映画「ルーパー」感想

 SF版「ザ・バンク」。物語の前半、あれだけ丁寧に世界観をビルドアップしておきながら、そのすべてをことごとく放棄した後半のソープ・オペラ的展開に唖然とさせられる。ブルース・ウィリスをキャスティングしたせいで撮影途中に制作費が無くなって、外部からの資金を受け入れる代わりに監督が制作の主導権を手放したみたいな裏事情を読み取らざるを得ない。

 「(脂の浮いたデブが提示された脚本を斜め読みしながら)ライアンちゃんさあ、気持ちはわかるけどさあ、いまどきSFなんかじゃ客は入らないわけよ。この話に足りないのはヒロインじゃない? 昼は聖女で夜は娼婦な、銃を持った経産婦とのファックがみんな見たいのよ。そして、障害を持った子どもへの愛情と家族の絆! 観客が求めているのはズバリこれよ。ライアンちゃん、君もそろそろメジャーになりたい時期だろ? わかったら、明日までに脚本なおしといて。じゃ、エミリー、焼き肉(的な、アメリカでの何か)行こうか」。

 主人公が死亡した瞬間に場面が巻き戻るシーンや、時間旅行に絡めた拷問のアイデアには本当にワクワクさせられたし、ある段階まではループ物の佳作としてSF愛好家に細々と語り継がれる可能性すら秘めた作品だったのに、この資本主義のブタと売春婦めが(あなたの想像です)!

 あと、乖離した二つの物語の接ぎ木ぶりへの落胆、それが愛するSFであるがゆえの更なるひどい落胆、なんか体験したことあったなー、なんだったかなーと思ったら、エヴァQだった。

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