見出し画像

限りなく透明に近いブルー

THE文学。村上龍の細やかで、グロデスクで、容易に非現実的な情景がイメージできてしまう文章や表現に心が打たれる。(なにより20代前半でこれを書き上げた衝撃が走る) 
社会が生き生きと動き続けるそのほんの少し軸がずれた点の上では、主人公が"若さ"なのか徐々に自覚していく自身の"違和感"なのか、そういったものから抜け出せずに堕落と失望の中で安寧を求めてもがき続ける。そういう物語。

私はこの青い方の表紙デザインが好きだな
ポケットに入れておきたい色

高校生の頃に初めて手に取って、そこから毎年ピークで気温が上がる時期に開く一冊。私にとっての村上龍デビューであり、これは自分の中の哲学を見つめ直すためのきっかけをくれた人生のバイブルに近い。納得できる形で人格の形成をしていったのもなんだかこれを読み始めた時期な気がする。(私に当時これを勧めてくれた人は元気だろうか)おすすめしてもらった経緯を含めてこの作品に思い入れはとてもあるのだけど、毎年読むうちに物語に込められた多くのメタファーに共感できなくなってきて、大人になってしまった寂しさを感じる。私はマスに向けて動き出してしまったし、過去の自分が憧れていたような人間にはなれなかったけどその名残惜しさは物語の終わりに主人公が抱えるものに近いのかもしれないなどと思う。ドラマチックな投影ができる以上、私もまだ存外終わりではない。


そして、このように理想にすがるあたりが非常にダサい。(ダサさに気付いた私はさらに深く悲しむ)


読み終わった後の一連の喪失感をセットで、自分の人生と向き合いたくなる本。思いを馳せる起点は背負ってきたもの、辿ってきた人生で変わると思う。

もし生々しい描写が苦手だったら、少し涼しい季節になってから読むと本書の腐ったパイナップルに顔をしかめなくて良いかもしれない。おすすめです。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?