10月の読書


9.流

東山彰良著 第153回直木賞受賞作

テレビで直木賞芥川賞の受賞作のニュースが流れても読書に無頓着な私は気にもとめたことがなかった。
というか直木賞がどういう賞なのか一切知らなかった。なんなら直木三十五を知らない。芥川龍之介は流石にわかる。
なんとなくのイメージで文学性が高くて読書嫌いの自分には手が届かない気がしていたが、調べてみると歴代受賞作ノミネート作の中でも知っている作家や読んだことのある本もあったしそんなに気負う必要もない感じがしてきた。

というわけで手に取ったのが本作、なんとなく自分はミステリー読みがちだったので青春小説というざっくりとした概要のみをもとに古本で購入。
70年から80年代にかけて、台北に暮らす少年秋生の青春と成長を描く物語。
何と言っても混沌とした情勢の70年代台湾の描写が面白いし興味深かった。日中戦争そして中国内乱からの台湾の歴史というのを全く知らなかったので、詳しかったらもっと楽しめたのかなという気がする。
当然登場人物は台湾、中国の人なので馴染みのない中国語の名前をなかなか覚えられないが、普段の読書でも登場人物を曖昧に覚えて適当に読み進める癖のおかげで苦ではなかった。
秋生のドラマとしての物語も波乱万丈で目まぐるしく展開して魅力的に写った。文章は時系列を追うように秋生の一人称で描かれるが、時折その時を俯瞰して見る視点つまり未来の秋生の言葉が出てくるのが、単なる青春物語としてではない一人の人生譚として描かれていたのが特徴だった。

一日10ページ程度の読書量だったので約一ヶ月も書けて読んだのだが、読み終わってパラパラと読み返すとそんなことあったなあと思い返せるような、たった500ページ弱の中に詰まった濃密なストーリーでした。


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