今更ながらUNFADEDについて本気出して考えてみた
「色あせない、色あせてはならない。そんな記憶を大切に、僕らと君らでこれからも進んでいきたいと思います」。昭仁さんの言葉、その後演奏された「∠RECEIVER」。
ポルノグラフィティ16thライブサーキット「UNFADED」から1年が経ちました(※僕がUNFADED横浜参戦だったため、このタイミングで1年になります。)
1年経った今、映像を見返してみたのですが、驚くほど色あせていない。むしろ、時間が経つことによりその色は深く、濃くなっている気がしています。
それは、このUNFADEDというツアーが、アルバム引っ提げてのツアーではなく、ロマポルでもなく、FCUWでもない。UNFADEDのためのツアーだったからだと思います。よどみなく、ただ「UNFADED」を追求できたからこそ、これだけ色の濃い内容だったのだと思うし、1年経っても、きっと10年経っても語り継がれるライブとして完成したのだと思います。
そこで、今更ながら改めてUNFADEDについて、4つの核となっている曲(だと僕が思っている曲)と共に振り返ってみたいと思います。
UNFADEDの全貌
4曲の話にいく前に、ライブレポでも触れた全体構成のことを軽く。
今回のセトリはUNFADEDをテーマにポルノグラフィティの多様な面々をたくさん見せてくれました。
まずは、これぞ正にUNFADEDというべき、「Swing」とかの流れ。ポルノグラフィティの懐かしい「楽曲たち」が色あせていない、むしろ輝きが増しているし、ファンが待ち望んだUNFADEDはこの曲たちだったと思います。「タネウマライダー」とかも分類としてはここに入るかな?と思います。
次に、「カメレオン・レンズ」や「Zombies are standing out」たち新曲。「ポルノグラフィティ」自身が色あせず進化を続けていることを表している楽曲たちです。
過去の楽曲たちと今のポルノグラフィティ、その2つ軸を繋ぐのが、今回「真ん中」に配置された「ジレンマ」であり、06以来王道である「ハネウマライダー」であり、近年の定番である「オー・リバル」など。これらがいつでも色あせずに僕たちとポルノグラフィティを繋ぐ合言葉のようになっているからこそ、このUNFADEDという概念とライブが完成されるのだと思います。
この歴史があるからこそ、10周年ではなく20周年だからこそ、完成するのがUNFADEDなのです。
前置きが長くなりましたが、僕がUNFADEDで核になっていると思った4曲について、語っていこうと思います!
オレ、天使
UNFADEDのオープニングです。この曲は結構ライブで使われる曲だなぁという印象があって、ポルノグラフィティにとって自分たちの初心を、立ち位置を、確かめる曲になっているんじゃないかなと思っています。リリースは2001年。
「愛という名の偶像崇拝主義を叩き潰す」
「キレイ事じゃないんだよね世の中」
「音楽なんてそんなもんか」
これらのセリフが表す通り、天使はかなりネガティブな現実主義者です。事実を積み上げ、感情的にならず、結果こそが全て。
それに対して、ポルノグラフィティは現実主義者ではあるものの、天使とは真逆のポジティブな面が多いと思います。それが端的に表れているのが、今回のセトリには入りませんでしたが、「リンク」です。
「愛という名の心に刻まれたしるしは、この世界を動かせるただひとつの道しるべだ」
天使が言っている「偶像崇拝主義」とは真逆を言っていますね。
「真実にはキレイゴトだけじゃなくイタミもある。それはきっと光への架け橋だって気がするんだ。」
天使は幻想にgood-byeと言ってますが、ポルノグラフィティはキレイゴトだけじゃないと認めたうえで、光を見出しています。天使というのはポルノグラフィティに対をなす存在として作られているわけです。
メジャーデビューをして2年目に発表された楽曲ということで、その当時の自分たちの立ち位置を、あえて逆の感情で記す曲だったのではないかと思います。
「音楽なんて、そんなもんか」というのは「音楽は、こんなもんじゃない」ということです。やってやる、という初心表明にも思えます。
「街は荒野で行くしかない」としても、そこをしっかりと現実として受け入れ、光に向かって進んできました。
この想いが色あせていないか、それをあえて自分に問うための1曲目、「オレ、天使」。
※こう考えると、神VS神1曲目の「プッシュプレイ」にて「あのロッカーまだ戦ってっかな」と問うているのと構造としては似ていますね。「VS」に対するプッシュプレイだったこともありますが、楽曲としても「オレ、天使」はUNFADEDに合っていると思いますし、東京ドームにはプッシュプレイだなって気がします。
幸せについて本気出して考えてみた
「僕がかつて小僧の頃イメージした壮大な人生プランからは多少見劣りはする。案外普通だし常識的なこれまでだ。それはそれなりにそう悪くはないのさ。そのプランなら今頃じゃマイケル的生活で世界をまたにかけていたはずなんだけれど。」
少年のころに描いていた夢と今。この対比、どこかで感じたことがあると思ったら「VS」でした。「VS」は「プッシュプレイ」とセットで、まだ戦っている自分を表したわけですが、この曲は戦っているというよりは、「思い描いていた夢とは違う毎日だけど、案外幸せだよ」と言っているんですね。
ここで初めて気づいたのですが、神VS神で「幸せについて本気出して考えてみた」はやっていないんです。東京ドームでこの曲は必須だと思っていたし、何となくやったような気がしていたのですが、やってないんですね。
盛り上がる曲で、序盤の流れで演奏される機会が多いので、UNFADEDの3曲目には納得だったのですが、ただ単純に配置されたわけではなくUNFADEDだからこそ入ったのだと改めて思いました。
「幸せについて本気だして考えてみたら、意外になくはないんだと気がついた。僕は幸せに対して失礼だったみたい。もう一度丁寧に感じて、拾って集めてみよう。」
「がっかりしたかい?小僧の僕、マイケルにはなれなかった。ただ僕は大好きな幸せの種を手に入れた。」
オレ、天使から始まった壮大なテーマとしてのUNFADEDですが、日常レベルで色あせてはならないもの、目の前の小さな幸せを大切にしよう、という曲です。観客を誰一人置いていかない、いつでも等身大に寄り添ってくれるポルノグラフィティらしいUNFADEDな曲だと思いました。
それは、次の曲にもつながってきます。
パレット
個人的には、この曲が一番の核だと思っています。もちろん、一番というと「∠RECEIVER」という見方が正しいのですが、そうではなく「幸せ~」で書いたような、日常レベルでの等身大なUNFADEDを表してくれている、とても素敵な曲だと。そう改めてこのライブで聞いて思いましたし、聞いている時はすごく幸せでした。
「地球あるいは明日が消えてしまうと言いたいのだろうか。なぜこんなに暗い詩が溢れているんだろう」
「変わらずそこにあるものを歪めて見るのは失礼だ」
「だって知っている言葉はほんのちょっとで、感じれることはそれよりも多くて、無理やり窮屈な服着せてるみたい」
情報がこれだけ溢れている時代。悪いニュースや偏見がどうしても目につきやすい時代です。いつの間にか自分の中で固定観念が出来上がってしまう恐ろしい時代。
パレットが発表されたのは2002年。まだまだケータイもSNSもこれからという時代にこの曲が完成されていたというのには驚きです。それに、この曲こそまさしく、色あせていないどころか輝きを増している曲なんじゃないでしょうか。
「パレットの上の青色じゃとても描けそうにないこの晴れた空をただちゃんと見つめていて。ありのままがいい。もうメロディに身を任せてしまえ、足りない言葉を探すのは止めて」
この晴れた空は、とても「青」では描けない。自分の心でしっかりと捉える必要があります。「色あせない」という言葉でさえ表すことができません。色あせているのか、色があるのかすら、自分の五感でありのままを感じればいい。UNFADEDもどう捉えるは自分次第。そんな自由すらポルノグラフィティは僕たちに与えてくれています。
∠RECEIVER
この曲を語らずにUNFADEDは語れないでしょう。
周知の通りですが、この曲は東日本大震災の約1年前、2010年3月24日にリリースされた8thオリジナルアルバム「∠TRIGGER」に収録されています。スマトラ沖地震や津波・アメリカのハリケーンが立て続けに起こった時期に描かれた曲ですが、その1年後、そして1年半後の「つま恋ロマンスポルノ」など、ポルノグラフィティにとって大切な曲であり続けています。
今年は新型ウイルスが世界を覆いつくしています。時期も相まって、2011年を思い出してしまいます。こんな時、1年前にUNFADEDをやってくれてたこと、その中で∠RECEIVERをやってくれたこと。外に出れない日々の中で、僕たちがどれだけポルノグラフィティに支えられているかを強く感じます。
「ニュースの価値は派手さ、そして無害さをもって量られる。常に真実でなく無難な生き方ばかりに誘い込む。この目よ虚構を射よ。この耳よ意志を聞け。迷いを打ち消すのは綿密に練り上げられたCONFIDENCE(自信)」
連日続くニュース。その本質を僕たちは見抜けているでしょうか?
虚構を射、意志を聞けているでしょうか?
知っている言葉はほんのちょっとで、それで今の世界を語ろうとしていないでしょうか?
「言葉や文字ではなく、声でなく音でなく、誰かからどこからか発せられて、解読を待つCIPHER(暗号)」
「僕たちがコントロールできることはほんの少し。ほとんどの出来事には関われないとしても。この星の裏側でも、僕たちの足下でも、起こりうる出来事から逃げない∠RECEIVER(受信者)でいたい」
どこかから発せられている言葉を、その真意を、感じ取ることができているでしょうか?
自分自身がコントロールできることはほんの少しですが、そのコントロールできること以外にも意味があって、それに対して逃げずに考えることができているでしょうか?
この曲は、たった4分29秒で多くの問いを僕たちに問いかけてきます。「オレ、天使」で語られた、この星の裏側で起こっているような壮大なテーマもあり、「幸せ~」で語られたような足下に落ちているようなテーマでもあり。
それらを、決して歪めることなく、感じ取れるRECEIVERで居続けること。「オレ、天使」の答えかのように、自分自身に言い聞かせるかのように、そして僕たちに大切なものを気づかせ続けてくれるように、この曲を歌い続けてくれます。
「色あせない、色あせてはならない。そんな記憶を大切に、僕らと君らでこれからも進んでいきたいと思います。」
僕たちにとってUNFADED、そしてポルノグラフィティは、大切なままであり続けていきます。
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