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絵本に沼りそう|プアー

ずいぶん前に予約していた図書の順番が回ってきたので、久しぶりに図書館へ行った。ここのところ読書はすっかりaudible一色になっていたので、紙の本を手に取ることに懐かしさすら感じた。

近所の図書館はとても小さい。だけど、入ってすぐのところに絵本・児童書スペースがある。素通りしたことしかなかったその場所へ、ベビーと一緒に初めて足を踏み入れてみた。

本棚の一角に、赤ちゃん絵本コーナーを発見。
これまでの数少ない読み聞かせ経験を振り返り、色使いがパキッとしていて字数の少ないものを探した。あと、サイズの小さめのものを。ベビーを抱っこしながらページをめくるのは意外と難しいのだ。

何冊か手に取って悩んでいたら、目に入ったのが『プアー』だった。
プアーって何の音かよくわからないけど、作者の「長新太」は聞いたことがある。「和田誠」はもっと知っている。これにしよう。
何冊か借りようかとも思ったけれど、この一冊を読み込んでみたい気がしてやめた。貸出カウンターで、予約していた『母親になって後悔してる』と一緒に借りた(組み合わせのシュールさにわたしは思わず笑ったけど、司書の方はプロなのできわめて平静だった)。

手持ち無沙汰の昼下がり。
そうだ、絵本があるんだったと思い出して、ベビーと一緒に椅子に座る。表紙を見せて「プアー」と切り出したら、ベビーもなんとなく焦点を合わせてくれた。

中は見ないで借りたから、わたしもこの犬がどんな冒険をする話なのかを知らない。知らないでページをめくったら、いきなり尻尾が風船のように膨らんで仰天した。尻尾だけじゃない、体のあちこちがどんどん膨らんでいくではないか。

真顔のまま膨らみ続ける犬を、親子でしばし見守る。
和田誠が仕上げたという色合いの鮮やかさと、母が「プアー」しか言わなくなったのが不思議だったのだろう。ベビーはじっと絵本に見入っていた。

読み終わってホッとしたあと、もう一度はじめから読んだ。何かを確かめたくて読んだ。

プアー、プアー、プアー!
今度はテンポよくページをめくる。膨らむ部位に合わせて、声を大きくしたり高くしたり。
ほぼプアーしか言っていないのに、なんなら犬は冒険はおろか一歩も進んでいないのに、何度でも読み返して楽しめそうなこのポテンシャルは一体何だろう。これが長新太ワールドっていうやつなのか。面白すぎる。

この絵本は、長新太氏が亡くなる数ヶ月前に描いたラフスケッチに、和田誠氏が色をつけて完成させました。同じようにできた作品に、『わんわん にゃーにゃー』があります。

『プアー』の奥付より

また読もうね、ベビー。
『わんわん にゃーにゃー』も、長新太の生前の作品も。



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