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マルメロ放浪記

喫茶店めぐりに欠かせないアイテム。

今ならミラーレス一眼、メモ帳、ボールペン、スマホ、財布くらいしか思い浮かばないけど、かつては“マルメロ” という果実が必須アイテム(?)だった。

2012年、心身ともに調子を崩して会社を辞めた。夫と別居せざるを得ないほど、精神状態が悪化。
誰とも会えないのはもちろん、関わることすらできない日が続いていた。


回復のきっかけをくれたのが、青森県津軽地方ではよく知られたマルメロという果実だった。

マルメロはバラ科の落葉樹。
秋になれば“カリン”によく似た黄色い実をつけ、甘い香りを漂わす。

マルメロをお守り代わりにポケットに入れ、散歩することを思いついた。
徐々に行動範囲を広げる。香りに包まれながら自分を癒そうとしていた。



歩き疲れたら喫茶店で休憩。喫茶店にいると瞑想状態に入り、余計なことを考えずに済んだ。頼んだメニューと空間だけを味わっていれば良かったから。

ある日のミッションは降りたことのない駅で降りること。
駅前に小さな喫茶店を見つけたので、ここでひと休み。一見強面だけど話しやすかったマスターにお願いしてポートレイトを撮らせてもらった。

それまでポートレイトなんて撮ったことがなかったのに、喫茶店だけではなくマスターの写真も残しておきたいなぁと思ったのだ。

「頼んだことを受け入れられる」練習だったのかもしれない。

マスターが右手に持つ編みぐるみの中にマルメロが入っている。


上は6年後に再訪したときに撮らせてもらった写真。ポートレイトを送付したので、私のことを覚えてくれていた。

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