「専門家」でも、正しく表現している訳ではない

ちょっと横になろう…と思ったら日付が変わって「1日1投稿」が早くも崩れるというorz
やはり投稿予約する習慣にシフトチェンジしよう💦

私は結構広く浅くの好奇心を持つ方なので、「専門分野を深く掘り下げる」事を何年も何十年も続ける方を大変尊敬してます。
若い時はそれなりに集中力もあるので時間を忘れてひたすら打ち込めるけれど、歳を重ねると多岐に気を取られ、気がつくと好きだったはずの分野にも興味を失っている状態に気がついて愕然とする。
多くの方はそんな経験があると思うのですが、いわゆる「専門家」は日々淡々と調査研究を積み重ねて、違いや変化などを発見する。
とりわけ大学機関のない奄美に住みながら、学術的な地位向上を目指すわけでも名誉を欲するでもなく、ただただ「知りたい」「島のためにもっと詳しく調べたい」と研鑽を積み重ねてきた方々には拍手喝采を送るしかありません。

とはいえ、私は「職務上の専門家」という人にはかなり懐疑的に見ています。
世界自然遺産登録前からは特に「環境省のお役人」という立ち位置を。
今日(6日)の新聞記事でも「いやこれおかしい」と思うコメントがありました。

今年7月に世界自然遺産に登録された奄美大島では、クロウサギの交通事故の増加傾向が続き、希少種の保全に向けた大きな課題となっている。特に繁殖期を迎えて活発になる秋から冬ごろは事故が多く、環境省は9月中旬から事故防止を啓発するキャンペーンを展開していた。

 同センターの阿部愼太郎所長は「今年はすでに過去2番目に多い件数となっている。網野子峠線でも相変わらず事故が続いており、島に住んでいる皆さんの協力が不可欠」と述べた。

クロウサギ輪禍相次ぐ 奄美大島、今年41件に
南海日日新聞   2021年11月6日付

>網野子峠線でも相変わらず事故が続いており、島に住んでいる皆さんの協力が不可欠
このコメントには正直言って腹が立ちました。

アマミノクロウサギを轢いたのって、シマッチュ(非観光業従事の島民・ガイド)だと確定した訳じゃない。
ロードキルに関しては(他の希少種なカエルなども含む)LCCで観光客が増えてレンタカーの貸し出しが多くなってからなので、対象としては
「住民であろうと来島者であろうと全ての方々の協力が不可欠」
と住民以外も含むべきではないのかと思いました。
なぜそういう細かい表現にこだわるのかと言うと、南海日日新聞が一面に持ってくるようなトップ記事は奄美に住んでいない人もYahoo!ニュースのWeb記事で読むことが出来るからです。

この阿部所長のコメントを読んだ島外の方からすると「奄美の住民ってそういう保護意識が低いんだな」という先入観を持ちかねない
確かに、まだまだ都会の意識高い方々(褒めてませんよ)に比べると、平均的に低所得(非島民の方が求める観光と飲食の産業では、おおむね高所得を望めません。そういう点からも私は観光を基盤産業にという考えには否定的です)で、日々仕事と人付き合いに追われる暮らしを送り、知識・教養を学ぶ時間が持てるのは還暦を過ぎてから、という人が多くを占める奄美の住民は、そうした意識の高い(くどいようですが褒めてません)環境活動や保護に対する知識を学ぶ機会に恵まれていないかもしれません。
ですが、寒かろうと暑かろうと誰に頼まれた訳でもなく海岸でプラごみや漂着ごみを拾い続けたり、ウォーキングと言いながら道端に捨てられたごみを拾ったり、外来植物が増えないように共用地の草むしりをしたりする心優しい島民もいます。
そういう人たちもいることはほとんど知られず、ネガティブ情報ばかりが島外に認知される。
実際は道に慣れてない観光客がつい事故を起こしてしまったかもしれなくても、この表現では全て「島に住んでいる人」の責任となってしまう。


それとも環境省は、島内の非観光従事者に24時間、無償で網野子峠の道をパトロールしろとでもいうのでしょうか。
それこそガソリンの無駄とCO2削減どころか増加させるだけです。
それに自然遺産という看板がそこまで島民に何かを要請するのであれば、そんな看板へし折って返してしまえ、と思うくらいです。

確かに山中に大型家電を不法投棄するような輩、車内で弁当を食べた直後、車の窓から平気でゴミを投げ捨てるという残念な道徳観念の人もいます。
が、そういった人を特定出来ないからといって島民全体をそうしたモラルの低いごく一部の人たちと同じであるかのように表現するのは本当にやめて欲しい。

そんな軽率な表現を度々続けた結果が、数ヶ月前にSNSで大発生した「奄美は平気で猫を殺処分する島」というフェイクニュースの流布につながったと思っています。いまだにそれを信じきっている方もいます(そしてそういう意見に対して、普段事を荒げたがらず意見を引っ込める大人しいシマッチュでも「それは違いますよ」と勇気を振り絞って否定している様子も度々見かけました)

自然遺産登録以降、奄美は「なんか適当に自然環境保護的なお題目ぶち上げて、クラファンでお金集めてーなー」的な、上っ面だけ正義ヅラする人たちのターゲットとなりやすく、その手の人たちが心優しい方々の良心をくすぐるためにまずやるのが「悪役設定」です。
クラウドファンディングや寄付集めで集金活動する自分達を正義の味方に見せかけるためには、まずそうせざるを得なくした「悪役」が必須です。
そこで手っ取り早いのが「奄美の意識低い住民や自治体のせいで自然環境が破壊されている」というストーリーです。
何度も何度も使い回されている手法ですが、いやー毎回よく効く手だなと感心するくらいに引っかかる方が多い。
一度も奄美に来たことなく、現地でいろんな人から聞いたわけでもないのに、なぜか自称専門家やごく一部の団体の「私らは意識低い奄美を救うために活動しているのです!」という意見を鵜呑みにして、一方的に奄美を批判する方がまだまだ多い。

そういうフィルターがかかってしまっている人達が、今回の南海日日新聞の記事を読んだらますます「ほら見ろ、環境省の人間も言ってるじゃないか。やっぱり奄美はこれだから」という誤解を更に悪化させるのではないでしょうか。

環境省の皆さんも奄美に専門家として、役人として、奄美の環境を守るために尽力していることは想像出来るのですが。
その発言がどのような人にどう響くのかをもっと真剣に考えて欲しい、と願わずにはいられません。

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