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「山野安珠美デュオの世界 箏リサイタル」

AUNJクラシックオーケストラ他、様々なユニットで世界を股にかけて活躍されている、山野安珠美さんのリサイタルです。
 
お箏は一人でも、誰かと二人でも、他の楽器との合奏でも、最近ではオーケストラで協奏曲のソロ楽器としても奏でられます。
今回は、「誰かと二人」に焦点を当てたデュオのリサイタル。
プログラムの4曲もそれぞれ楽しみなところ、さらに曲ごとにお相手が変わります。
そのお相手の皆さまが、とても贅沢なメンバーです。
 
入口で手渡された「プログラム」は招待状のような洋封筒に入ったカード。
中に曲名と解説があり、裏面には手書き文字でメッセージが書かれています。
会場の雰囲気と相まって、山野さんのサロンで温かいおもてなしをしていただいているような気分になります。
 
オープニングは
三木稔作曲「箏 双重(こと ふたえ)」を丸田美紀さんと。
出だしの一音から、あまりにも美しすぎる音に、思わず視界が滲みます。
丁寧に、丁寧に、でも全身から「楽しい!」が溢れる演奏に、心が洗われます。
丸田さんは箏を聴き始めたばかりの頃、Den3の演奏に感激して、最初に覚えた奏者さんです。
お二人の掛け合いが絶妙で、一人が二人になり、二人が一人になり、もはやどの音をどちらが弾いているのかもわかりません。
 
江戸時代後期の「五段砧」は中井智弥さんと。
「古典」と言われる曲の中でも、アグレッシブなこの曲。
プログラム解説によると、海外での反応は「ロックだ!」とのこと。
お相手の中井智弥さんは、しっかりがっつり弾かれるイメージがあるのですが、山野さんも負けてはいません。
1曲目とは全く違う音色です。
曲が違うから?お相手が違うから?
同じ奏者ということをすっかり忘れて、ロックの世界に引き込まれます。
 
共演者の方のMCの合間に、ドレスに着替えて3曲目。
肥後一郎作曲「莞絃秘抄」を長谷川将山さんの尺八で。
とても不思議な曲です。
薄暗い里山の奥に、ひっそりと口を開けている洞穴があるようです。
その洞穴に音が吸い込まれていく感じがします。
音だけでなく、心身にまとわりつくこの世の雑物も吸い込まれていくような感じです。
尺八の音がすればするほど、箏の音がすればするほど、すべての音が消えて、辺りが無音に感じられます。
 
最後は、沢井忠夫作曲「めぐりめぐる」
二面の十七弦箏で池上亜佐佳さんと。
普通の箏(十三絃)より低音の十七弦。
繰り返される旋律に、時代が変わっても人が入れ替わっても、脈々と奏で続けられる、箏の歴史に思いを馳せて聴いていました。
目の前で繰り広げられる力強い音の重なり、お二人の掛け合いは、まるでジャズです。
 
ロックあり、ジャズあり、4曲すべて、どの曲も、どの一音も美しく、全く違う演奏を聴かせてくださった山野さん。
曲によって、相手によって、表情の変わる演奏は、デュオの醍醐味ですね。
何より、全身から溢れる「楽しい!」感が客席にも伝わり、会場全体が、うれしい楽しい幸せなオーラに包まれていました。
なんて居心地のいい空間。
この場にいることができて、本当に良かったです。
 
今日もまた、幸せな空気を大事に胸に抱いたまま、家路につきました。
 
*「さん」とお呼びするのは、大変失礼であると重々承知しておりますが、「客席からの眺め」では、「先生」方も、「さん」付けで表記させていただいております。何卒ご了承くださいませ。
 
*箏の波では、演奏会情報をご案内しております。是非、生の演奏を聴いてみてください。

 
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会場 MUSICASA
日時 2023年1月26日(木) 19:00
プログラム
箏 双重(こと ふたえ) 三木稔作曲(1973)
 Ⅰ箏 山野安珠美 Ⅱ箏 丸田美紀
五段砧 光崎検校作曲(江戸末期)
 箏本手 中井智弥 箏替手 山野安珠美
莞絃秘抄 肥後一郎作曲(1977)
 箏 山野安珠美 尺八 長谷川将山
めぐりめぐる 沢井忠夫作曲(1991)
 十七弦Ⅰ 山野安珠美 十七弦Ⅱ 池上亜佐佳
 
*アンコール
Monologue 山野安珠美作曲
 十七弦 山野安珠美

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