GUで自由を手に入れた話

6年ぶりに日常生活でスカートを履いた。

お友達と出かけるからと意識して履くことは年に1回くらいはあった。
子供が生まれてから、追いかけ、視線を合わせ、一緒に遊ぶにはスカートは邪魔だった。
裾を気にしていては子供への意識が削がれてしまう。
その6年の間に私は自分で、スカートが履けない人間になったと思い込んでいた。

先日、いつものように使い捨てられる安い服を求めてGUへ行った。
子供の服はすぐに汚れるし、着られなくなる。
それなら安い方が助かるし、汚さないで!壊さないで!と怒らないで済む。
子供の好きな服を選んでもらってふらっとレディースのコーナーへ行った。

「おかあさん、これ、わたしとおそろいだね」

スカートの好きな子供が言った。
裾がひらひらしているくらいしか似ていない。
それでもスカートという形状に子供は共通点を見出した。

「わたし、おかあさんとおそろい、きたい」

とても単純でストレートな言葉だった。
値段も590円と試すにはお手頃すぎる価格だった。

「お母さん、こんなひらひらしたの履いて、おかしくない?」
「かわいい!」

子供のそんな単純な言葉に乗せられて、マキシ丈のスカートを買った。


人生が変わった。


ふくらはぎをひらひらと撫でる布が心地よかった。

いつものTシャツにジーンズという動きやすい格好をもうしなくても、子供は自分で学校に行って帰ってくる。
自転車で送迎する必要もない。

スカートに合わせるものがTシャツなのは味気なく思った。
だからトップスも買った。

久しぶりにおしゃれをするために服を買う。

スカートに合わせたトップスにしたら、顔が味気なく思えた。

メイクをして、アクセサリーを着けた。

少しの買い物なら歩くようになった。
だから何気なくヒールを履いた。

コツコツとアスファルトを響かせる音が懐かしかった。

そうだ。
こうだった。
昔の私はこうだった!

気づけば背筋が伸びていた。

指先にも手入れをしよう。
マネキュアも塗ってみよう。

日傘を持って背筋を伸ばし、ヒールを鳴らして凛と歩く。

心地よい風が自分を通り過ぎて行った。


ああ、私は自由なんだ。


両手があいている。
だから傘も買い物袋も下げて、自分の好きな速度で歩ける。

自由なんだ。


たった一枚のスカートが、私の人生を変えた。

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