私は、浅瀬をうろつく大型の蟹を、手に持ったこん棒のようなもので叩き割る、そんな妄想をしていた。

高級食材などと持て囃される一方で、その身を食すには殻を取り去るという手間が必要であり、そんなしゃらくささを内包した十本脚野郎の、キチン質の甲殻を容赦なく破壊する行為は、ある種の背徳的・冒涜的な興奮をもたらすのだろうと、飽きることなく感じ入っていた。

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