十代のほとんどの悩みを共にした幼馴染への祝福

ちょうど1年前、東京新宿の雑踏の中で、私は電話を受けました。新婦の夕紀さんからの、お付き合いしている広太さんとの結婚を決めた、という報告でした。

出会って4カ月の彼との結婚。もちろん私は驚きました。
夕紀さんは心配そうに言いました。「恋に恋してるとか、浮かれてるとか思われてしまうかもしれないけど、」と。
しかし、そんな心配は必要ないということは、私にはすぐにわかりました。彼女の穏やかな声を聞いていれば、それは真実なのだと理解するのは、あまりにも簡単でした。

今までに聞いたことのない、穏やかな説得力を持った夕紀さんの声を聞いて、私はじんとしました。それもまた現実なのだ、と強く思いました。
夕紀さんは真面目なので、決断の理由をだれにでも説明できるように、頭の中で何度も言葉にして整理している、と言いました。

でも、そんなの多分必要ないよ、とわたしは思いました。思慮深いあなたは、誰よりも一番、自分で自分の気持ちを問うたことでしょう。そんなあなたがそう思ったならもう、それ以外の真実なんてこの世に存在しません。

夕紀さんと私は家も近く、幼稚園からずっと一緒でしたが、仲良くなったのは小学5年生のころからでしたね。本ばかり読んで一匹狼気取りだったわたしに、素朴な優しさで歩み寄ってくれました。
中学校では吹奏楽部の部長と副部長として、帰り道はいつも部活の問題を深刻に話し合いながら、暗くなった公園で長話をしたり。
高校を出て離れ離れになったけれど、東京で奔放な生活をしながらまた新たな悩み事を生み出し続けるわたしに、夕紀さんはいつでも地に足の着いたアドバイスをくれました。

そうして私たちは、十代の悩み事のほとんどを共有してきました。これほど長く、深く寄り添った友人は、夕紀、あなただけです。

これからは、広太さんという新しい人生のパートナーが、あなたと一番、苦楽を共にする存在となるでしょう。

夕紀。思慮深く、賢く、自分の人生に誠実なあなたなら、そしてそんなあなたが選んだ広太さんとなら、必ずこれからも幸せな人生を送っていけると、私は確信しています。
だからどうぞ、なにも心配せず、幸せになってください。

佐藤と山田、二人とも平凡な名字で、いつかは珍しい名字の人と結婚したいね、なんて笑いながら言い合っていましたが、しっかり夢が叶ったね。

多感で孤独な、人生の基盤となる子供時代、十代、二十代を、心から寄り添ってくれて、支えてくれて、ありがとう。
あなたと友達になれて、本当に良かった。
ほんとうに、ほんとうに、おめでとう。

表現活動を続けるための資金として大切に使わせていただきます。よろしければお力添えいただけたら幸いです。