ゲーム「ゼノブレイドクロス」感想(完全版)

 ブラッドボーンの直後だと、全般的にきつい。グラフィックの細部が粗くて気になるし、昭和のSFみたいな固有名詞のセンスと造形デザインには目眩を感じる。13歳という設定の女性キャラのモデリングがきつい。長年、二次元のみを見続けたおたくが、その精神の歪さを客観視できなくなっている感じがありありと伝わる容姿である。このキャラだけは一般人には絶対に見られたくないし、「おたく=ペドフィリア」の偏見を助長するので誰にも見せたくない。

 前世紀末のライトノベルを未だに地でいくキャラどうしのかけあいがきつい。視点の置きどころがない、構図のないカメラで撮影されたムービーでそれをやるため、なんというかひどくいたたまれなくなる。「斃す」とか「赦す」とか、常用漢字に親を殺された感もすごいきつい。でも、さすがにゲーム部分は面白いので、無理して我慢して作品世界へ没入しようとする。けれど、頻繁に挿入されるムービーにいちいち現実へと引き戻され、その決意をさんざんに砕かれる。

 いい年齢をして未だにゲームを止められない自分が恥ずかしくなり、さらにいい年齢をした大人がこれを作っているかと思うと暗澹たる気持ちにさせられる。「社長が訊く」で制作側の素顔をダブルミーニングで知ったゆえか、名状しがたい負の感情がとめどなく噴き上がり、本当に冗談ではなく死にたくなる。ぼくたちおたくは嫌われて当たり前だし、軽蔑されてもしょうがないんですも。なんだこれですも。

 ごめん、ゼノブレイドクロス、かなり面白くなってきた。全体的なシステムを理解したあたりから、ゲーム部分が尻上がりにぐんぐん良くなる。こうなってくると、導入部分で失敗しているのがすごくもったいない。このゲームのいちばん悪い部分は序盤の五時間に集約されていて、説明書を読み上げたみたいなムービーが延々と続く割りに、肝心なゲーム性の部分に関してのチュートリアルがいっさい欠落している。特に戦闘まわりがそうで、システムを理解すると格上の敵でも工夫次第で倒せるようになるのだが、日本語発音で英名の必殺技を叫び続けるだけのうるさいオートバトルだとしか受け取れず、そこへ至るまでにプレイを止めてしまう層は一定いるに違いない。ストーリーテリングのぎょっとするような唐突さと、何をプレイヤーに教えるべきか取捨選択できていないチュートリアルの下手くそさには、同じディスコミュニケーションの根があるような気がする。

 ゲームを作る抜群の才能に恵まれた誰かが、設定とかシナリオとかまで分業せずにひとりでぜんぶやっちゃって失敗している感、どっか他の分野で体験したことあるなー、どこだったかなー、と思ってたら、エヴァQだった。いや、「宇宙ショーへようこそ」を見たときに感じた、技術はすごいはずのに、なぜか人に勧められない作品に仕上がっているじれったさそっくりだ。

 おたくなる枠組みとは、客観性の欠如に他ならない。アニメ業界で技術屋プロパーが制作の総指揮を握るようになった例の成功者は言うまでもなく宮崎御大だが、彼が一般に受け入れられている理由は、未成年の少女が大好きなことは半ばおおっぴらにしながら、その少女とセックスしたいと思っていることは塵ほども作品に混入させないところにある。宇宙ショーへようこそとゼノブレイドクロスが抱える問題の共通点は、どちらも未成年の少女とセックスしたい気持が垂れ流しになっているという、まさに客観性の欠如だと指摘できよう。あと、全然関係ないけど、脱落して久しいけど、いつか来るFF11サービス停止後のオフライン版は、このシステムで作って欲しいと思った。

 ほんまシステムのこといっこも説明せんな……わかりやすなったら死ぬ病気にでもかかっとんのかいな……そろそろ中盤や思うけど知らんままになっとる大事なこと多いんやろな……マリオクラブは何をしとったんや……

 ダラダラと例のクロスやってる。うーん、インナー戦が面白いのにロボットを手に入れた瞬間、押さえつけて物理で殴るのが最適解の大味戦闘になるのは、なんだかなー。カメラもロボットの背中ばっかり写してフィールドが見えにくくなるし、無機物愛が行き過ぎた結果、せっかくの美点を潰しちゃってるのが、外野の意見を一切無視して客観性の絶無の沼に腰まで浸かってるみたいな、ゲーム全体に漂うひとりよがりの印象をまた補強しちゃったなー。いったん大枠が気になりだすと、天涯孤独の13歳美少女天才メカニックや、人類存亡の鍵を握る29歳美人女士官っていう設定もジャパニーズ・ギークならではの、針の穴を通すような特殊性癖に思えてくるなー。23歳でも39歳でもないっていうのが、ケトゥ族には真似できない、ぼくらのリアルって感じがするなー。ミサトさんには萌えられても、シガニー・ウィーバーじゃチンコたたないもんなー。

 あとラップとかテクノみたいな音楽が歌詞つきで流れ続けるんだけど、無意識なのか自覚的なのかはわかんないけど、単純にマトリックス・フォロワーだからかもしれないけどーーなんかすごいオタク臭とかロリコン臭を薄めるために大量にぶちこんであるカウンター要素な気がしてきて、洋物ポルノでなぜかファックの動きに合わせたハートビートリズムの音楽が背景に流れてるのを聞くときと同じような気分が高まってきて、自然と半笑いになるなー。あー、なんか全体的にモヤモヤするなー。本心から楽しみたいと思ってるのになー。

 例のクロス、ゾ・ゴッグみたいな名前のボスにコテンパンにやられて、そう言えば小学校の頃にガンプラが大流行してて、アニメも見たことないのに買いに行ったらゾゴックしか売ってなかったの、なんか思い出したなー。しかも、城だかなんだかのプラモと輪ゴムでグルグル巻きにしてあって、いま思えば抱き合わせ商法だったんだなー。あの頃、ドラクエもフラッピーかなんかといっしょに買わされたなー。苦労して組み上げたゾゴックを友だちんちに持ってったら、そんなのアニメにいないとか言われて悲しかったなー。そう言えば、ダグラムのプラモが入ってるガムもアニメ見たことないのに、近所の兄ちゃんに買わされたっけなー。なんか長い4本足のカメみたいのが出てきて、悲しかったなー。よく考えたら、パッケージの小窓から何が入ってるかわかる仕組みだったから、ヒデオとかいうあの兄ちゃん、明らかにわざとあれ押しつけて楽しんでたんだなー。いま改めて気づいたけど、メタルギア以前からヒデオって名前の人物とは折り合い悪かったんだなー。あの時分は、主人公が反乱軍って聞いて、「えっ、それってワルモノじゃん!」って思うくらい純朴だったなー。こんなイヤな思い出をよみがえらせるなんて、ほんと例のクロス買ってよかったわー。

 もういい加減、例のクロスをクリアしてしまおうと12章を開始したんですよ。まあ、何とかチーム何とかチームって、見たこともないキャラが次から次へ出てくるムービーはもうどうでもいいですよ。主人公ガン無視で、内輪受けみたいに話が盛り上がっていくのにも慣れました。意思確認されたのは突入するかどうかだけで、もはや私は責任だけ取らされる中間管理職みたいな位置づけになってます。セントラルライフとかいう保険会社みたいな名前の建物に入ると、キチガイ病棟みたいな理屈を振りかざして、ラスボスらしき敵が襲いかかってきた。インナーレベルはカンストしてるし、レベル50のロボットも購入済で、まあ勝てるかなーと思いながら戦ってたら、途中から相手が無敵モードに入って、解除方法を見つける頃には半分以上体力を削られてて、あえなく敗退。

 まあ、二回目でいけるかー、とか思ってロボット修理しに街へ戻ろうとすると、ファストトラベルが反応しません。完全に閉じ込められてます。街でしかロボットを修理できない仕様なので、試しにインナーで挑んでみるも、明らかにロボットバトルを前提としたバランス調整で、カンストレベルなのに歯が立たない。ファミコン時代のゲームかと思うほど、すがすがしいくらい完全な詰みです。最後にセーブをしたのはいつだったか考えていると、ふつふつと怒りがこみあげてきました。この怒りと似たものを探すならば、まったく高級ではない、役所で木で鼻をくくったような対応をされたときのそれが一番近いでしょう。これだけの規模の作品なのにテレビCMがいっさいなかったり、公式ツイッターも発売と同時に更新を停止していたり、本作の抱える致命的な欠点群をじつは制作と販売の両者が理解していて、かなり確信犯的に売り逃げを図ったのではないでしょうか。このゲーム、徹頭徹尾プレイヤーに対する不誠実さにあふれており、ファミコン時代からのロートルゲーマーはいちいち悲しくなるのです。

 で、クリアしたんです。

 ウオアアアァァーーッッ! 俺たちキモオタのことをナメてんじゃねーぞ! SFっていうジャンルはなァ、俺たちキモオタにとってディスコミュニケーションへの切実な問いなんだよ! 人並み以下の外見に生み落とされ親からさえ愛されなかった俺たちキモオタが、なぜ人を遠ざけるキモさをあえて世間様へふりまいてんのかわかんねーのかよ! たとえ俺がただ音を発するだけの肉の塊だったとしても、誰か俺を愛してくれるのかっていう人生を賭けた問いを、テメーらに投げかけるためじゃねーか! 外見をさらしたキモボイスで音読しねーですむから、もしかしたらネットじゃキモオタは市民権を得たみたいに見えてるかもしらねーが、現実の俺たちはあいかわらず最底辺のゴミクズで、じっさいはビタイチなんも解決してねーんだよ! 半ケツと半パイオツさらしながら「こんなわたしを受け入れてくれるか」ってコラ、ナイスバディの美女ならテメーの属性が宇宙人だろうが悪魔だろうが、無条件で受け入れてもらえるに決まってんだろーがよ! 俺たちキモオタだって、そとみが美少女なら問題なく愛されるってのはわかってんだよ! でもそんな皮一枚の愛はいらねーんだよ! こりゃSFっていうジャンルとはまったく関係のねえ、美醜の問題じゃねーか! 俺たちキモオタの抱える深刻な命題を、ダイエットすれば愛されるはずみたいな拒食症問題にすりかえてんじゃねーよ! テメーは栗本薫かよ、ブッ殺すぞ! キモオタの自分を美女に投影することでカルマを克服しようとするなんて、テメーはゼノブレイドクロスじゃねえ、ゼノブレイドセックスだ! でも、クリア後の女性キャラをファッション装備で水着にして、デッドオアアライブみたいにして遊ぶのは最高に楽しいです。フヒッ。

 ゼノブレイドセックス、ついこないだまでレポート欄が匿名掲示板みたいな便所の落書きまみれだったのに、急に有益で意識の高いメッセージが正しい日本語で書かれだして笑う。がんばれ、中の人! 小鳥猊下であるッ!

 え、ゼノなんとかへの感想が無いと寂しいって? 高級食材は準備したけれど料理人がおらず、支配人と客がうるさいから下ごしらえ無しで寸胴に全部入れて、水と塩で煮てみたようなゲーム。門構えが高級そうだから入ったのに、客にはプラスチックの食器を使ったセルフサービスを強要してくる。いまは寸胴から取り出した物体に、立食形式で各自がうだうだ文句つけてる感じ。

 ファミコン世代にとって任天堂と言えば信頼の大ブランドで、この看板の下で発売されるすべてのゲームは、チュートリアル、操作性、ゲームバランスの3点においてプレイヤーの期待を裏切ることが決してなかった。ポッと出の新規タイトルではない、その大看板が次世代機のキラータイトルとして発表しながら、これらすべてを満たさなかったゼノブレイドクロスは、JRPGなるものの巨大でがらんどうな墓標として後世に記憶されるだろう。同社がスマホ課金やテーマーパークに色気を出していることがしきりと取り沙汰されるが、作り手ではなく経営側の判断でこの未完成のゲームを発売に踏み切ったことこそが、これまで貫いてきた信念の決定的な転向であるように思えてならない。

 もう、ゲームの国籍にこだわるのは止めよう。性の商品化に無自覚な小娘の一喜一憂に大枚をはたいたり、骨格を想像できないイケメンが腰の入っていない剣の一振りでドラゴンを倒したり、そういうものにいちいち苛立ったりするのはもう止めよう。だとすれば、ようやく私はゲームを通じて、真のグローバルマインドに目覚めることができたのかもしれない。でも、やっぱりさみしいよ。しげる(日本三大しげるの一人。他二人は石破茂、赤木しげる)、どうしちゃったのかな。これまでなら、あらゆるゲームに顔を出す任天堂の守護神だったのに、くだらない政争にまきこまれちゃったのかな。それともWii Musicでいろいろ言われすぎて、ゲームに嫌気がさしちゃったのかな。しげるさえいてくれたら、こんな習作レベルのもの、世に出したりしないのに!

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