「The 箏 KOTO spin-off」
深海さとみさん、福永千恵子さん、吉村七重さん
大御所お三方による「The 箏 KOTO」の4回目の公演です。
サブタイトルはspin-off。
これまでは大曲が多かったのですが、皆さまの声にお応えして、「聴きやすい曲」にしてみたとのことです。
確かに、他の演奏会でも耳にしたことのある「聴きやすい曲」のラインナップです。
ですが、全然違います。
トップバッターは福永千恵子さん「鳥のように」
最初の一音から、ガツンと一撃をくらったような衝撃です。
なんて深い音色。
豊かで芳醇で、一音の中で表情がめまぐるしく変わっていきます。
聞いたことのある曲のはずですが、全く知らない世界です。
この音の深さ、複雑さは、この後すべての曲に通じます。
「なばりの七ツ」
二十絃箏と、もくもくと対話をされている小柄な吉村さんのバックに、壮大な宇宙の星々が広がっていきます。
「さらし幻想曲」
山田流箏曲の中能島欣一さん作曲、箏・三絃・フルートのための三重奏。
それを、
箏は、山田流の丸爪ではなく生田流の角爪で、
三絃は、山田流の細棹ではなく生田流の中棹三味線で、
フルートパートは、尺八で、演奏されました。
するとあら不思議!
軽やかで粋な江戸の音楽が、柔らかく雅な音色に様変わりです。
「詩曲1番」
1970年の大阪万博、松下館に設営された茶室のBGMとして作曲された曲とのこと。
サブタイトルに「箏と尺八のための」と付いていますが、今回は二十絃箏と尺八で演奏されました。
箏パートの音域が広く、13本の絃では弾くのに苦労をするとのことです。
二十絃箏を使うことで作曲者とバトルをし、了承していただいたという裏話もとても面白いです。
「秋風幻想」
この曲は光崎検校「秋風の曲」をもとに作曲されたとのことです。
「秋風の曲」には白居易の「長恨歌」から翻案された歌詞が付いています。
「秋風幻想」は箏の演奏だけで歌はありませんが、玄宗皇帝と楊貴妃のお話しが身に染みます。
「詩曲1番」もそうですが、古典(江戸時代以前の曲)ではないのに、箏らしさ、箏を聴いた感をたっぷり味わうことができました。
ラストは「樹冠」
長澤勝俊さん作曲のさわやかでみずみずしい曲です。
この方々の演奏で、個人的にも大好きな長澤作品で締めくくりとは、本当に嬉しい限りです。
全曲を通して改めて、
お箏って、こんなに美しい音の出る、表情豊かな楽器なのだと気付かされました。
メンバーのお三方はもちろん、ゲストの田村法子さん、尺八の坂田梁山さん藤原道山とも、本当に素晴らしくて、皆さまのお衣装も素敵で、眼福耳福とはまさにこのことか、といった感じです。
今日もまた、幸せな気分で家路につきました。
*「さん」とお呼びするのは、大変失礼であると重々承知しておりますが、「客席からの眺め」では、「先生」方も、「さん」付けで表記させていただいております。何卒ご了承くださいませ。
*箏の波では、演奏会情報をご案内しております。是非、生の演奏を聴いてみてください。
https://gainful-butter-9171.glideapp.io/
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会場 すみだトリフォニー小ホール
日時 2023年10月4日(水) 19:00
鳥のように(1985)沢井忠夫
【十三絃箏】福永千恵子
すばるの七ツ(1999)吉松隆 SUBARU 二十絃箏のための
【二十絃箏】吉村七重
さらし幻想曲(1943)中能島欣一
【三味線】深海さとみ【十三絃箏】福永千恵子【尺八】坂田梁山
詩曲1番(1969)松村禎三
【二十絃箏】吉村七重【尺八】藤原道山
秋風幻想(2000)深海さとみ 光崎検校作曲「秋風の曲」によせて
【十三絃箏】深海さとみ
樹冠(1979)長沢勝俊
【二十絃箏】吉村七重/田村法子 【十七絃箏】福永千恵子 【尺八】藤原道山