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【連載】犬の看板探訪記〜関東編〜 | 太田靖久

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犬を愛する小説家・太田靖久さんの「犬の看板探訪記〜関東編〜」の連載です。 公開日時は毎月30日18時で、全12回の予定です。
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記事一覧

〈第十二回〉犬の看板探訪記|関東犬・追憶編と参拝編|太田靖久【最終回】

追憶編  連載最後の第十二回は関東犬・追憶編と参拝編だ。そのタイトルだけを先に決めていたものの、具体的にどこに行くのかは未定だった。  正直に告白するなら、今連載のクライマックスは第七回の<福岡犬編>だったといえるだろう。探訪の原点である【プンスカ犬】との再会を無事遂行したことで、大きく描いた輪は閉じられた。ただきれいにオチがついても終わらないのが人生であり、そのはみ出した部分にこそ濃厚なおもしろさが潜む場合もある。ささやかなカタルシスに酔って少し休んだら、またどこかに出

〈第十一回〉犬の看板探訪記|栃木犬編|太田靖久

 十一回目の探訪は栃木犬編だ。2024年2月現在、栃木県には25の市町が存在する。今回は日程と同行者を変えて電車と車の二回にわけて探索した。連載を重ねる中でどうしても既出の【フリ素系】が多くなり、各看板の分析や説明が簡素になってきているため、たくさんの市町を訪ねることで初出の看板や【オリジナル系】を発見する確率をあげたいという思惑があった。  以前に栃木県内で撮影した看板の一部を先に紹介する。栃木市、野木町、小山市、足利市である。  別途、栃木県内には「栃木県動物愛護指導

〈第十回〉犬の看板探訪記|東京犬23区編<その2>と<その3>|太田靖久|ゲスト:わかしょ文庫

太田靖久 十回目の探訪は東京犬23区編<その2>と<その3>だ。今回は2回にわけて探訪しており、日程も同行者も異なっている。  連載第2回目の<その1>で9区(江戸川区、江東区、中央区、千代田区、台東区、文京区、葛飾区、足立区、荒川区)を訪れ、連載第4回目の滝口さんゲスト回で1区(世田谷区)を終えているため、撮影済みは計10区だ。東京犬23区編はすべての区の制覇が目的であり、残りは13区となる。 <その2>  <その2>では「東京メトロ・都営地下鉄共通一日乗車券」を活

〈第九回〉犬の看板探訪記|千葉犬編|太田靖久

 九回目の探訪は千葉犬編だ。2023年12月現在、千葉県には37市、16町、1村の合計54市町村が存在する。この千葉犬編に関しては少し前から大まかな構想があり、電車と車の2回に分けた探訪計画を立てていた。その理由を少し過去にさかのぼって説明したい。  10月某日に今連載の第七回にあたる<福岡犬・遠征編>の取材を終え、福岡空港から飛行機で関東に戻ってきた。成田空港の第一ターミナルを出て京成本線で東京方面に向かうまでの間、ひとつひとつの駅に注意を払うものの、僕にとってなじみのない

〈第八回〉犬の看板探訪記|神奈川犬編|太田靖久|ゲスト:鴻池留衣

太田靖久  八回目の探訪は神奈川犬編だ。2023年9月現在、神奈川県には33の市町村が存在する。県の形状は横向きの犬が吠えているような【シルエット型】である。 生まれ育った場所  神奈川県は僕が生まれ育った場所でもある。「出生地」を訊かれた場合は「秦野市」と答える。こちらの「犬の看板」が設置されている地域だ。  別途「出身地」を回答する際は「厚木市」としている。秦野に住んでいた時期が短いため、長い時間を過ごした厚木の方が感覚的にしっくりくるからだ。ちなみに厚木市の看

〈第七回〉犬の看板探訪記|福岡犬・遠征編|太田靖久

 七回目の探訪は福岡犬・遠征編だ。前回の山静地方ですでに関東地方をはずれ、今回はさらに遠く離れた九州地方が舞台である。今企画タイトルの<関東編>という看板に偽りありという状態ではあるが、事情があるため、追って説明したい。  その前に福岡県について簡単に紹介する。九州地方の北部に位置し、2023年10月現在、県内には29市・11郡・29町・2村がある。  今回はレンタカーを使用した。福岡市を出て北東方向に進み、50キロほど離れた北九州市に着くまでの間、いくつかの市町村を探索。

〈第六回〉犬の看板探訪記|山静地方・山梨犬と静岡犬編|太田靖久|ゲスト:田中さとみ

太田靖久 六回目の探訪は山静地方・山梨犬と静岡犬編だ。山静地方とは山梨県と静岡県の2県の総称であり、読み方は「さんせいちほう」である。前回のラストでも軽く触れたが、今回は関東から少し離れてみることにした。  連載を重ねるごとに【フリ素系】の頻出が気になっている。これは関東に限られた現象なのだろうかと疑問になり、関東以外の地域の看板を調べることで多少は検証できるのではないかと考えた次第である。  夏休み期間中とあって「青春18きっぷ」(※JR全線の普通列車の普通車自由席が5回

〈第五回〉犬の看板探訪記|茨城犬と埼玉犬・おかわり編 |太田靖久

 五回目の探訪は茨木犬と埼玉犬・おかわり編だ。この「おかわり」とは再訪を意味する。先ずは茨城犬の「おかわり」から解説し、埼玉犬は追って触れることにする。 茨城犬・おかわり編5年前の約束を果たすため、茨城へ  およそ5年前、今連載と同じコンセプトで「犬の看板」探訪記を雑誌に寄稿したことがある。『生活考察』vol.6(2018年11月刊行)に掲載された「『犬の看板』探訪記 <茨城犬篇>」だ。この時は茨城県水戸市をスタート地点として車で移動し、茨城町、大洗町、小美玉市、石岡市、

〈第四回〉犬の看板探訪記|東京犬・都下編 |太田靖久|ゲスト:滝口悠生

太田靖久都下のDOGモたちを一挙紹介  四回目の探訪は東京犬・都下編だ。東京都下とは、東京23区以外の東京都の市町村を指す。2023年7月現在、都が公開している都内区市町村マップによれば、26市・5町・8村となっている。  東京都下の中には「犬の看板」探しを開始した最初期に足を運んだ市町も多くあり、僕の原点ともいえる。今回探訪した場所は限られているため、それ以外から合計12枚の看板を紹介する。先ず、瑞穂町、清瀬市、東大和市、青梅市。  続いて、国分寺市、西東京市、東久

〈第三回〉犬の看板探訪記|群馬犬編|太田靖久

 三回目の探訪は群馬県だ。2023年5月現在、群馬県には35の市町村がある。「犬の看板」を探しながら半日程度ですべて回るのは当然ながら無理があるため、事前に探訪予定地域をしぼることにした。以前僕が行ったことのある地域ではなく、未だ訪れたことのない市町村の犬たちに会いたいと先ずは思った。  ちなみに僕が今まで出会った群馬県の「犬の看板」の一部を先に紹介しておく。前橋市、高崎市、桐生市、伊勢崎市である。  今回の探訪は編集Sくんが車を出してくれる手はずだった。群馬県の地図を眺

〈番外編〉東京世田谷犬編|「犬の看板」探訪記|太田靖久

 2023年7月6日は僕にとって少し特別だった。世田谷区祖師谷にある本屋「BOOKSHOP TRAVELLER」の2階ギャラリーで犬の看板写真展がはじまる日だったからだ。  この展示は「犬の看板探訪記~関東編~」の連載開始記念であり、僕が発行している文芸ZINE『ODD ZINE』と、連載の版元である小鳥書房との共同企画ということになっていた。小鳥書房の編集Sくんには僕の「犬の看板写真」のコレクションを200枚ほど渡していた。今回の展示の目玉であるその写真をSくんが事前に木

〈第二回〉犬の看板探訪記|東京犬・23区編<その1>|太田靖久

 二回目の探訪は東京犬・23区編<その1>である。これは<その3>までのシリーズを予定していて、23区をすべて回るのが目的だ。一回の探訪で7~8区を回り、それぞれの「犬の看板」を無事見つけられれば、三回でコンプリートできる計算になる。ただし各区によって設置枚数にばらつきがあるはずで、そう単純ではないかもしれない。  以前からの活動により、すでに23区の「犬の看板」を写真に収めていたため、どこの区は見つけやすい/見つけにくいという情報は頭にある。港区が最も苦戦した記憶があり、

犬の看板写真展 at BOOKSHOP TRAVELLER|「犬の看板探訪記」連載開始記念 (ODDZINE×小鳥書房 共同企画)

 「犬の看板探訪記」連載開始記念として、「犬の看板」写真展を開催します。犬を愛する小説家・太田靖久さんがライフワークとする「犬の看板(※)」探訪で収集した「犬の看板」写真を一挙に公開します。  これまで「犬の看板」は、『生活考察』vol.6(「犬の看板」探訪記<茨城犬篇>)、『ODD ZINE』vol.5(犬の看板物語)、vol.9 1/2(創作のタネとしてのサブカルチャー)などでその魅力が語られてきました。新連載の探訪記では「DOGモ(ドッグモデル)」「犬の看板天国」など

〈第一回〉犬の看板探訪記|埼玉犬・志木駅編|太田靖久

犬の看板天国へ  連載第一回目のスタート地点に選んだのは、東武東上線にある志木駅だ。ここは埼玉県の志木市、朝霞市、新座市の3つの市が隣接しているところにほぼ位置している。  なぜここからはじめるのか。  この地に僕自身特にゆかりはないし、「犬の看板」発祥の地などのルーツがあるわけでもない。今回の連載をはじめるにあたり、まずはなるべく多くの数と種類をサンプルのように提示したいと考えたのが理由である。この3つの市には何度か訪れたことがあり、数も種類も豊富な地域であると知って