再録「萌えをめぐる対談(mixi日記06.2.19)」

 「萌えということはそれ自体のオートマティズムがあるんだ。つまり、萌えとはじめに言い切っちゃうと、人間の体の動きというのは機械に変わっていくんだ。僕はそれをいつも感じるのは、たとえば、引き合いに出して悪いけれども、このあいだ某エロゲーをプレイしたんだ。作品の名前は言わないでおこう。僕は、初めの部分は感心したんですよね。ところが、ある部分からシナリオが離陸しちゃうんです、飛行場から。飛行場から離陸しちゃうと、あと機械の動きなんですよ。飛行場で油を入れて機械が動き出すでしょう、そこまではすごいんですよ。ところが、プロペラでも、ジェット機でもいいが、動き出したら、あと機械ですからね、ピューッとどこまでも高く上がるんです。だけどそれはシナリオじゃないんですよ。武器を持った小柄な少女がある日突然我が家に居候を始める。その少女が次第に主人公へ惚れる、ここまではいいんだ。しかし、登場した過去の恋人との間に、一度もセックスは無かったなんてことになっている。これはもうオートマティズム以外のなにものでもない」

 「僕もオートマティックということはやっぱり、短い萌えで終わっちゃうと思うんだな」

 「短い萌えで終わっちゃう。あれがこわいんだな」

 「あれをやると、せっかく最初もっていった迷路が、空中上の一点から一点へ行く間の我慢ということになっちゃう」

 「そうなんだ。セックスさせておくべきなんだ」

 「それは例は別としてもね」

 「そうするとどんなことを書いても、どんなショッキングなことを書いても、もうだめなんですね」

 「それはだめだ。それはだから、ショッキングじゃないわけだ。オートマティックだったらショッキングじゃないですよね。あなたはそういう状況に異を唱えようとしてきたんだし、それを支持する層だって少なくなかったはずだと思うけど」

 「でもね、つまり、否定するということに対する喝采というのは、僕は全部嫌いになったんだよ。つまり、ある人間がインターネット上で発言する、それはブログや掲示板が一番うまく証明しているが、巨大掲示板の2ちゃんねるかな、あそこで、板がいくつかあって、その中に書き込んで、政府攻撃とか、いろんな攻撃をやっているわけだ。それをみんな、のんびり見ているわけだよ。あらゆるラジカルな書き込みをするが、しかしそれはすぐみんな忘れちゃう。書き込んだものも、書き込んだことで安心している。そういうものを見ていると僕は、ことばというものが消費されていくものすごさみたいなものを、このごろ痛切に感じるな。自分のホームページもやっぱり、あれがビニール袋みたいに捨てられていくんだという感じがとってもするな」

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