手の思いのほかの握力を忘れてしまう忘れたくない
水底で月を見上げるただ暗く涙は袖にこぼれ続ける
夢のように陶酔させる言の葉がどこかにあるとみじめに信じる
日々めくる薄皮のした傷はまだ見れたものだと誇ってつづる

ひとがいるさまざまにいて世を作るそれを希望に思いたいなら
眠れるよ上手くないけどきみがいない世界にちゃんと毎日旅立つ
鍵をかける大好きなものを大好きでいつづけるための鍵だったはず
久々の路線の窓が耳打ちして「お出掛け気分だ」景色は過ぎる
夏至が過ぎしょんぼりしてるきみの背に祈りを注ぐ光の諸手

かさぶたを浸水させる雨嵐、傘はいらないこのままでいい
延々と続く道のさき虹を見る、名前も炎もきみから貰った
図書館の本の独特のテクスチャを罪深く愛す手触りと記憶
めくるゆび追いかける目は傷ついて書はいつまでもわたしを苛む
耳鳴りの代わりに降る雨、傾きは罰も恵みもひとのゆびから

「おやすみ」の声で子午線と暗幕を引く。この終わりはわたしのものだ
ガラス瓶、毒か薬か詰め込んで海に流すわあなたのために
林冠がまばらに光を通すからなにを保護してくれなくていい
瞬きの間ひとはくずおれるあっけなく見送るばかりのわが手は真白
失った言葉を求めるもう二度と口にできぬと思い知るため

ひとりきり置いてきぼりの夢うつつ十年前の底でうずまくる
幾度も問う「理想の夏はどこにある?」背中を撫ぜる温い夜風よ
泣きそうな空を慰める日々が過ぎ今度はわたしが慰められる
ブランコを漕ぐきみに風を吹かせよう涙の滴を飛ばせるように
合ってない最初のピッチが肯定する夏の虫も春の鳥も

すれ違いを愛しきに変える魔法あれ「この世うつくし」呪文にすがる
なだらかな静けさを潰す戸の外は斜陽に伏して火傷している
カーテンの影避暑してなおもぬるい真昼、ぼうっとまどろむ不思議な幸福
すりつぶすすこやかであれきみだけはとわたしの鏡であってほしいから
午前一時学舎の鐘鳴るを知る寝苦しい夏初めての夏

躁と鬱半分にして横たわるこの半端こそ安寧なのか
眠れない日のためのプラネタリウムやさしさに似て非なる豆粒
薄闇に弾くト長調の明るさはシューマンにも降り注いだだろうか
ブランディングできないこの身をもてあそぶナイキのマークみたいな切り傷
ブランコの前後運動イヤホンとずれては戻るリズムが愛しい

風と波熱く冷たく背中を押す四季ある国にきみは生きてる
わたしにはわたしの声があるならばこの叫びだって唯一無二だ
どうしてか色つき眼鏡で見るきみの手びさしすがたはいつも眩しい
繭やわき少女のときはもう過ぎた安堵の夜と明日へ向かう
五線譜は手放すなかれ世の中を生きるためこそトリガーをひけ

一昨日も昨日も今日もわたしだけそのひとだけの時間が過ぎる
ビニ傘の値段知らないきみの肩寄せてくすんだ虹を見れたら
こめかみで脈打つ熱を確かめる暗い昼間は最高難度
クロッキー帳を買おうとするときにわたしの未来は少し明るむ
下書きによみかけ短歌が溜まってる電子の土を朽葉よ満たせ

わたしにはわたしのうたがあればいい沈黙刺さる時代の真ん中
心底にわかりあえないきみのこと軽蔑しても羨んでいる
カード切るわたしはすべてを持っているあなたもすべてそれは本当?
湯を浴びて驚きもしくは抵抗できゅっと縮まる瞬間が好き
ガラス瓶にうつりこむ夜のきらめきが心臓をきゅっとつかんでいる

もやもやは空っぽじゃないとは言えど言葉じゃないのだ価値はあるのか
渾身のひとつでなくて良い、砂はただ砂のまま輝いている
凡手だと認めたとたん凡手になるでも天才より前に進める
きみばかり足取り軽く歩むのはからだの違いだこころではなく
里程標が百を示して笑うのはいたわりでなくあざけりでもなく

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