【プロローグ】「犬の看板」探訪記~関東編~|太田靖久
嫌なことがあって気分が乱れたとしても、それさえできればある程度は気が休まるという習慣を多くの人が持っているのではないか。
甘いものを食べるとか、好きな曲を聴くとか、サウナに入るとか。それらは心身のバランスを保とうと試みるささやかな日常的工夫だろう。
僕の場合、「犬を見る」という行為がひとつそれにあたる。何かしらの出来事により不愉快な気持ちを抱えたまま自宅の最寄り駅に着いた時など、少し遠回りして散歩中の犬に遭遇できないかと辺りを見渡す。どんな犬種でもかまわない。小型犬