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2回COOKする

スターバックスの店に行きましたら、秋の新商品『焼き芋ブリュレ フラペチーノ®』が発売開始になっていました。

この商品名を見たとき「おっ」と思い、今回のネタとして採用しました

ブリュレとは

普通「crème brûlée クレム・ブリュレ」としてお目にかかる言葉ですね。

「brûlée」はフランス語の動詞「brûler ブリュレ:焼く、焦がす」の過去分詞、およびそれに由来する形容詞です。また、「brûlée」の「é」は過去分詞の印であり、最後の「e」は「女性名詞(ここではcrème)を修飾してますよ」という印です。

過去分詞ですから、受け身の意味合い「焦がされた」として使われていますので、「焦がされたクリーム」となるわけです。

「カスタードの上面には、砂糖をグリルやバーナーで焦がした、硬いカラメルの層が乗っている。」(ウィキペディア

今回の新商品の場合は

スターバックスのプレスリリースにはこうあります。

「ほんのりカラメル風味の焼き芋を氷やミルクとブレンドし、焼き芋ブリュレソースとブリュレチップを加えてカップに注ぐ」

ということは焼き芋が「焦がされている」わけです。

焼き芋の「焼き」とは

そもそも「焼き芋」とは加熱調理された薩摩芋です。しかしこの「焼き」は「ブリュレ」とは違う方法の加熱です。

石焼き芋の場合ですと

「密閉容器の底に小石を敷き、その上にサツマイモを乗せ容器の下から過熱すると小石から遠赤外線が放射される。放射された遠赤外線は容器内で反射しサツマイモの表面全体を加熱する。」(ウィキペディア

という製法であり、直接火に当てるのではないわけで、「焦がす」という話ではありません。

焼き芋を和仏辞典ではどう載せているかと言うと「patate grillée」(旺文社プチ・ロワイヤル和仏辞典)です。

「grillée」は動詞「griller グリレ:煎 (い) る」の過去分詞であり、patate(英語でいうpotato)が女性名詞なので、先ほどの「brûlée」同様に語尾にeが付いています。

『焼き芋ブリュレ フラペチーノ®』を宣伝する画像には「YAKI IMO Brûlée」という文字が入っていますが、日本語の「焼き芋」を女性名詞であるpatateと見立てるならば、「Brûlée」がeで終わっていてもいいことになりますね。

英語で「焼き芋」は

英語では「baked sweet potato」「roasted sweet potato」(大修館書店ジーニアス和英辞典)と言えばいいようです。

英語で加熱調理することを意味する一般的な動詞はcookですが、その下位カテゴリーには以下のような様々に異なる動詞があります。

bake⇒パン・菓子などを天火で焼く
roast⇒肉を天火で焼く
grill⇒肉などを直火で焼くことだが,米国では broil ということが多い
fry⇒油で揚げたりいためたりする
deep‐fry⇒たっぷりした油の中で揚げる
panfry,sauté ⇒フライパンなどで少量の油でいためる
boil⇒熱湯で煮る
simmer ⇒沸騰直前の温度でとろとろ煮る
stew⇒とろ火でゆっくり煮る
braise⇒油でいためた後ふた付きの容器で煮こむ
steam⇒蒸気で蒸す
(研究社新英和中辞典より)

先程の「焼き芋」の英訳で使われていたbake、roast双方とも「天火=オーブン」を使って周囲から全体的に加熱される焼き方であることがわかります。

2回加熱される

というわけで、文字通りに解釈すればこの新商品では芋が、まずroastされ、そののちにburn(brûlerの英訳)されたということになります。(同社の実際の製造方法は存じ上げません)

さて、「2回加熱される」と言えば「ビスケット」です。

よく知られていることですが英語「biscuit ビスキット」仏語「biscuit ビスキュイ」の語源は、ラテン語の副詞bis(twice)+過去分詞coctus(cooked)、つまり(保存性のために)「2回加熱調理された」です。

これはイタリア語のbiscottoも同じことですが、我々が普段目にするのは複数形のbiscottiをカタカナ表記した「ビスコッティ」ですね。

ちなみに、楽譜の中に「bis」という言葉が登場することもあります。指定された範囲の小節を「2回」反復せよという指示です。

cookの注意点

先程からくどいくらい「加熱調理」と言っていますが、日本語の「調理する」「料理する」とcookを無条件に対応させるのは危険です。

なぜなら「刺身」「サラダ」など、加熱しない料理があるからで、その際にはmakeやprepareを使えばよいでしょう。

余談

記事冒頭に登場した商品名『フラペチーノ®』には、〇で囲まれたR、すなわちregistered trademark(登録商標)の印が付いていました。

(もっとも、英語表記では「Frappuccino®」であり、「ペ」じゃなくて「プ」と読むんでしょう)

「「フラッペ」(フランス語の「lait frappé」(アイスクリーム入りのミルクセーキ)に由来)と、「カプチーノ」(エスプレッソコーヒーに泡立てたミルクを加えたもの)を組み合わせた言葉である。」(ウィキペディア

「lait frappé」というフランス語を分析すると、「lait レ」(カフェ・オ・レのレです)が「ミルク」です。

また「frappé フラペ」は動詞「frapper フラペ:打つ、振る」の過去分詞、およびそれに由来する形容詞です。先程の「crème brûlée」とは異なり、laitが男性名詞なのでfrappéの語尾に「e」は付いていません。

一方イタリア語「cappuccino カップッチーノ」というコーヒー飲料がそう呼ばれるのは、カプチン・フランシスコ修道会の僧服に色が似ているから、というのが通説です。

その「カプチン」という名は「頭巾(ずきん)」の意の「cappuccio カップッチョ」から来ています。

お読みいただき、ありがとうございました。ではまた。

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