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先の見えない怖さ

私は生まれてからずっと、1年前まで、海のあるまちで育ってきた。
海があるということは当たり前だったし、むしろ自然災害の恐怖があるのだから海なんてない方がいいのかもしれないとも思っていた。

最近海無し県に越してきた。
ガスがかからず(霧まではいかない濃霧のような状態)、天気はカラッとした日が多い。
潮風で車が錆びることもないだろう。前の車は足回りが錆び付いて取れてしまった。

海なんてない方が生活しやすいじゃないか、と最近まで思っていた。

昨日久々に散歩に出た。
散歩とはいうが自転車で散策しただけだ。

地元にいる頃はよく海の近くの展望台まで走ってたそがれたものだ。
ベタベタした潮風と匂い、そして孤独感にうんざりして帰路に着くまでがセットだった。

不思議なもので、海がないと散歩もどこへ向かえばいいか分からなかった。
地元より都会なこの街でひとりぼっちな私、ひとりじゃないと思いたくて外に出るのに他人が仲間内で楽しそうにしているのを見ると途端に居場所がないような気がしてしまう。

海へ散歩に来てた人はみんなこんな気持ちだったんだろうか。そんな人が集うからこそ安心して海へ足を運んでいたのではないだろうか。
考えに耽りながらひたすら歩いたその先に、海という名の行き止まりがあるのなら、みんな満足すれば自然と家に帰る。


たまにGoogleマップを見ながらたどり着いたのは結局は駅前だった。
繁華街の反対側なので静かなものだった。

なんだ、こんなものか、と帰路に着く。

時間は夜ご飯の頃合。
家庭から漏れ出す幸せの香りが私を虚しく惨めにさせる。

あれだけひとりきりを願っていたのに。
いざひとりきりになったら地元が恋しくなるなんて私もまだまだ甘ちゃんだ。

彼には分かって貰えないんだろうな、この感覚は。
何不自由なく育ってきたあなたには分からないよ。

最近の私は劣等感の塊だ。
やるせないな。

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