夏休みを想う(回想)

 脅すような赤が所狭しと書き込まれた原稿用紙を見るのが嫌で、読書感想文というものは今でも苦手である。
 今と比べてろくすっぽ本を読まなかった時分、400字詰め4枚だか5枚だか書けなどと命じられるだけでも不愉快だのに、事もあろうに書いた文章を、身内の字体で赤を入れられることには閉口した。
 教師は所詮子供の書いた文章の出来など気にしてもいないだろうに、身内のほうでは及第点が存在するという前提が組み上げられていることにも、子供ながら憤懣やるかたない気持ちを抱いたものである。
 現今ずいぶん本というものを好むようにはなったが、大人になればなったで適当なことを書いてはいけないと思うようにもなったため、感想文を書けと言われることはできればごめん被りたい。

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