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ツンデレな弟の話

 前回までは宗教の話を書いてきた訳だが、今回はいっそ振り切ってやろうと思い、また全然違う話を書いてみようと思う。ズバリ、私の弟の話だ。

【弟と私】

 私には二つ歳下の弟が居る。
 やや肥満気味なのに身長があるせいか太っているようには見えないという羨ましい体格の弟は、昔から家族想いな良い奴であった。身体が大きい割に若干小心者でビビりなところも愛嬌があるし、友達や先輩方にも好かれるような弄られキャラである。
 会社の先輩方があまりにも面白い人達らしく、実家に居た頃は割と無口だったのに社会に出てからはトークスキルが飛躍的に向上してたりもした。

 そんな弟と私はまあまあ仲が良い。
 地元に残る弟と大学入学と同時に上京した私には地理的な距離はあるものの、時々弟から電話が掛かってきて雑談することもあるし、一緒にオンラインゲームで遊んだりもする。身内のLINEグループで近況報告もし合うし、今でも変わらず良好な関係を保っている。

 しかし、私は上京するまで知らなかった。
 実の弟が実はツンデレだったということを……。

【ツンデレとは】

 そもそもツンデレとは何か。
 皆様も恐らくご存知の通り、『普段はツンツンしてぶっきらぼうなのに、時折デレデレして好意的な態度を取ること』である。
 しかし私は残念なことにリアルでそんな人を見たことがなかったし、そもそも本当にそんな人が実在するのかなくらいな気持ちで居た。
 まあとんでもなく身近に居た訳なのだが。

【初めての帰省にて】

 それは上京して初めての夏休みのこと。
 実家へ帰省した私が久し振りに居間に顔を出すと、弟は一人で黙々とゲームをしていた。ただいまと声を掛けてもちらっとこちらを見るだけで反応が薄い。ようやく手を止めたと思っても「おう、帰ってきたんだ。ふーんそう」くらいの反応である。

 あまりの気のなさにもう少し歓迎しようよ!久し振りの姉なのに!くらいなことを思ったが、まあいいかと数日の間久し振りの実家を満喫する。そうしてあっという間に帰宅の日を迎えた私が、帰り支度を済ませて玄関先で親に挨拶をしているとぬっと弟が現れた。
 「……もう帰んの?」と聞く弟は、完全に寝起きで大層眠そうな顔をしていた。それもそのはずで、その時は早朝の新幹線に乗ろうとしていた為に朝早い時間だったし、弟は前日の深夜まで友達と遊んでいた。それなのによく起きてきたなあと改めて思う。

 来たばかりの時はあんなに塩対応だったのに、「次はいつ来んの?」なんてちょっと寂しそうに聞かれたらもう言うことは一つである。
 可愛いかよ!!
 しかも冬くらいと返すと「……あっそ。精々向こうでも身体に気を付けるんだな!」と急に強気になる。ここまで来たら本当にツンデレでしかない。
 何なの弟……いつからそんなキャラだったんだ……。

 それを皮切りに、私はあちこちで見られる弟のツンデレな態度に気付けるようになってきた。
 実家への帰省を計画した時、せっかくなので遠出したいと思って弟に車を出せないか打診すると、大体の場合「は?嫌だよ。俺別に休みじゃないし」と返される。そしてどんなに頼んでも嫌の一点張りだったのに、いざ実際に帰省すると「で、どこ行きたいの?その日休み取ったんだけど」と言い出すのだ。このやり取りは本当に何回したか分からない。
 何というかもう本当にツンデレ。

【No.1ツンデレエピソード】

 ここで私がNo.1だと思うエピソードを紹介しよう。
 それはある家庭用ゲームが大ブームになっていた時期のこと。私もそのゲームをやってみたかったものの、自分の家には残念ながら本体がない。かと言ってその予算を捻出するのも厳しくて断念していたが、弟はそのゲームを買っていて時々電話でその話をするようになっていた。それはもう羨ましくて堪らず、私は次に帰省した時に借りて遊ぼうと常々思っていた。
 しかし諸事情でなかなか帰省のタイミングが掴めず、ようやく帰省した時にはブームもかなり下火に。それまでの間にすっかり飽きた弟は、何とそのゲームを本体ごと売ってしまっていたのだった。

 それを知って私は勿論心から残念がった訳だが、ないものはないし仕方がない。諦めて帰宅までの日をのんびり過ごしていると、これまたタイミング悪く割と大きな台風が近付いてきてしまった。
 明日には帰宅するつもりだったのに、これは滞在を延長するしかないなと思っていた折。昼過ぎには職場から帰宅指示が出たと連絡を寄越してきたはずの弟がなかなか帰ってこない。連絡しても返事が遅いし何事かと思ってると、夕方を回ってようやく弟が帰ってきた。
 その手に私がやってみたくて仕方なかったゲームを持って。

 びっくりする私だったが、弟曰く「友達から借りてきた」とのこと。
 そして「どうせ明日帰れなくなったんだろ?ならこれで遊んでれば?」と続ける。この時点で相変わらず言葉はあれだけど本当に優しい良い奴だな!もう!!と私は心底思っていた。
 こうして私はずっとやりたかったゲームを心行くまで満喫し、数日後に帰宅した。その時の私は弟の言葉をすっかり信じていたのだが、それからかなり経ってからある事実を知ることとなった。
 あの時弟は友達から借りたと言っていたが、本当は台風が迫る中お店をあちこち回って、わざわざ本体ごと買い直してきていたということを……。

 いや本当にツンデレすぎるのでは!!?

 良い弟を持てて姉ちゃんは嬉しいです!はい!!

【最後に】

 以上がツンデレな弟の話となる。
 こんな人が実在するんだなと思いつつ、何はともあれ姉としてはこんなツンデレで可愛いところのある弟にはぜひ幸せになって頂きたい。長年彼女ができなかったのが気掛かりだったが、ようやく弟の魅力に気付いた彼女さんができて、結婚前提に付き合っているようで本当に嬉しさしかない。

 最後に……ツンデレって素晴らしい!!
 ツンデレな弟に幸あれー!!!

 ちなみにそんなツンデレな弟が体験した、細やかな心霊体験の記事もあるのでよろしければお目通し頂けると嬉しく思う。

□関連note


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