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【詩】『今日、京都とミカと猫。2』第八話「つたえる」

今日9月5日月曜日、7月からスタートしたLINE NEWSのVISIONシリーズ『今日、京都とミカと猫。2』の最終話が配信となりました。

この映像作品は、2021年に配信された『今日、京都とミカと猫。』のシリーズ第二弾であり、スマホの縦型の画面で楽しむポエトリーリーディングドラマです。
わたしが所属する詩と声と音のユニット「Poetic Mica Drops」と、気鋭の若手映画監督・宮嶋風花さんとのコラボレーション作品で、わたしは劇中の詩を書き下ろしました。

アーカイブもあるので、ぜひご覧いただければと思うのですが、この記事では、最終話に朗読された詩をお届けします。

詩:『今日、京都とミカと猫。2』第八話「つたえる」より

おかえり。見えなくても、聞こえなくても、触れられなくても、
どこかにたしかにいる、あなた。
人や物にこすれて、傷ついて、
ひとりぼっちを噛みしめる。
冷たすぎて火傷しそうな
かたくななこころ、ひとつ抱えて。
ひとりじゃないよ、なんて
綺麗事だよね。
だってこれはフィクションだから
つくりものだから
偽物だから
でも、知ってた?
偽物は、本物がないと生まれない
本物のわたしたちはみんなひとりだった
耳ざわりのいい言葉を
あたたかな手を
画面の向こうの相手を疑った
本当は、本当に。
つくりもののわたしたちだから
あなたの取り繕った感情へ届けたい
その向こうにある
さびしい夜にだけ開く扉
その向こうにある
あなたの悲しさ、愛しさに
すこしでも届くことを願って
一緒に、生きていきましょう。
傷つきながら、たまに笑って
伝わらなくても大声で叫んで
何度も、何度でも。
不恰好に、ひび割れながら、それでも、それでも。
愛し、愛されて。
きっと良いものは、ゆっくり育つから。
それまで、どうか。
……もう行かなきゃ。
さよなら、とりとめもないわたしたち
ありがとう、大好きだよ

草間小鳥子

どんなフィクションでも、その向こう側で作り手がたしかに体験し感じ考えたというリアルがあります。

さらに、自分の現実と隣り合わせに在る他者の現実に対する想像力も欠かせません。

そういったものが滲み出る作品を〜などとは思いませんが、作品は現実の上に立っているということを作り手自身が忘れないようにしなくてはな、と思っています。

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