映画「NOPE/ノープ」感想

 映画評論家のみなさんや社会学者の先生方が激賞している「NOPE/ノープ」を、遅ればせながら4K Ultra HDで視聴しました。予算の関係で1チップ方式の疑似4K型落ちDLPプロジェクターしか用意できなかったのですが、これまで使っていた液晶フルHDプロジェクターに比べて、黒の沈み方や表現力が格段に上がっているのが素人目にもわかります。黒い肌と夜の闇と物体の影をクッキリと見分けることができたのには、得も言われぬ感動がありました。いやー、黒人主演の映画を見るのにはまさに最適のプロジェクターで、購入までにはいろいろと悩みましたが、結果としてベストバイだったことが証明されてホッとしましたねー……え、肝心の映画の中身はどうでしたかって?

 当たり前の話ですが、黒人や女性や同性愛者や障害者が監督だから面白いものが撮影できるだろうなんてのは、冷静に考えればまったく正の命題と成りえないことへ、そろそろ映画評論家のみなさんや社会学者の先生方は気づくべきだと思いますね。もし、こんなB級SFクソ映画に「クソ映画!カネ返せ!」と心の底から叫ぶことができず、むりくり「社会的な文脈」とやらを見出さねばならないのが生業だったらと想像するだけでゾッとしますし、そんなルンペンみたいな職業につかなくて本当によかったなと、いまは胸をなでおろしております。刺激的な映像をブツ切りにつないだだけの「正味」に対して、チンパンジーとコリアン・キッズの関係性へハッパをキメたような「解釈」を垂れ流さなくてすむというだけで、人生はずっとシンプルで生きやすい場所になることでしょう。いやー、それにしても黒人主演の映画を見るのに最適なプロジェクターを手に入れたのがわかったことだけは、本当によかったです!

 あと、作品の中身を知らずチューニングの合わない前半1時間はなんとか見れるけど、後半1時間で積み上げたぜんぶをブチ壊しにされて「クソ映画!カネ返せ!」って叫んだ作品あったなー、なんだったかなーと考えていたら、ライアン・ジョンソン監督の「LOOPER/ルーパー」だった。よく見たら邦題の表記の仕方も同じで、クソ映画どうしの意図せぬシンクロニシティに、笑った。

質問:NOPEを楽しめた派です。プロジェクターが良いのはわかりましたから、もう少し内容を具体的に。
回答:直近の作品で例えるとサマータイムレンダ問題とでも申しましょうか、端的に言えば「同一作品内ジャンル崩壊」を起こしているのが最大の問題でしょう。ミステリ仕立てのホラーとして始まったのが、気づけば西部劇風のエヴァンゲリオンになっているのですから!

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