見出し画像

死期が近づく。

出張に合わせて約1年ぶりに実家を訪れる二日前。

父や母は私に「帰ってこなくていい」といつも言っている。実際帰っても歓迎はされない。

今年もそうだと思っていたら、実家に住む弟が「泊まっていって」という。

今朝早く父が痙攣をし、病院に運ばれたと。
これで2回目らしい。

去年最後の別れになると思って、私は父との対話を心から喜んだ。相変わらず素っ気ないが、それでももう悔いはないと思っていた。

今のところ緊急の連絡はないので、病室で過ごしているんだろう。今すぐに駆けつけることはないが、ここ数日父からのメッセージを受け取っている感じがしていた。

今夜眠りにつきながら父の魂と会話をしよう。

子どもの頃から次男だけど長男のように扱われ、天真爛漫な父はサーカスで調教されたゾウのように家族に尽くしてきた。

母や弟を残し、心配があるのか。
死が怖いか。
はたまた、この世で本来はもっと自由な生き方をしてみたかった無念があるのか。

父よ。
それでもあなたはやり遂げた。それがあなたにとっては楽しみではなかったにせよ。私はあなたから多くのことを学んだよ。
 
今でも思い出すのは父と一緒に作った巣箱やカ世界の名作劇場(確か小公女セーラ)見たさに、直前に壊れたテレビを買いかえに電気屋に走ったこと。
いつもは厳しいうるさいと父だけど、アニメで感動しては涙をぼたぼた流して笑いながらティッシュで拭いていたこと。

もう大丈夫だよ。
次の人生ではもっとゆったりした時間を過ごせるといいね。

おやすみ、おとうさん。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?