母の愚痴と、好きの不思議

わたしの母は、60歳になった時に新しいことを始めよう、と思い立って、点字の翻訳を始めた。
地元に点字の翻訳ボランティアをやっている団体があって、そこに入って、一から点字も勉強した。

新しいことに挑戦すること、誰かの役に立つことを始めるのはとても素敵なことだと思うし、応援したいと思っていた。

で。

しばらくして、最近どう?と聞いてみると、
難しい、とか、覚えられない、とか、大変だ、とか、まあ愚痴ばっかり。

数年経って慣れた頃、まとめの当番が大変だとか、人がいないとか、送り迎えしなきゃいけないとか、相変わらず愚痴ばかり。

身体を壊すほどだったり、精神的に追い詰められるほどではなさそうだったので見守っていたものの、
何度、そんなに大変ならやめたら?と言ったかわからない。

だけれどなんだかんだ、辞めずに続けて、もう10年になる。


この間ふと、「継続」に憧れる自分について考えていたら、なんだかんだと一つのことを10年も続けている母はすごいなと素直に思えた。
なので本人にそのまま伝えてみた。すると、

「まあね、好きだからね」
とのこと。

びっくりしてしまった!
愚痴しか言ったことがないから、てっきり嫌いなんだと思っていた。いや、流石に嫌いではないにしろ、人が足りないし、辞められないから、とか付き合いもあるから、とか、そういう事なのかなと思っていたのだ。

好きだったなんて! 

母曰く、ぶちぶち文句を言いながら難しいことに取り組んだり、考えるのが好きなのだという。

そっか。文句言いながらやるのが好きだったのか!!
わたしにとっては青天の霹靂である。
見方がひっくり返ってしまった。

そして、一つの文章をどう訳すのか、表すのかが人によってもかなり違ったり、地域性があるのもおもしろいとか、好きなところを語ってくれた。
なるほど、嘘ではなく確かに楽しそうだった。

いつもそうやって好きなたところを語った方が楽しいんじゃないのかなぁとわたしは思うのだが、
本当にそれも、人それぞれなんだなと思い知る出来事だった。
文句を言いながらやるのが好きな人もいるのだ笑

一つの行動だけ見て、あれこれ決めつけちゃいけないなあと自分を戒める。
(でもやっぱり、言ってくれなきゃ伝わらないとも同時に思う)

職場のあの人も、口ではああいうが、本当は意外と楽しいのかもしれない。
普段あんまりありがとうとか言わない旦那さんも、実は結構感謝してるのかもしれない。


もっと先入観をなくして、
もっと俯瞰して、
もっと楽しい見方で世界を見たら、また新しい発見があるかもしれない。

そう思ってちょっとクスッと出来たら、それはとてもいい一日だと思う。

そういえば、母は父のこともずっと愚痴っているが、もしかすると、結構好きなのかもしれない……♡


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?