見出し画像

ボクとコタロウ。

ボクが生まれたとき
柴犬のコタロウもやってきた。
 
赤ちゃんだったぼくボクは
ひどく怖がりだったそうで
大きな物音がすると泣いていた。
でも、いつもぼくを守るように
コタロウはそばにいてくれた。
ゆりかごの隣で
コタロウもスヤスヤ寝ていたね。
 
小学生なったボク。
コタロウも元気盛り。
休みの日になると
いつも一緒に庭であそんだね。
二人でかけっこしたり
土いじりしたり
泥だらけになって
よくママに二人して怒られたっけ。
 
中学生になったボク。
コタロウとあまり遊ばなくなった。
学校でむしゃくしゃすることがあると
コタロウに当たったこともあった。

ごめん。

でも、コタロウはいつでも話を
聞いてくれたんだ。
パパやママに言えないことも
コタロウには話せた。
返事はしないけど
真っ直ぐな瞳でボクを見て
聞いてくれたね。
どれだけ、楽になったかわからないや。
 
高校生になったボク。
部活が忙しくて
帰りが遅くなっても
コタロウは”わんわん”って
誰よりも先に玄関まで迎えに来てくれた。
しっぽふってさ。
ボクも”ただいま”って答えたよね。
うれしかったな。
 
ある日から
コタロウは元気がなくなっていった。
食事もあまりとらなくなった。
散歩にも行きたがらなくなり
寝ている時間が増えてきた。
 
コタロウって呼ぶと
顔だけこちらに向けて
お気に入りのクッションの上から動かない。
 
心配になって獣医さんに連れて行った。
お医者さんは 年を取ったからだよ。と
薬も何も出さなかった。
 
ボクは毎日帰ってきたら
コタロウに声をかけた。
今日あったことを前よりもっとしゃべった。
 
コタロウは聞いてくれた。
目を閉じながら
時折、僕を見て、
聞いてるよって合図をしてくれた。
 
ちょうど部活の遠征が入って
3日ほど家を空けた。
 
戻ってきたら
コタロウはほとんど動かなくなっていた。
息だけは
はぁはぁって少し苦しそうで
声をかけると
ゆっくり目を開けて
大丈夫だよって合図をしてくれた。
 
ボクはその日、
コタロウと一緒にリビングで寝た。
 
小さいころの思い出をたくさんしゃべった。
ボクのお気に入りのおもちゃを噛んで
ボロボロにしたことや
 
家を脱走して
大騒ぎなって
警察に保護されていたこと。
 
好きな女の子ができたときは
真っ先にコタロウに話したね。
 
ボクの人生にはいつも君がそばにいたね。
 
コタロウ。
コタロウ・・・
 
朝、目が覚めると
コタロウは冷たくなっていたよ。
声をかけても
体を揺り動かしても
ピクリともしなかった。 

コタロウ!
コタロウ!!
ボク まだ、コタロウに
話したいことたくさんあるよ。

まだまだ 一緒にやりたいこと
あるんだよ!

ほら、また、あの公園に行こうよ。
ねぇ、コタロウ!
コタロウってば!!

パパやママが
慌ててやってきて
コタロウの頭を撫でて
「お疲れさま。ありがとう。」って言った。

ボクはコタロウを
抱きしめて
ありがとうって
何度も伝えたよ。

悲しかったけど
ボクは平気だよ。
だって コタロウとの思い出が
たくさんあるから。
 
こうして目を閉じれば
いつでも君に会える。
 
だから心配しないで。
ゆっくり休んでね。
 
ありがとう コタロウ。
大好きだよ。
 
かけがえのない家族。
 
 
あとがき
イギリスのことわざに
「子供ができたら犬を飼いなさい。
 子供が赤ちゃんの時は 犬が守ってくれる
 子供が少年の時は 
 良き遊び相手になってくれる。
 子供が思春期を迎えたら 
 良き相談者になってくれる。
 子供が青年になれば 犬は自分の命を賭して
 家族の大切さを教えてくれるから」
私はこの言葉が好きで 
娘が生まれたときに
犬を飼いました。
おかげさまで ことわざ通り
子ども達にたくさんのことを
教えていくれています。
命は有限だから。
この時を大切にしましょう。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?