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主夫を持つ友達の話

 以前弟の話を書いたことがあったが、今回は私の少し変わった友達の話をしようと思う。

【友達と私】

 私は大学入学と同時に上京したのだが、こちらで過ごす内に多くの友達とは残念ながら縁が切れてしまっていた。
 ただその中で、今でも切れることなく続いている中学時代からの友達が一人居る。その友達も地元から遠く離れた地方の大学に入学し、そのまま結婚・就職をしたのだが、飛行機の距離ながら互いの出張のタイミング等に会っては遊びに出掛けている。

 私達が知り合ったきっかけは読書だった。
 私は本が好きで学生時代はかなりの量を読んでいたのだが、その友達もまた読書好きだった。彼女と別のクラスだった時に何かのきっかけでそれを知り、本の貸し借りをするようになったことで仲良くなった。
 それから同じクラス、高校と関係が続いていき、今でも友達として居てくれるので大変有り難い。

 その友達が少し変わっていると思う理由を挙げてみると。
 出会ってから高校入学までは中くらいの成績だったのに、突然勉強すると言い出したと思ったらその後卒業まで学年トップに君臨し続けたり。
 恋多き人でどこで出会うんだと言いたくなる人達と恋愛を楽しんだり、チャレンジ精神旺盛でいろいろなことにどんどん挑戦したり。
 大学も偏差値の高いところを幾らでも狙えたのに、急に「農業の勉強がしたい」と言い出して物凄く遠い地方の農業を学べる大学に進学したりと、いつも私の予想を上回ることをして驚かせるからだった。

 その中でも、特に私がびっくりしたエピソードを二つ挙げてみようと思う。

【エピソード①大学生の頃のこと】

 友達は大学入学から間もなくディズニーランドに行きたいと言い出して、一度だけ私の家に遊びに来たことがあった。ただそれ以降は物理的に距離があるのもあって遊ぶこともなく、普段から頻繁に連絡する感じでもなかったので長いこと音沙汰なしが続いていた。

 気付けば夏休みに入り、私はバイトに精を出していた。
 その日もバイトに行く為に家を出て歩いていると、正面から一人歩いてくる人の姿が見える。目が悪い私は何も考えず歩いていたが、その人が急に手を振って走ってきたので困惑しかない。何事かと思ってると、何とその人は 遠い地方に居るはずの友達だった。

 それはもう衝撃しかない。
 というか意味が分からなかった。
 だって友達は私の連絡先を知っているはずだし、今日来るなんて連絡も別に受けていない。居るはずのない友達の登場に目を疑いながら何でここに!?と聞くと、友達は「ケータイが壊れて連絡先が分からなくなっちゃって」と言い出した。前回遊びに来た時に一応私の家の場所は覚えていたので、思い切って直接訪ねるつもりだったらしい。
 そして諸事情で今日明日家に泊めてほしい、と。
 いや行き当たりばったりか!!

 私が居なかったらどうするつもりだったんだ友達!と思いながら、それは良いけど私これからバイトに行かないとと答え、とりあえず遅刻しそうだったので友達には近くのチェーン店で時間を潰して貰うことにする。
 バイト後に合流して家でここに来た理由について話を聞くと、何と友達は明後日からカンボジアにボランティアに行くそうだった。
 なるほど分からん。何でカンボジア??

 なぜボランティアに行くのかと聞いても、やってみたいからくらいの回答しか得られず結局意図はよく分からなかったが、とにかくせっかく東京に行くなら私と遊ぼうと思い、でも連絡を取る手段がなかったので直接来たと。そんな破天荒すぎるびっくり事情だった。
 何はともあれ、友達が割とケータイを壊すタイプだということが分かった為、私はその機会に私の電話番号とアドレスは絶対変えないからメモって壁に貼っておくようにと指示することとなったのだった。

【エピソード②大学卒業後のこと】

 成績優秀な友達がどんな道に進むのかと思っていたら、卒業して間もなくに大学時代の先輩との子供を授かったので結婚することになったと連絡が入り、私はこれまた驚くこととなった。
 何はともあれ順調ならと思ったが、お子さんが生まれてからというもの連絡を取る度に友達が何やら悩んでいる様子だった。何かあったのかと事情を尋ねると、友達は旦那が働いてくれないという愚痴を溢し始めた。
 聞けば旦那さんは働くのが好きではないらしく、バイトを始めてもすぐ辞めたりして続かないらしい。

 困り果てていた友達は一時は離婚も検討していたが、なるべく両親が居る環境で子育てをしたいとのこと。どうするのだろうと思っていたら、友達は意を決したように「私が稼ぐ!!」と言い出した。
 そして勉強して一年程で目標にしていた資格を取り、良い給料が貰える職種の仕事を始めて本当に旦那ごと養い始めたのだった。
 昔から思ってたが有言実行が過ぎる。
 何なの友達……何でそんなに有能なんだ……!

 では旦那さんはどうしているのかと言えば、主夫として家のことをこなしながら子育てに精を出しているそうだ。
 友達は可愛い子供と離れる時間が多いのは寂しいし、本音を言えば旦那さんに働いてほしいとは言っていたが、しっかり主夫の役割を果たす旦那さんに家を任せられるので安心して働けているとのこと。
 最近では主夫をテーマにした作品が世に出ていたりもするが、実際にこんな形で主夫を持つ女性も世の中に居るんだなと感じた出来事だった。


 友達の話はこんな感じである。
 私にはそれが良いのかは何とも言えない。
 ただ幸せの形は人それぞれだと思うし、お互いに幸せだと思えるなら私はそれで良いと思っている。

 できればこの先は平穏無事に過ごしてほしいところだが、何はともあれどうか幸せであってほしい。可能なら家族で上京したいと常々言っているので、その実現はぜひ!と思いつつこの辺りで締め括る。

□その他note


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