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「現代邦楽研究会第1回 牧野由多可作品展-60〜70年代の作品による-」

とても、とても、とても、面白かったです。
面白かった理由は、3つ。いや、4つ。

1.「牧野由多可作品展」というテーマ

牧野由多可の作品は、これまで聴いた演奏会でもポツポツ演奏されています。
しかし、作品展として、まとめて聴くと、作曲家の人となりが垣間見えてきます。

そして、プログラムには、音楽的解説を載せてくださいました。
牧野由多可ならではの音並びや、リズムの解説は、音楽的素養のない私でもとても興味深いものです。
音楽を演奏される方でしたら、もっと面白くご覧になられたことでしょう。

2.選曲

演奏曲は、独奏、二重奏、三重奏、四重奏、協奏曲的な六重奏。
様々な形式で、曲調もそれぞれ。
牧野由多可のいろいろな表情を垣間見ることができました。
でもやっぱり牧野由多可。
他の牧野作品も、もっともっと聴きたくなりました。

3.演奏家の組み合わせ

独奏は尺八の「蒼茫」。
素晴らしかったです。
もはや、曲と言うより、宇宙。
地球の呼吸が、宇宙の波動が、音となって優しく包んでくれる。
いつまでもいつまでも包んでいてもらいたくて、曲が終わってしまったときは悲しくなるほど。
長谷川さんの10年後の「蒼茫」、20年後の「蒼茫」も、聴いてみたくなりました。

その他は、二重奏から六重奏の合奏。

箏の演奏会に足を運ぶ以前は、生田流と山田流の違いも分かりませんでした。
生田流の中にも、様々な流派があり、それぞれ演奏スタイルが違うことも知りませんでした。
今回は、生田流の中の異なるスタイルの演奏家が出演されています。

規矩正しく揺るぎのない箏
情熱的でアグレッシブな箏
雄弁に語り歌う箏

美しい笛や尺八の音色の中で、それぞれの箏が、時には寄り添い、時にはぶつかり合って絡み合う。
そうして織り出される牧野由多可の世界は、このメンバーだからこそ産み出される唯一無二の世界。
これまで出会ったことのない演奏に、感銘を受けました。

4.ライブであること

暗闇の客席にいる仲間たち(と呼ばせていただきます)。
全員が、じっと息を呑んで、息を潜めて、舞台に対峙しています。
その静かな圧力はきっと、舞台上から発せられる熱量と同じくらい。
舞台も客席も一体となって、音楽の密度が高まっていきます。

そして、2時間後、すべてが終わって。

「ブラボー」と叫ぶことの出来ない私たちは、ただただ精一杯の拍手を送ることしか出来ません。
すべての演奏を終えた出演者の皆さまは、達成感と安堵?に満ちた柔らかな微笑みをたたえて、その拍手に応えてくださいました。

配信では味わえない、ライブでしか味わえない醍醐味。

開催してくださって、本当にありがとうございます。
次回がありましたら、また絶対、足を運びます。

今日もまた、幸せな気分で家路につきました。

*箏の波では、演奏会情報をご案内しております。是非、生の演奏を聴いてみてください。

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会場 ヤマハホール
日時 2022年3月16日(水) 19:00
プログラム・演奏
四重奏曲《茉莉花》(1964)
 箏1 中島裕康 箏2 金子展寛 17絃箏 森梓 尺八 長谷川将山
新三曲《流砂》−光崎の主題による−(1977)
 箏 金子展寛 三絃 森梓 尺八 吉越瑛山
尺八・箏二重奏曲《北海道民謡による組曲》(1969)
 尺八 長谷川将山 箏 中島裕康
尺八独奏《蒼茫》(1972)
 尺八 長谷川将山
十七絃と邦楽器群のための変奏曲《接点》(1969)
十七絃箏 中島裕康 箏1 金子展寛 箏2 森梓紗
尺八 長谷川将山、吉越瑛山
笛 福原寛瑞

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